第14話 プライド・味方・意外な応援者。牢獄の中での活動は大変だ
「お前、薬師なんだろ。この街でアルフォン商会に盾つくのはどうかな」
「盾つく気なんてないさ。正当な評価をしてくれるならな」
「ずいぶんとプライドが高いんだな。たかが薬師のくせに」
「薬師の何が悪い? 仕事にプライドがなければダメだろ」
看守がなんか驚いている。
ブライドを持つことが驚くことか?
「俺が知っている薬師はほとんど上に忠実な奴しかいないからな。言われたようにポーションづくりするような」
「俺はフリーの薬師だからな。俺のポーションを正しく評価をしないやつの仕事はしないさ」
「不思議だな。階級の低い薬師、それもどこにも所属していないノラ薬師なのに」
「ノラ薬師か。確かにノラだ」
飼い主は誰もいない。
法律違反して捕まったら、誰も助けてくれない。
その結果が1年間の期限があるとは言え、奴隷にされるのか。
「奴隷と言っても、そんなに悲惨なことにならないだろう。ちゃんと最低限の生活は見てもらえるからな」
「そうなのか?」
「なんの仕事もできない奴は奴隷にもなれないしな」
「そうなのか?」
奴隷というのが最低の場所ではない。
そういうことなのか?
「ほら、時々、街中でも首輪をしている男女がいるだろう。あれが奴隷だ。服装や栄養状態をみてみな。周りにいる浮浪者の方が悪いだろう」
「それはそうだな」
最初に会ったときのルティがそうだったな。
本当に飯が食えていない感じで、眼がギラギラしていた。
「奴隷というのは、労働を提供してくれる存在だ。だから、ちゃんと生活できる環境を提供する。それをしないと労働の質が落ちて主人の損になるからな」
「なるほどな」
思っているより奴隷というのは悲惨ではないらしい。
「お前が期間限定の奴隷になる可能性があるのはな。ポーションを作ることができるからだ。奴隷として価値が出る可能性がある」
「いやな話だな」
「正直、アルフォン商会はいい話を聞かないところだから、気をつけろ。下手な専属契約など結んだら、奴隷より悲惨なことになりかねない」
「おまえ、いいやつだな」
「単にお前が世間知らずだから、ちょっとおせっかいしただけだ。ただの気まぐれだ。忘れてくれ」
まぁ、そうだよな。
看守にとって罪人と仲良くなっていいことなどない。
たんなる気まぐれだろう。
☆ ☆ ☆
「また、面会だ。今度は3人だ」
「誰だ?」
「知らん。騒がしいご婦人だ」
どやどやとご婦人たちが入ってくる。
あ、昨日の朝、ビーナスポーションを買いに来て買えなかった人だな。
「なんで、そんなとこに入っているのよ」
「俺に言うな」
「あんたのせい? 早く出しなさいよ」
「私は無関係だ。ただの看守だ」
騒がしい人だが、こんなとこにいるとそれさえも気がまぎれるな。
「早くそんなとこ出て、あれ作りなさいよ」
「俺だって、そうしたいよ」
「看守さん、どうしたら、この人を外に出すことができるの?」
「あー、そいつはポーションの無許可販売で捕まっているんだ。たぶん、無罪にはならないだろ」
「なによ。私たちが欲しいって言っただけじゃない。この人が悪いんじゃないのよ」
うーん、意外な応援者なのか?
「あ、そうだ。看守よ。ここは、差し入れってしてもいいのか?」
「あー、本来はダメだ。本来はな」
「ん?」
なんで本来を強調するんだ?
「もしかして、差し入れしたら、あれ作ってくれるの?」
「ダメらしいぞ。本来は」
「ふふふ。本来の意味、分かってないみたいね」
あれ、あのおばさん。看守に何か握らせたぞ。
「差し入れは禁止されている。しかし、まぁ、俺も眠くなることだってあるしな」
「そうでしょう。ちょっとお休みしていたらどう?」
「そうさせてもらおうか」
あ、本来ってそういう意味なのね。
世間知らずで、すいません。
「何を差し入れしたら、あれ作ってくれるの?」
「そうだな」
ムムの実と、何を求めようか。
そうだ。
「ちょっと頼まれて欲しいんだが」
とにかく、外に味方になる人を作らないとダメだ。
そのためには……