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第26話 止血・戦略・追加注文。勝負は続くが、どうなる?

ロザリアも立つ露店。

怪我人半額でポーションを飲んだ剣士。


傷は魔狼に引っかかれた傷らしい。

今日の冒険でやられたのだ。


傷を洗って布で止血しているが、まだ塞がっていない状態だ。


剣士がポーションを飲んでしばらくすると、傷が光りはじめた。

治癒作用が働いて傷が塞がっていく。


「おおーっ」


大きな声があがる。

そんなに騒ぐことでもないだろう。

普通のヒーリングポーションの効果だ。


「すごい効果だ。ハイポーションじゃないのだろうか」


ハイポーションというのは、ポーションの中でも効果が高いポーションだ。

そんなに大げさなものじゃない。


「本当だ。こんなに効きの良いポーションは初めてみた」

「いや。外国産のポーションの中にはあるという話だ。すごい高いがな」


あ、そうか。

この国のポーションは粗悪なのが当たり前だからな。

アルフォン商会がポーションの製造売買を占有していたからな。


「ビーナス商会って、ビーナスポーションと関係あるのかしら」

「なんだ、それは?」

「A級女剣士の人が噂していたの。すごく美しくなるポーションがあるって」

「それって、あれじゃないか。ビーナスポーション、金貨1枚って書いてあるぞ」

「あ、それよ。やっぱり、ビーナスポーションのとこなのね、ビーナス商会って」

「そうか。そんなポーション作っているところのヒーリングポーションか。効果あるはずだ」


思った通りの効果が出ている。

そもそも、この街でアルフォン商会以外のポーションはほとんどない。


あったとしても、さらに粗悪な品だったのだろう。

ビーナス商会のポーションを見ても、「どうせ粗悪品」と相手にしていなかったようだ。


品質が違うとわかれば2割引きがなくてもうちのポーションを選ぶ人はいるはずだ。

そう考えての作戦だったが、ばっちりとハマったらしい。


「ほら、値引きのないうちのポーションが売れ始めたようだぞ」

「なに、そんなの今だけだ。すぐにうちのほうに戻ってくるさ」


そう言っているうちに、並べてあったポーションが20本とも売れてしまった。

慌ててルティが箱からまた出している。


今日のためにポーションを150本もってきている。

まだまだ、なくなりはしないな。


「まぁ、むこうで眺めているとしようか」

「余裕だな。その余裕、いつまでつづくかな」


こいつの悔しそうな顔をみているとすっきりするな。

こんな楽しいことは最近なかったぞ。


「だんだんと人だかりがなくなってきたな」

「まぁ、またケガ人がいければ戻ってくるがな」

「それはどうかな」


むかつくがバカディの方が当たっていたらしい。

また、バカディの店がにぎわっている。


「やっぱり、豪華な店づくりで楽隊と値引きは強いか」

「ははは。あきらめろ。今日のところはこっちの勝ちだ」

「むぐぐぐ」


ところがしばらくすると、また流れが変わった。

重症な怪我人が来た。

あちこち傷だらけで血が流れている。


「あれはすぐにポーションが必要だな」

「そのようだ。怪我人ならうちは半額だ。うちに来るだろう」

「それはどうかな。お前のことは無名だ。装備を見るとB級くらいの女弓使いみたいだな。うちにくるだろう」

「なんで、そうなる」

「それがブランド効果だ」


たしかに一理あるな。

こっちもブランド戦略はしているが、いかんせんまだ効果があまり出ていない。

残念だ。


「おっと、うちをご指名のようだな。残念だな、バカディ」

「むむむ。なんでだ?」


だが、重症の女弓使い、ロザリアと何か話している。

ロザリアがくびを振っている。

女弓使いがさらになにか言っている。


「どうしたんだ?」

「おまえのとこの商品は無名だからもっと安くしろとか言われているんだろ」

「半額だぞ。もっと引けというのか?」


何が起きているのかわからないから、見に行ってみよう。

バカディは無関心を装って、ついてはこないらしい。


「あ、ちょうどよかった、アキラ」

「なんだ?」

「この人が総合回復ポーションとビーナスポーションを半額にしろというの」

「はぁ?」


確かに「怪我人半額」と書いてある。

ヒーリングポーションだけとは書いてないな。


「だろう。それなら、総合回復ポーションとビーナスポーションを半額で買おう」

「いいだろう。ただし、すぐに使うことが条件だ」

「なっ。半額なんて! 赤字だわ」

「そう言うなって。今日は特別だ」


この女性の弓使いは怪我も大きく見た目もいい感じだ。

総合回復薬とビーナスポーションの良いデモンストレーションになるだろう。


「それじゃ、まずは総合回復薬ね」


革鎧を外して、下の服もはだける。

もちろん、下着はつけたままだから裸になった訳じゃない。

ロザリアが濡れた布巾で傷口をふき血をぬぐう。


「いくわよ」


一気に総合回復薬を飲み干すと女弓使いの体中が光りだす。

傷口が盛り上がって、みるみるうちに癒されていく。


「すごいわ、これ。あっという間に治っていく」

「総合回復薬は、普通の回復薬より効果が高いのよ」

「そのようね。値段も高いけどな」


半額だから、そんなに高くない。

というより、その傷だと普通なら1週間以上治るまでかかるだろう。

その間、冒険者として活動ができないことを考えれば決して高くないはずだ。


「うん、これはいいな。もう一本買っておこう。もちろん、定価で買うわよ」

「それは、うれしいわ。効果を認めてくれたのね」

「ああ。もし、次の時、これがあれば魔物にやられても、すぐに治せるからな」


周りの観客からも拍手がでる。

しかし、冒険者以外では高くて手がでないだろうな。


「次はビーナスポーションだ。これは着替えてから試させてもらおう」

「あ、それなら武器屋の中で着替えてください」


武器屋とは、着替えの場所を提供してもらうことで話がついている。

露店だと難しいことは、武器屋を利用することにしている。


「それじゃ行ってくる」

「待っているわ」


総合回復薬の効果を見たお客たちは、またうちの露店に集まってきている。

総合回復薬やビーナスポーションは売れないが、ヒーリングポーションは売れている。


「あの女、いい女だったな」

「ああ。ビーナスポーションを使うともっといい女になるぜ」

「それは楽しみだ」


バカディはポーションの売上勝負中だというのに、女弓使いのことが気になるらしい。

仕事より女、というタイプのようだな。


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