第30話 新アトリエ・品質・競争。ポーションは仲間と作ると楽しいぞ
今日は3本更新です。これが2本です。
「ここが君たちのアトリエだ」
今まで、薬師はそれぞれ自分のとこでポーションづくりをしていた。
だけど、バラバラに作っていると品質管理がしづらいというので、大きなアトリエを用意してそこでポーションづくりをすることにした。
薬師奴隷も増えたし、どうせアトリエが必要だからね。
場所は貧民街のハズレ。
もっといい場所も探したんだけど、薬師アトリエと言うと貸主に嫌がられる。
臭いが出るから仕方ないな。
貧民街のハズレにある2階建てアパート。
住んでいた人は別のアパートに移転した。
そのアパートを改装して、上は薬師や奴隷が住む部屋、下が大きなアトリエにした。
薬師の道具は、中古のものを集めてきた。
薬師は、奴隷が1人で普通のが2人の3人。
他にルティの友達の男女の子供が薬師見習い兼お手伝いとして5人ほど。
親がいない子も多く、住むとこがない子は2階に住まわせることにした。
「それでは、新しい3人の薬師技術をテストするぞ。テストの結果でチーム分けするからな」
薬師3人をリーダーにして3チームに分ける。
見習いも1人か2人に分けて3チームに振り分ける。
「まずは、元々うちで働いていた2人のうち、一番優秀な薬師が手本を見せる。うちのやり方を理解してくれ」
うちのトップは薬師おばば。
経験豊富だから、手際がいい。
「それじゃ、やるぞい」
薬草を1束を手に取ると流れるような手際の良さでポーション作りが始まる。
「そんなに薬草入れていいの?」
奴隷少女のメルが声をあげる。
「ああ、うちのやり方はこれだ」
「そんなに入れたら品質が良くなりすぎるわ」
「品質は良ければ良いほどいい」
品質向上を目指さない生産職はゴミだ。
それがうちのモットーだ。
「だけど、それじゃコストが」
新しい薬師が文句を言っている。
「コストはちゃんと計算済みだ、心配するな」
「おおーーー」
薬師おはばが、ポーションを1本完成させた。
うん、いつもながら安定の品質だ。
「次、新人の薬師、やってみてくれ」
「いくわよ」
また、俺のことを睨んだ。
こいつ、なんか俺に恨みでもあるんかいな。
「材料は、これと、これと・・・」
なんだ? やたらと薬草も選ぶのに時間をかけている。
あちこちの薬草の束から数本抜いて、一束分くらい集めた。
「自分のやり方でいいのよね」
「おお。やってみろ」
おや、やり方が違う。
まず、薬草の根本を切って水に浸しているな。
そんなことは他の薬師はやっていないな。
そこから、おおざっぱにカット。
ここは同じだな。
その後も、手順がちょこちょこ違っていた。
しかし、最後にはポーションが完成。
なんか、品質がいいぞ。
「おや、うちのおばばより、いいのを作りやがったな」
「どう? 本気で作れば、誰にも負けないわ」
また、俺のことを睨んでくる。
そうか、こいつ。
俺も薬師だと思って対抗意識を持ってやがるな。
「品質の高いのを作るのに手間を惜しまないのは素晴らしい、ただな」
「何よ。やっぱり数を作るのが重要というの?」
あ、こいつ。
俺と同じ生産職プライドもってやがるな。
だから、金にならなくて奴隷落ちしたのか。
「いや、そんなくらいの品質でドヤ顔されてもな、って話だ」
「何? あんたなら、アタイよりいいのが作れるっていうの?」
「もちろんだ」
「なら、見せてよ」
作るところを見せる訳にはいかない。
右手に薬草、ポン、ヒーリングポーション、だからな。
「作るところは見せられない。秘伝だからな」
「じゃあ、できたのを見せてみろよ」
「分かった」
前に作った傷回復ポーションを見習い少年にもってこさせた。
作り方は違うが、物は一緒だ。
「!」
ふふふ。驚いただろう。
お前の作ったのが、高級国産車だとすると、俺のは何千万円もする高級外車だからな。
「ど、どうやって、これができるの?」
「それは秘密だ」
「盗んでやる! 絶対盗んでやる!」
やっぱり睨まれてしまった。
まぁ、やる気があるということでよかろう。
「お前は第3チームのリーダーだ」
「ええっ」
メルが驚いている。
第1チームと第2チームのリーダーは、おはばともうひとりのベテラン薬師だ。
第3チームのリーダーがメル。
「お前の作ったポーションは俺以外ならピカ一だ」
「だけど、奴隷よ、アタイは」
「関係ない。良いポーションを作る者がリーダーだ。もっとも、他の者がお前以上のを作ったらリーダー交代だ」
「させるかよ!」
いい感じだ。
こいつの存在で、チームでの対抗意識があがりそうだ。
「それじゃ3日後までに日産50本を目指すぞ。ただし質は落とすな!」
さてさて、どうなるか。
楽しみだ。
ポーションの作り方が変わってきたぞ。
家内制手工業に進化したね。
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