第27話 肌荒れ・ソバカス・枝毛。ビーナス効果で美しくなれる?
「それでは、これからビーナスポーションのデモンストレーションを行います」
ロザリアが観衆に向かって宣言する。
うん、ロザリアはこういうのに向いているな。
堂々としていい。
ビーナスポーションの対象者は、
傷はすっかりと癒えて、ワンピースに着替えてきた女弓使い。
先ほどは冒険者の姿で冒険者の顔をしていたが、着替えた今は女性ぽい表情になっている。
「これがビーナスポーションね。冒険者の女性たちの間でも噂になっているわ」
「本当? 嬉しいわ」
ロザリアは素直によろこんでいる。
横で見ているバカディも女弓使いがどう変身するのかに興味深々だ。
俺はというと。
せっかくの機会だから商売繁盛アロマをまた3か所に垂らしておいた。
なんと言っても、俺が作ったポーションの見せ場だからな。
「それでは、お願いします」
「ええ。いくわよ」
ワンピース姿の女弓使い。
一気にビーナスポーションを飲んだ。
「おいしいっ」
そうビーナスポーションはおいしいのだ。
ポーションというと苦くてまずいイメージがあるけど、
俺が作ったポーションはどれも美味い。
もっとも、美味いというのビーナスポーションの効果を
実感したら大した意味にはならないけどな。
ビーナスポーションを飲んだことにより、彼女の身体が再び光りだす。
総合回復薬は傷がある部分が白く光るが、ビーナスポーションは全身がピンク色の光に包まれる。
「うわっ、何、これ?」
ピンクの光に包まれていて露出している二の腕の肌がすべすべになる。
もちろん、服を着ている部分の肌も同じだが、それは見えないのでわからない。
彼女の顔にある染みやソバカスが、すぅーっと薄くなり、分からないくらいに消えた。
「これ、すごいわっ」
自分の二の腕をさすりながら感動している。
次は髪だ。
髪がピンク色の光に包まれ、乱れていた髪がすぅーとまっすぐになる。
冒険の後、すぐに来た彼女。
その髪はぼさぼさに近かったけど、流れるような髪になり、つやつやになる。
彼女の瞳は、輝きを増す。
唇は、ぷっくりと綺麗な濃いピンクになる。
しばらく待つと彼女を包むピンクの光は、弱くなっていき完全に消える。
「本当に、すごいわ」
彼女は驚きのあまり、すごいしか言えないようだ。
元々、美しい要素を持った女性だが、
冒険者をしていると、どうしても肌や髪の手入れが行き届かない。
それが、専属の美容スタッフがついているように
美しさが引き立っている。
「どうでしょう。ビーナスポーションの効果、実感していただきました?」
「それはもう。驚きの声しかでないわ」
「効果を実感してもらってうれしいです。
「こちらこそ。こんなすごい効果のポーションを半額にしてくれて、ありがとうございました」
彼女の変化に観客も目を奪われている。
美しく、健康的に変わってしまったのだ。
「すげー。あれがあれば、女にプレゼントして、女にモテモテになりそうだ」
「ああ。だが、金貨3枚だぞ。お前に買えるのか?」
「無理だな。あー、金持ちがうらやましいぞ」
観客の男たちはそんな話をしている。
もちろん、女性達はもっと大騒ぎだ。
「何あれ? 信じられない!」
「欲しい。あんた買ってきてよ」
「無理言うな。そんな金あるかっ」
そんな観客の声を聞いていると、
横にいるバカティが声をかけてくる。
「おい」
「はい?」
「あれを1本売ってくれ」
「ええっ」
冗談かと思ってバカディの顔を見たが、
どうも本気らしい。
「値段は、そうだな。2割引きでどうだ!」
「値引き交渉するんかい」
バカディも商人だからな。
値切りはマナー的なとこなんだろう。
「あれをうちの嫁にプレゼントするんだ」
「へぇ、奥さん思いなんだな」
「いや、浮気がバレて大変なんだ。あれがあれば許してもらえるだろ」
「あー。それはいいな。夫婦円満のためなら、特別に2割引きだよ」
そんな話をしていたら、観客の女性がそれを聞いていた。
「ええっー、ビーナスポーション、2割引きなの?」
「本当? 今日だけ?」
「ちょっと! そうじゃなくて」
「2割引きだそうよ。それも今日だけ!」
「本当!? 今、そんなにもっていないどうしましょう」
ダメだ。
誰も俺の話を聞いていない。
なぜか、勝手に2割引きになってしまった。
その結果、ビーナスポーションは
バカディが1本と、さらにもう1本売れた。
「悔しいが、今日のとこは俺の負けだ。だが、いつまでも負けていると思うなよ」
そんなチンピラが吐くテンプレ捨て台詞を残して、
ビーナスポーションを手に入れたバカディは去っていった。
バカディとの勝負、一本勝ちでした。
さて。ビーナス商会。
この後、順調にビジネス展開できるんでしょうか。




