第24話 ポーションの新シリーズ展開
「おおー、やった。出たぞ!」
誰もいないアトリエでつい叫んでしまった。
新しいポーションが見つかったのだ。
それもなんと、新しい枠。
ポーションスクリーンの場所からすると、レベル2のビーナスとマルスの近く。
ただし、その横あたりに4つの枠ができた。
『マキュリ・アロマ』
名前だけだと、どんな効果があるのか、分からない。
説明書を出して読んでみよう。
「商売繁盛。場所に振りまくとお客さんが集まる」
おおっ、すごい。
今の俺に絶対必要なポーションだ!
これをみつけたのは、ルティのおかげだ。
売り上げが落ちて、元気のない俺を元気づけようと、野バラをくれた。
それを触れて瞬間、煌めきが起きたのだ。
「なにっ」
いきなり、俺が叫んだから、ルティが驚いていた。
「そうか! 花だったんだ。特にバラ。
きっとポーションの素材には花があるんだ」
「どうしたの?」
「もっと、いろんな花が欲しい! これで買ってきてくれ」
手持ちにあった金貨1枚をルティに渡した。
「こんなに?」
「ああ。とにかくいろんな花が欲しい」
金貨を握って、ルティが飛び出していった。
☆ ☆ ☆
「駄目だー。出ない」
バラ・ユリ・ディジー・スイートピー。
名前がわかる花はそれくらいか。
いろんな色、いろんな形。
様々な花々が俺のアトリエに満ちている。
だけど、残念ながらポーションの素材になるものはないらしい。
「そうなの。ごめんなさい」
金貨1枚分の花を買ってきたのに、役に立たなかったとルティが申し訳なさそうにしている。
「あ、ごめんな。気にするよな。それより、野バラありがとうな」
「そんなぁ」
「いや、あれで新しいポーションができそうだ。明日もっと採ってきてくれないか」
「うん!」
ルティだって、ポーションが売れないから落ち込んでいるはずなんだ。
だけど、ルティは強い。
うまくいかなくても、ちゃんと露店に立つ。
いままで親がいないことで辛い目をたくさんみてきたのだろうに、それを表に出すこともない。
「それじゃ、これ。ルティに」
適当に花を集めて束にした。
ちょっとぶさいくだけど、花束だ。
「うわっ、ありがとう。うれしい」
少女でも女なんだな。
花束をもらうと嬉しいのだろう。
満面の笑みだ。
嬉しそうに走って帰っていった。
「さて、作るぞ」
ルティにもらった野バラを1輪。
素材はそれだけ。
「マキュリ・アロマポーション」
出来た!
あれ、小さなコルクの蓋の瓶だ。
いつものポーションの瓶サイズの1/5くらいしか容量がないぞ。
10CCくらいか。
名前にアロマとついているから、香りがあるのかも。
コルクの蓋を開けて香りを嗅ぐ。
「おおー、いい香りだ」
部屋にいろんな花があるから、もともと花の香りがするのだが、『マキュリアロマ』の香りは特別だ。
うっとりするようないい香りがする。
きっと、この香りで人を呼び寄せることができるのだろう。
「これがあれば、人が集まってくるだろう。商売繁盛ポーション。期待が持てるな」
そんな先々のビジネス展開を考えていたら、扉がノックされた。
たぶん、ロザリアだろう。
「何、これ?」
部屋に入るなり、ロザリアは花で溢れた状態にびっくりしている。
「ああ。花だ」
「なんで?」
「おまえへのプレゼントだ」
「本当!?嬉しい」
冗談を言ったら、真に受けたぞ。
手を合わせて感謝を表現している。
これはちょっと、参ったな。
「冗談だ」
「えっ、何よ。冗談って」
「ポーションの素材探しだ。で、見つけたぞ、新ポーション」
新ポーションと聞いて切り替えたな。
女の顔からビジネスウーマンの顔になったぞ。
「やったわね。どんなポーション?」
「聞いて驚くな! 商売繁盛ポーションだ」
「へ? 何それ?」
ポーションと言うと、飲むもの。
そんな常識がこの世界には、あるらしい。
だけど、新しいポーションはアロマポーション。
全くの新ジャンルだ。
「これを振りまくといい香りがして、人が集まってくるらしい」
「あ、本当にいい香り。香水みたいなものね」
うっとりとした顔になる。
あ、今、ロザリアの顔を見てドキッとしてしまった。
こいつ、美人なんだよな。
ビジネスウーマンの時はきつい感じだけど、ふとした瞬間に見せる表情がいいな。
デジカメがあったら画像として残したいな。
「これで明日からのポーション屋は商売繁盛間違いなしだ」
「素晴らしいわっ」
ドンドン!
「あれ? 誰かしら」
「はい?」
「誰だ?」
「これはこれは。お揃いで」
入ってきたのはバカディ。
アルフォン商会のポーション事業部長。
「おや、今度はお花屋さんを始めるかな」
「何の用だ」
「いえね。今日はいい話をもってきたんだよ」
「なんだ?」
「余って困っているだろう。ヒーリング・ポーションの引き取りの話だ」
「なんのことだ?」
「聞いてるぞ。ヒーリング・ポーションが全然売れないってな」
「・・・」
こいつ、白々しいな。
売れない理由はロザリアがちゃんと調査している。
うちのポーションの悪い噂を流した奴がいる。
間違いなく、こいつだな。
「そこで、余って困っているだろうから、同業のよしみで引き取ってあげようと親切心で来たわけだぞ」
「ご心配なく。明日から、大繁盛になる予定だからな」
「ははは。それは楽しみだな。あ、もうひとつお知らせがあったんだ」
「なんだ?」
「お宅の右隣の道具屋でうちのポーションを売り出すことになってな」
「はぁ?」
「明日オープンだから、オープン記念で2割引きで売る予定だ。そちらも商売繁盛になるといいな」
「・・・」
完全にこいつ。
うちをつぶしに来たな。
「わかったわ。勝負ということね」
「ほう、威勢のいいお嬢さんだ。勝負かいな、面白い。受けてたとうじゃないか」
ロザリアとバカディが睨みあっている。
明日、どうなってしまうんだろう。
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