第11話 市場・ムムの実・美人。素材でレシピが分かるのは便利
昼飯を食べている。
貧民地区にある食堂で野菜かなんかが入ったトロミがあるあんかけをぶっかけた麦飯だ。
案内少女も一緒に食べている。
「おいしいっ」
そうかな。そんなにはうまくないが……
まぁ、腹が減っているから食べられるがな。
だけど、こいつ。
小さい身体のくせしてよく食べるな。
迷わず、こいつ大盛を頼んだしな。
俺は普通盛りなんだが、どんぶりに麦飯がドドンと入っている。
大盛はさらに1.5倍はある。
案内少女の食欲につられて俺も食べた。
ちょっと食いすぎだ。
「ごちそうさま」
案内少女は手を合わせて言っている。
俺も真似して言った。
「おお、ごちそうさま」
時間はまだ昼前だ。
一度、ホテルに戻ってもう一泊追加しておこう。
なんとかポーションで稼ぐ方法がみつかりそうだからな。
「それで次はどこに行くの?」
案内少女には、今日1日の案内代として大銅貨2枚渡してある。
「そうだな。一度、ホテルに戻ってそのあとはポーションの素材を買いにいこう」
☆ ☆ ☆
「あのね。薬師の材料を買うにはライセンスがいるの」
「そのライセンスをもらうにはどうしたらいいのだ?」
「アルフォン商会の試験を受けないと」
「それはイヤだな」
薬師のことはすべてアルフォン商会が牛耳っているらしい。
あの商会は俺のことをバカにしているから、関わりたくないな。
「うーん、それなら市場? 普通の薬草やハーブがあるの」
「おお。それがいい。連れて行ってくれ」
市場にやってきた。
市場と言っても広場ではなく、一本の道の両隣に簡単な屋根付きの露店が並んでいる。
全部で40くらいか。
「へぇ、市場って言っても露店商店街みたいだな」
「ここは、街の人じゃなくても露店を開ける場所なの」
「野菜や肉の露店が多いな」
「薬草やハーブも扱っている露店もあるのよ」
まずは、端から端まで歩いてざっと見てみた。
最初は左側の露店を見て、折り返して右側の露店を見る。
まだ何も買わないかったが、目ぼしいものがみつかった。
キラキラ光っている物があるんだ。
どうも、ポーションの素材になるものは、キラキラ光ってみえるらしい。
「これはなんだ?」
一番キラキラしている果物を指さして案内少女に聞いた。
「それはムムって果物。果汁たっぷりでおいしいわ。でも、高いの」
値段を聞いてみたら拳くらいの大きさで大銅貨1枚だという。
たしかに高いな。
他の果物なら1/10だ。
「このムムはな。元気の源って呼ばれるくらい栄養が豊富な果物だぞ。そこの兄ちゃんも喰って元気になりな」
「俺は十分元気だぞ」
そうは言っても、ポーション素材らしいから、1つ買ってみた。
他にも、キラキラしている薬草やハーブの類を試しにいくつか買った。
「何か食べたいものはあるか?」
「ええっ、いいの?」
露店には料理を売っている店もあって、買い食いができるみたいだ。
ちょっと前に朝昼兼用のブランチを食べたけど、これき別腹だろう。
「これ、食べたい」
てっきりお菓子みたいなのを食べたがるかと思ったら、大串の肉焼きを選んだ。
こいつの食欲は半端ないな。
1串で銅貨5枚。
まぁ、これだけでも一食分くらいありそうだから、高くはない。
「ツノ兎の肉を秘伝のタレに3日漬けた大串だ。うまいだろう」
俺は遠慮して、案内少女の分を買った。
案内少女から味見分をもらって食べたら、味が濃厚でうまい!
今度、腹が減ったときに食べよう。
☆ ☆ ☆
ホテルに帰ってきた。
部屋でポーションづくりをしてみよう。
まずは、果実のムムだな。
スクリーンに名前が出たぞ。
『ビーナスポーション』
『小回復ポーション』とかがあるブロックではなくて、隣の8つの四角枠のブロックだ。
たぶんポーションスキル2になったときに増えた四角枠だから、レベル2のポーションだろう。
まずは作ってみる…できた。
おおっ、きれいな金色の液体だ。
どんな効果があるのか。
おっと、スクリーンにメモが表示されたぞ。どれどれ…
「女性の美しさを増進させるポーション。1瓶で1カ月効果が持続する」
なんと。解説書付きか。
効果を知りたいと思ったら出てくるらしい。
しかし困った。
このポーションを欲しがる女性を俺は知らないぞ。
でも、どんな効果があるのか。
知りたくて仕方ないな。
そうだ!
☆ ☆ ☆
「これ飲んでみて欲しいんだが」
「なにこれ?」
「綺麗になるポーションらしいんだが」
「綺麗に? うん飲む!」
薄汚れた少女であっても、綺麗になりたいって気持ちがあるんだな。
どんな効果があるんだろう。
「うわっ、おいしいっ」
やっぱりおいしいのか。
俺の作るポーションはみんなうまいらしい。
「えっ? 何?」
ビーナスポーションは驚くほど効果があった。
ぼさぼさの髪が艶々になった。
お肌はつるつる、モチモチだ。
瞳がキラキラ輝いて、唇は口紅をつけたみたいに赤みを増した。
「ほう。本当に綺麗になるんだな」
うん、効果は確かめることができた。
これはお金持ちの女性なら、きっと欲しがるぞ。
そういう知り合いがいないのが残念だ。
「ありがとう」
そんなうるうるした瞳で見上げるんじゃないって。
元々、美少女なとこあるんだから。
もうちょっと大きくなったらアイドルレベルになるんじゃないかな。
まだ子役くらいの年齢だからな。
だけど、ビーナスポーションのパワーがプラスして、可愛さアップしているじゃないか。
「よかったな。誰かお金持ちの女性の知り合いがいたら、連れてこい。そのポーションを売りつけるかな」
「うーんと、うーんと」
「あ、本気にするな。お前にお金持ちの知り合いが、いる訳ないからな」
まぁ、そのうち知り合うだろうから、大丈夫だろう。
などと思っていたが、女の美に対する執念を甘く見ていた。
それがわかるのは、次の日だけど。