第23話 開店・お客・関心。ポーションを売ってみた
昼ごはんの後のお茶をのんびりと飲んでいると。
ロザリアが俺の部屋に駆け込んでくる。
「やったわ。一軒だけ、オッケーが出たわ」
「おお、やったな。さすがだな、ロザリア」
「ええ、交渉なら私に任せなさい」
「それで、いつからスタートできるんだ?」
俺もロザリアも気が短いほうだ。
まぁ、ロザリアには負ける気がするが。
だからな。
始めるとなると、すぐにはじめたいというのが俺たちの共通認識だ。
ロザリアが駆け回って、必要な準備をすべて整えていく。
その間、俺はというと、いつものようにポーションづくりだ。
結局、ロザリアのおかげで、露店の準備ができて、
明日にはスタートする段取りになった。
☆ ☆ ☆
そして、翌日。
朝から、ロザリアは露店の開店準備の用意だ。
俺はというと、ポーションづくりだ。
ひと段落したところで、ポーション露店の視察にきた。
あれだな。
しかしまぁ、焼きそばを売るような露店だな。
急いで作ったのだろう。
ポーションを売る露店らしくはないな。
露店は、武器屋の店先にあり、2mくらいの間口で周りを木枠で囲っており、
上部には大きく「ポーション」と書いてある。
露店には、薬師が作ったポーションが10本並んでいる。
1本銀貨1枚。
アルフォン商会と同じ値段だ。
でも、品質が全然違う。
アルフォン商会のように粗悪品などではなく、しっかりとした品質のポーションばかりだ。
品質はちゃんとわかる人が見ればわかるはずだ。
ポーションのラベルは、『ビーナス』と大きくブランド名を入れて、
その下に『ヒーリング・ポーション』と書いてある。
ビーナス商会のポーションは品質が違うことを伝えるブランド商法。
これは前からやっていること。
いままでは、ロザリアが直接注文をもらってきて販売してきた。
これからは、お客さんが露店に来る形になる。
「いらっしゃいませ」
そう声を掛けてくるのはルティだ。
露店の販売員をやっている。
まだ子供だけど、まぁ、そんなにお客さんは来ないだろうからいいか。
「どうだ? 売れているか」
「まだ、お客さん来ないの。冒険者が来るのは夕方だって」
今の時間は昼過ぎだ。
この時間にはポーションを買いに来る客はいないのだろう。
冒険者達が武器屋に来るのは、昼間に依頼をこなした冒険者が
報酬をゲットして、武器を見にくるのだから、夕方になるな。
「まぁ、がんばってくれ。また、夕方に来るから」
☆ ☆ ☆
夕方に露店を見にきた。
「いらっしゃいませ~。新しい最高品質のポーションよ」
ルティがポーション露店の前を通る冒険者に声をかけている。
夕方になると、露店の前を冒険者が通る。
このあたりは武器屋をはじめ、冒険者に関係がある店がそろっている一角だ。
「いらっしゃいませ~。新しい最高品質のポーションよ」
ルティ、がんばっているな。
だが、ちょっと離れたところで見ていたが、全然売れていない。
そもそも、興味すらもってもらえない。
「やばいな、これ」
「そうね。やばいわね」
「うわっ」
いきなり独り言にレスが来て驚いた。
いつの間にロザリアが横にいた。
「冒険者がなぜ、うちのポーションに興味をもたないのかしら」
「わからないな。ちゃんと見れば品質が違うことがわかるだろうに」
「えっ、わかるの?」
「全然、色が違うだろう」
「そのくらいわかるわ。でも、どっちがいいのかわからないんじゃないかしら」
色が濃いほうが品質がいい。
今まで俺はそう思っていた。
それは異世界では常識ではないということか。
「まぁ、時間がかかるかもしれないわね」
「そうだな」
俺とロザリアは、ヒーリングポーション事業の立ち上がりの悪さを実感していた。
長期戦になるようだ。
☆ ☆ ☆
露店をオープンして3日が経った。
「今日の売り上げは3本ね」
ロザリアが夕方の報告に来た。
相変わらず、ヒーリングポーションが売れない。
その上、ビーナスポーションの売れ行きがだんだんと鈍ってきた。
「なんでビーナスポーションも売れなくなるのか?」
「もうお金持ちには行き渡ってしまったわ。1カ月に1本は買ってくれると思うけど」
一時は1本金貨1枚以上で売っていたが、今は銀貨8枚まで下がってしまった。
それでも売れているのは1日平均4本。
ヒーリングポーションは赤字で、ビーナスポーションの売り上げも減少。
「でも、マルスポーションは売れるようになってきたわ」
男のパワーアップのポーションは、冒険者や兵士に人気が出てきている。
ただ、金貨1枚の値段をつけているから、買えるのはごく一部だ。
マルスポーションは1日1本は売れるようになった。
もともと、原価がそれほどかかっている訳ではないから、十分もうかっているんだが。
売り上げが下がるのは、気分も下がる。
そのうえ、薬師が作っているヒーリングポーションの在庫がたまる一方だ。
毎日50本も増えている。
いやぁ、ビジネスは難しいものだ。
改めて感じていた。
簡単には、売れないらしい。
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