第15話 美人・商品・販売権。コンシェルジュはあれも手配できるのか
第1章は、ノラポーション師になりました。そろそろ終わりになるけどね。
「それで用事って何でしょう」
あのホテルのコンシェルジュさん。
面会に来てくれた。
というより、面会に来るように手配してもらった。
あのおばさんに。
そのために作ったのが、あれを3つ。
まだ、3つ牢内に隠してある。
「誰でもいいんだが、偉い人を知らないか」
「偉い人はたくさん知っています。そういう仕事ですから」
「それでは、ここから俺を出してくれる人は知らないか」
「何言っているんですか? あなたは囚人なんでしょう?」
「ああ。知らずに法律を破ってしまったからここの囚人だ」
「それなら、そこから出れるはずないでしょう?」
本来はな。
さすがに、俺もちょっとは、世間知らずではなくなったぞ。
この異世界の世間がどういうものか。
ずいぶんと実地で勉強しているしな。
「そういう当たり前の反応はいらないぞ。あれの効果、分かっているだろう」
「分かってるわよ。だから、ここにきているんじゃない」
元々、手入れが良いコンシェルジュさんだ。
それでも、肌がぴかぴかで髪がしっとりしているのは間違いない。
「あれの販売権が交換条件だ。アルフォン商会以外であれの販売権を欲しい権力者をひとり頼む」
「なっ!」
もちろん、看守は別の部屋で寝ている。
まぁ、聞こえているんだろうが、別に気にしなくても邪魔はしないだろう。
「あれの価値はわかるよな。あれの販売権は間違いなく価値があるだろう。このままいくと、俺はアルフォン商会の奴隷にされてしまう」
「なるほどね。いいわ。その依頼、受けたわ」
やっぱり、高いホテルのコンシェルジュは頭がいい。
そして、いろんな権力者のツテがあるってことだな。
細かいことは言わない。
ここから出してくれるなら。
☆ ☆ ☆
3日間、コンシェルジュさんから何の連絡もなかった。
おばさんも来ない。
「本当にうまいな、これ」
「だろ。とても牢獄飯には思えないな」
あまりにもうまそうに牢獄飯を食べているのを見て、看守に美味ポーションがばれた。
まぁ、差し入れも黙認してもらっているし、大丈夫かなと思って、美味ポーションを試してもらった。
「これがあれば、どんな飯も美味くなるんだろ」
「たぶんな。監獄飯よりうまいならな」
「そりゃ、全部だな」
一緒に監獄飯を食べる。
本来は囚人だけの食事で看守はちゃんと外で食べるんだが、勝手に看守も食べることにしたらしい。
「しかし、飯はうまいが退屈だな」
「退屈だ。誰か面会にこないの?」
「あー。あのコンシェルジュがそのうちくるんじゃないかと思うけどな」
「いい女だよな」
元々美人がビーナスポーションを使うと、とんでもない破壊力になる。
その証明だな。
美人じゃないおばさんの場合は……それなりに美しくなるってことだ。
「ちょっと困りますよ」
「私は困らないわ」
「どうした?」
あ、ビーナスコンシェルジュさんだ。
助けに来てくれたのか?
「あなたがここの責任者?」
「いや。私はただの看守だ。責任者は今はいない」
いつもいないがな。
まだ見たことがないぞ。
「ビーナス商会・会頭のロザリア・デュランが正式に抗議に来たのよ。責任者連れてきていただけるかしら?」
「へっ?」
「あなた、話を聞いていないの? それとも頭が弱いの?」
「あー。抗議か。それなら私じゃダメだな。責任者を呼ぶからここで待っていろ」
なんだ?
何を始めたんだ? ビーナスコンシェルジュさん。
「えっと」
「はい?」
「どういうことかな」
「あなたは話を合わせてくれればいいわ」
待つこと10分。
監獄の責任者が現れた。
でっかい筒状の帽子をかぶった制服のおっさん。
八の字の大きなひげが特徴だ。
「あー。なんか抗議だということだが」
「なぜ、私どもの開発責任者をこんなところに入れているんです?」
「は? なぜって。こいつは無許可ポーションを販売した罪人だ」
「本当にポーションを売った証拠はあるの?」
「証人もいるぞ。あきらめろ」
「無許可ポーションって、まさかこれのことじゃないわよね」
コンシェルジュさん。
ポケットからビーナスポーションを取り出した。
なんか自信ありそうだ。
ブクマが今、82になりましたっ。
あと、18で底辺作品から脱します。
ブクマや評価してくれるとうれしいです。