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第10話 ノーブランド・超安宿・冒険者。ポーション需要を探せ

アルフォン商店の暗くて小さい裏口から入ると、買い取りカウンターと書いてある。

目がぎょろっとしたおっさんが座っている。


総合回復薬を1本取り出して、買い取りの査定をしてもらった。


「これなら1本大銅貨6枚だな」

「ちょっと待てよ。これは総合回復ポーションだぞ。それも効果が高いのは実証済みだ」

「おや、この値段では不満かね」

「宿場町では銀貨3枚だと言われたぞ」

「あー、そのあたりならそうかもな。良くわかっていないやつが多いからな」

「どういうことだ?」


この街では、アルフォン商会のブランドがついていないポーションは、ノーブランドとして扱われる。

ノーブランドは売買禁止だ。


この店だけは、ノーブランドでも買い取りはできる。

ただし、正式に流通させるためは品質チェックも専用ボトルに詰め替えるため、買い取り価格は安くなるという。


「ふざけるな。それなら買ってくれなくてけっこう」

「ふふふ。それならこの街でポーションを売るのはあきらめな」


頭きた。

捨て台詞を言って店を出た。


なんで銀貨3枚のポーションが大銅貨6枚になってしまうんだ。

1/5じゃないか。

きっとアルフォン商会が暴利をむさぼっているに違いない。


すぐに案内少女が来る。


「どこかポーションを買ってくれるところはないかな」

「ポーション? ポーションはアルフォン商店なの」


こんな少女でも、知っている常識。

アルフォン商会の力はこの街では絶大らしい。


困ったな。

これじゃポーションで稼ぐ計画がうまくいかないぞ。


 ☆  ☆  ☆


せっかくポーション売ってお金持ち計画がいきなりつまづいてしまった。

なんとかしてポーションをお金に変えないといけない。


それ以外に収入を得る方法が思いつかない。


実はひとつだけある。

冒険者だ。


魔物と戦って魔石や素材をゲットする。

依頼の報酬も入るだろう。


冒険者ギルドがあるってことは、冒険者として生計を立てる道はあるだろう。


しかし、俺は生産職をしたい、

魔物と戦って傷を負いたくないし、下手したら死にかねない。

そんなことをして金を稼ぐなんてまっぴらだ。


「!」


思いついた。

なんでこんな簡単なことを気づかなかったのか。


ケガ人にポーションを使わせて金をとればいい。

冒険者がいるってことは傷を負っている人もいるはずだ。


ポーションとして売るなら品質保証としてのブランドが必要になるだろう。

だけど、傷を治すならちゃんと治れば文句はないはずだ。


そこまで考えて、行き詰ったしまった。

ケガ人はどこにいるのか?


冒険者ギルドにならケガ人もいるかもしれない。

だけど、モグリの薬師がケガを治すと言っても、相手にさらないどころか受付嬢に追い出されそうだ。

どこかケガ人がいるとこはないのか。


そんなことを考えていたら、寝てしまった。


 ☆  ☆  ☆


朝。

ホテルから出るといつものように案内少女が走ってくる。


「今日はどこいくの?」


そう聞かれるけど、いくとこが決まっていない。

宿は今日のお昼には出ないといけない。


延長することも考えたけど、収入源が決まらないとこんな高いホテルにいられやしない。

ケガ人のいるとこを見つけられなかったら、昼に戻ってきてチェックアウトしないと。


「どこかケガ人のいるとこないかな」

「あるよ!」


えっ、あるの?


「どこだ! それは?」

「大銅貨1枚っ」

「よし、ケガ人のいるとこに連れていってくれたら払おう」

「わーい」


嬉しそうに走り出した案内少女の後に続いては走っていく。

どうも、貧民地区の方にいくようだ。


「あ、待った! ケガ人と言ってもな。金がないやつはダメだぞ」

「大丈夫。ど貧乏なケガ人じゃないから」


大丈夫かな。

へんなとこに連れていかれたりして。


「おい、どこへいくんだ」

「この先を曲がったとこ」


いい加減貧民地区のど真ん中に来ている。


朝だというのに、酔っぱらったおやじや目がうつろなじぃさんがいて、やばそうな感じだ。

それなのに、さらに裏通りに行くというのか。


本当に大丈夫なのか?


「ここっ!」

「こんなとこに宿屋が!」


ボロボロな宿屋だ。

一泊大銅貨2枚だと?

えらい安いな。街の中だと宿泊代が宿場町の2倍くらいするのに、宿場町の安宿の半額か。


案内少女は宿屋に入っていく。

だけど、さすかにやばそうだから、外で入ろうかどうするか迷っている。


すると、案内少女がひとりの少年をつれてきた。


歳の頃は15歳くらいだ。

皮で出来た防具をつけて、腰には短剣を差している。

きっと冒険者だろう。


「あなたですか。ケガ人を探しているという人は?」

「ああ。よく効くポーションもっている。必要な人を探している」

「この人、旅の薬師さんなの。だけどライセンスないんだって。おにいちゃん」


おにぃちゃん? 本当の兄妹なのか……それとも近所のお兄ちゃんパターンかな。


「もぐりか」


この街ではライセンスが重要らしく、何をするにもライセンスがあるのとないのでは違いがある。

ライセンスがないと薬師としての活動もできやしない。


「ライセンスはないが、ちゃんと効くポーションだ」

「ほんとうか? ちゃんと効くやつなんだろうな。効果なかったら金は払わんぞ」

「それでいい。ケガ人なら効果はすぐわかるぞ」


半信半疑という顔をしている。

だが、一度、宿に戻ってひとりの少女を連れてきた。


やはり15歳くらいか。

同じように皮の防具と短剣を差しているから、冒険者仲間だろう。


少女は防具を外すと肩に包帯を巻いていた。


「牙コウモリにかまれた傷だ。治せるか?」

「ああ。それのくらいなら1本のポーションで十分だ」

「いくらだ?」

「銀貨3枚」

「ふざけるな!」


あ、確かにな。

大銅貨2枚の宿にいる連中だ。


冒険者と言ってもランクは低く、収入もそんなにないのだろう。


「そうか。高すぎるか。なら、微回復ポーションはどうか。大銅貨5枚でいい」


宿場町なら大銅貨6枚なんだけどな。

きりがいいとこで大銅貨5枚だ。


「微回復だと。そんなの気休めじゃないのか?」

「効果を見てからでいい。大銅貨5枚の価値ないなら言ってくれ」


まずはポーションを使ってもらわないとな。

価値をわかってもらえやしない。


「これを飲んでくれ」

「わかった。いいな、ティナ」

「はい」


ティナと呼ばれた少女は微回復ポーションを一気飲みした。


「おいしいっ」


えっ、おいしいの?

それは知らなかった。


「えっ? 嘘っ」


ティナの肩がぼんやりと光っている。

待つこと1分ほど。

光が消えた。


「どうだ? 治ったか?」

「あれ? 痛くない。どうなったの?」


肩の包帯を外してみると、きれいな肌が現れる。


「傷がないわ。すごい」


そのくらいの傷なら、微回復ポーションで十分らしい。


「大銅貨5枚だ。もっと大怪我だと銀貨3枚の回復ポーションがいるけどな」

「わかったわ。大銅貨5枚。払うわ」


そんなやり取りを宿の部屋から見ていたんだろう。

あちこちケガをしている人が出てきた。


少年少女だけでなくおっさんもじいさんもいる。

老若男女問わず、この宿にはケガ人がいるみたいだ。


この日の売り上げは微回復ポーション7本、回復ポーション2本。

合計銀貨9枚大銅貨5枚になった。


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