第20話 株分割・委託・ブランド。商品流通に手を出すぞ
ロザリアに俺のアイデアを話すと。
「それは、面白い考えですね。普通のポーション流通に手を出したいってことかしら」
「俺が、というより、ビーナス商会が、ってことだな」
「ええ。やれる方法はありますよ」
「どんな方法だ?」
ポーション作成や売買のライセンスを発行する権利は、ポーション株にある。
それは、今はアルフォン男爵だけが持つ株だ。
この株を分株して、2株にしてそのうちのひとつを カターニャ伯爵に持ってもらう。
そして、ビーナス商会にそのポーション株を委託してもらうのだ。
「だけど、それだとアルフォン男爵はポーション事業を独占できなくなって損だよな」
「もちろん、そう。だけど、アルフォン男爵は今、それほどうまくいっていないの」
アルフォン男爵は貴族としては一番下の爵位だけど、商売はやり手。
今のアルフォン男爵になってから、新しい事業をはじめている。
その一番大きいのがファッション事業。
これは独占という訳にはいかず、ほかの貴族の商会がライバルになっているんだが、
影響力が弱いため、苦戦している。
つまりは、お金に困っているということ。
「でも、貴族を動かすのって、お金の単位が半端ないんじゃないか」
「そうでもないわ。どうせ、ポーション事業はそんなにもうからないし」
この都市国家は冒険者があまりいないとこらしい。
だから、ポーションの需要がそんなに多くない。
「なぜ、冒険者が少ないのか?」
「近くにダンジョンがあったりするけど、冒険者のための店も充実していないしね。他の街の方が活動しやすいの」
そうか。
有力な冒険者は都市国家に縛られない存在なんだ。
条件の良い場所で活動する。
それが当たり前なのか。
「それじゃ、ポーションを作っても売れないってことか?」
「普通ならね。だけど、ビーナス商会は違うわ」
ロザリアさんの計画だと、ビーナスとマルスのポーションでブランドイメージをつけることができるらしい。
それも、俺のポーションスキルを使えば、高品質のポーションが作れるはすだと。
「おいおい。また、俺のスキル目当てかよ」
「もちろん、普通のポーションなら薬師も使うわ。だけど、それを売れるようにするにはあなたの力が必要なの」
あ、なんだ、言い方は。ちょっと、ずるくないか。
妙に「きゅん」としてしまったぞ。
どうも「必要」って言葉に俺は弱いらしい。
それも、ビーナスポーションで美しくなっているロザリアに言われると特にな。
「あと、お金ね。ポーション株の買収には、あなたのお金も投資してくださいね」
にっこり笑って、大胆なことを言う。
ダメだ。
こいつの交渉に勝てるはずがないな。




