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第16話 化粧品・シナリオ・貴族。展開が速すぎでしょ

「無許可ポーションって、まさかこれのことじゃないわよね」


コンシェルジュさん。

ポケットからビーナスポーションを取り出した。


「おー、それだ。それ。中身が金色だから間違いない」

「ふざけないで! それはポーションなんかじゃないわ。化粧品よ」

「化粧品? 冗談だろ。白粉や口紅じゃないだろう、それは」

「間違いなく化粧品よ。飲むと美しくなる化粧品よ」


おおー。確かにこれは化粧品だ。

化粧品なら許可はいらない…のか?


「では、化粧品だとしよう。それでも無許可なのは変わらないだろ」

「ビーナス商会の新製品を無許可扱いとは驚きね」


あー、どうも、そういうシナリオなのか。

化粧品だと言いきることで、無罪を確定する。


「ちょっと待て。関係者を連れてくる」


また10分ほどかかって、関係者が来た。

やっぱり、アルフォン商会の買い取り部長だ。


「お前か。ポーション無許可取引の罪人をかばうバカ女とは」

「失礼な方ね。ビーナス商会の会頭に何を言うの」

「そんな商会知らないな」

「うちのオーナーはカターニャ伯爵よ。ご存知?」

「なにっ!」


そこからは、ビーナスコンシェルジュさん。おっと違った、ビーナス会頭さんの思いのままに物事が進んだ。

アルフォン商会の買い取り部長が土下座させられている。


「なにとぞ。アルフォン商会の会頭には内密でお願いします」

「うちの新プロジェクトの邪魔をしたのよ。内密なんて無理だわ」

「なんでもしますから。会頭にバレたらくびなんです。うちは子供が5人もいて…」

「どうします? つらい目にあった貴方はどう思うの?」

「まぁ、反省しているみたいだから…」

「そうですね。ひとつだけ条件をのんでくれたら、内緒にしましょう」

「なんでも、やります!」

「それでは、ビーナス商会にポーション売買の委託ライセンスをもらおうかしら」

「ええーー」


なんと。

ビーナス商会はポーション売買ができることになったらしい。

買い取り部長が社内文書を細工して、委託した形にする約束だ。


これで俺のポーションは自由に売買ができる。

ビーナス商会を通せば、な。


 ☆  ☆  ☆


「あいつの顔、笑ったわね」

「ああ。ああいうやつは、立場を利用するしかできないやつだからな」

「楽しかった。こういう役割なら喜んでまたやるわ」

「しかし、まぁ。よくそこまで演技ができるな」

「えっ、演技? なんのこと?」


えっ?

だって、ビーナス商会とか、カターニャ伯爵とか。

よくまぁ、もっともらしいことを。


「演技じゃないわ。私はビーナス商会の会頭だし、オーナーはカターニャ伯爵よ」


ええーっ。

演技じゃなく、本当かっ。


あなたはコンシェルジュじゃないか。

それは表の顔で、裏は・・・ってことか。


「コンシェルジュはやめたわ。カターニャ伯爵に出資してもらってビーナス商会を設立したの」

「マジかっ」

「ビーナス商会は、あなたがビーナスポーションを作ってくれないと潰れるのよ。

そんなことになったら、私はカターニャ伯爵の女奴隷にされてしまうわ」


すべて事実だった。


そして、アルフォン商会のオーナー、アルフォン男爵とカターニャ伯爵は、この都市国家の有力貴族同士。

同時にライバルでもある。


「あなたのことをアルフォン男爵は知らないことはちゃんと確認済みよ。もちろん、カターニャ伯爵はよく知っているわ」

「すごいな。そんな貴族とツテがあったのか」

「ある訳ないじゃない。私のような庶民が」

「じゃあ、どうやって?」

「簡単よ。ビーナスポーションでカターニャ伯爵夫人を釣ったのよ」

「おおーー」


すべてはビーナスポーションの力らしい。


ビーナスコンシェルジュさん、本当の名前はロザリアさん。

彼女がビーナスポーションを使ってみて、このポーションが持つ力を実感したところから話は始まる。


ビーナスポーションの存在を噂でカターニャ伯爵夫人を知る人を使って流す。

興味をひかれた婦人がロザリアさんに面会を希望してきて、

開発担当者が牢獄にいることを告げる。


「本来なら喜んで提供したいのですが、今あるのはこの1本だけです」


そんな話をしたらしい。

アルフォン商会の横やりで無実の罪により囚人にされてしまった開発担当者。


「もし、彼を牢獄から出す手伝いをしてくれるなら、ビーナスポーションを提供しつづけることはもちろん、

このビーナスポーションを流通させて出た利益を配当することも可能です」


なんて話をしたら、伯爵も巻き込んだビジネス話になったらしい。



「ビーナスポーションの前では、貴族だろうが大商人だろうが、女だったら誰もがひれ伏するわ」


そう、言い切るビーナス会頭さん。怖いんだけど。


「あなたにビーナスポーションのレシピを教えてもらわないとね。秘伝だろうがなんだろうが」

「分かった教えよう」


 ☆  ☆  ☆


「そんな! レシピがムムの実だけなんて!!」


ロザリアさんが見つけてくれた部屋に来た。


ビーナスポーションを作ってみせた。

だけど、それを見ても信じてくれない。


「だから、ポーションスキルで作るんだ」

「そんなスキルないわ。ポーションは薬師が素材と魔力と手間と時間をかけて作るのよ」


うわ。そういうものなのか。

ポーションスキルは、もしかして俺だけが持つユニークスキルかも。


「そんなスキル。女神様から直接加護をもらわなきゃ手に入るはずないじゃない」

「あ!」


今、余計なことを言いそうになった。

そうでなくても、ロザリアさんには余計なことバリバリ言ってしまった。


「分かったわ。1日5本。ビーナスポーションを作って。それで手をうつわ」


一難去って、また一難とは、これのことか。


アキラが参加するビーナス商会はこうしてスタートを切った。

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