第13話 制服男・特豆・奴隷化・いきなり逮捕って何?
ガシャンガシャン。
ダダダダ。
なんか騒がしいな。
昨日は、調子に乗ってさらにビーナスポーションを4本作ったしまった。
さすがに疲れて寝てしまった。
朝、起きたら、この騒音だ。
何が起きたのた?
ガチャ。
鍵が開けられる音だ。
なんだ? 侵入者か!
「そこを動くな。お前を逮捕する!」
ドアの向こうにいるのは、ひとつの男。
ひげを生やして制服を着ている。
後ろには金属鎧を着た衛兵が4人従えている。
「なんでだ。なんで俺が逮捕されるんだ?」
「無許可ポーションの販売だ。身に覚えがないとは言わさない」
あちゃ。
そういえば、この街ではポーション買い取りはアルフォン商会以外はできないと言っていたな。
勝手に売買するも禁止だったか。
ちょっと考えればわかることを、ビーナスポーションが高く売れたから舞い上がっていた。
「金色の液体が入った瓶。これがビーナスポーションだな」
「それに触るな」
「残念だな。これは証拠品として押収する」
「ふざけるな」
「ふざけてはいないさ。お前の有罪は決定的だからな。証人は何人もいるんだからな」
あちゃ。
昨日、買えなかったおばさん達に恨みを買ってしまったか。
うまくいっているときこそ、用心しないといけないんだな。
しかし、参ったぞ。
ほとんど知り合いもいないこの街で罪人になってしまった。
これはどうしようもなさそうだな。
「連れていけ!」
衛兵に縄で縛られて連行されてしまった。
☆ ☆ ☆
衛兵に連れてこられたのは、牢屋。
地下にあり、岩を削って作られていて、鉄格子で区切られている。
「ほら。飯だぞ」
看守が持ったきたのは、堅そうなパンひとつと、豆スープ。
どっちも貧乏人ならよく知っているものらしい。
「うまくはないが、ちゃんと生きていく最低の栄養はあるぞ」
なんだかんだ言って、異世界に来てからも最初こそ食べるものがなかったが、そのあとは割とうまい物を食っていた。
それがいきなり貧民食になると堪えるな。
「おやっ」
「どうした?」
「このちょっと大きい豆ってなんです?」
「ああそれは特豆と言ってな、一番大きいタイプの豆だ。大きく育つからたくさんとれて栄養もあるんだぞ。貧民の味方って言われている豆だ」
名前が特豆なのは、大豆より大きいからだという。
なぜ、特豆に興味を持ったかというと、光っているからだ。
ポーションの材料になるということだろう。
牢屋の中には雑草も生えていないから、作れるポーションはポーション(水)だけだ。
特豆がポーションづくりに使えるなら、なにかチャンスになるかもしれない。
こっそりと特豆を3つ、スープから取り除いて。
そのうち一つを右手に持ってみた。
お、でてきた。
『美味ポーション』
なんだ、これは。
と思った瞬間、説明文が出た。
「どんな料理でもうまく変えてしまう魔法の調味料」
なるほど、あれか。
味の〇。
粉末じゃなくて液体という違いはあるな。
こっそり、豆スープに入れてみる。
まぁ、1/5くらいを入れてみた。
味見をすると…うまい!
感じはコンソメの味になったというのかな。
それまでの単調な味が、何層も旨味が重なっているような感じだ。
これならば豆スープもうまくなるかな。
堅いパンにもかけてみて、食べてみる。
「!」
堅いパンが柔らかくふんわりとしたパンに変わった。
そのうえ、どっしりとした味がする。
うまいな、これ。
「ごちそうさま」
「ああ。うまくはないがちゃんと食べたな」
そんなこともないが……またポーションを没収されそうだから、黙っていた。
さて、どうしたらいいのか。
ここから出るには、誰かの手助けがいるな。
知っている知り合いといえば、この街では案内少女ルティくらいか。
期待できないな、あの少女では。
とんでもないパワーがあるポーションが作れたらいいんだが、素材がないしな。
だいたい、そんなレシピは知らんし。
詰んだ気がするぞ。
「おい。面会だ」
「誰かな」
「アルフォン商会の買い取り部長らしいぞ」
「ああ、あいつか」
一度、小回復ポーションを買い取りで持ち込んだときのあいつか。
1/5に値切ってきやがった。
「こんにちは。とうとう捕まってしまったようだな」
「なんの用だ?」
「そう攻撃的になるなって。いい話をもって来たんだ」
「いい話?」
「まず、ポーションの無資格取引の罪の重さはわかっているか?」
「知らないな」
「最低、1年の奴隷労働だ」
「なっ!」
そんなに重いのか。
それも奴隷扱いになってしまう。
この世界の奴隷というと、魔法の首輪をさせられて抵抗できないようにされるのか。
「どうだ? 奴隷になるのはイヤだろう」
「それはイヤに決まっている」
「それなら、アルフォン商会の専属薬師にならないか」
「要はおまえの奴隷にしようというのか」
「奴隷ではない。ただの専属だ」
こいつの顔を見ていればわかる。
専属と書いて、奴隷と読む。
そんなもんだろう。
「専属ということは、俺が作ったポーションは全部納入しろと?」
「もちろんだ。ただ、無料とは言わない。規定の買い取り料金払ってやる」
要は安い賃金でポーションを寝ないで作られるということか。
「断る! お前のとこの専属になるくらいだったら1年くらい奴隷で我慢してやる」
「ほぅ、言ったな。その言葉、忘れるなよ」