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high school romance☆  作者: 天野屋 遥か
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電光石火の出会い

「ヤバイ!!遅刻だ!!」


今日は春休みの最終日で、家から学園へと戻ってくる日。

学園前のバス停から学生寮まで私、滝川都は猛ダッシュをしていた。

ここはとある全寮制の有名なお嬢様学校。


毎年、始業式の前日の昼から寮の役員決めや掃除があるからそれまでには部屋にいなければならないのに、私は寝坊してしまった。


「なんでこんなに広いのよ…!もーバカっ!!」


キャリーケースを引きながら、リュックサックを背負った大荷物で広大な敷地を走り抜けていく。

そんなとき、校舎の裏から突然人影が現れた。


「ぎゃあっ!!」


すごい衝撃を受けてベシャっと地面に尻もちをついた。

キャリーケースが1mほど向こうに飛んで行ったことからもすごい激突だった事が分かる。


「痛っ…!」


「大丈夫?大和…」


正面をむくと、黒いスーツを着て艶やかなな黒髪を後ろで束ねた男の人が私の正面で同じ様に尻もちをついており、グレーのスーツでふわふわの茶色の髪の毛をした男の人は口許に手を当てて明らかに笑いを堪えながらその大和と呼ばれる男性を見下ろしていた。


「あの…すいません…!大丈夫ですか!?私、急いでて…」


すると、その大和さんが顔を上げる。

白い肌に密度の濃いまつげに縁取られた印象的な大きな瞳と、通った小さめの鼻にぷっくりと膨らんだ唇。

あまりの美しさに息を飲むと、その女の人はぎっと睨みつけてきた。


「てめぇ!痛てえんだよ!骨が折れたらどうしてくれんだ!」


ところがその人は、低くドスの利いた声でいきなり私を罵倒し始めてきた。

すごい剣幕だけど、それよりも女性と見間違う様な綺麗な顔をしたこんな男の人がいるという衝撃の方が大きく、呆然としてしまう。


「おい!お前聞いてんのか!?」


「ごめんなさい!本当にすみません!」


とどまるところをしらない怒号に、我に返ってひたすら土下座する勢いで平謝りをするしかない私。


「ちょっと。大和、だめだよ」


そんな彼をもう一人の男の人が制止して、私の方へと一歩近づく。


「ごめんね。僕の双子の弟は口が悪いから…」


ニコニコとしながら、私の前に跪いてすっと右手を取る。


「大丈夫?怪我は?」


「私は何ともありません。本当にすみません…」


「よかった。僕たちも前方不注意だったからお互いさまだよ。大和は頑丈だし、こんな事で怪我しないから気にしないで?」


そう笑顔で言われて、思わず私もつられて微笑む。大和さんとはまた違う種類の綺麗な男の人。

私をじっと見つめて、そのあと口許に笑窪を深めた。そして、私の手を引いて身体を起こしてくれる。

王子様ってこういう優しくて素敵な人の事を言うのね。

胸がドキドキする。


「珍しいですね…この学園に先生以外の男性がいるなんて…」


「まあね。僕、栄城雅哉とこの大和は理事長の孫だからさ…」


「おい、雅哉余計な事…」


自力で立ち上がった大和さんは後方でむすっとしている。


「いいじゃない。で、君は…」


キーンコーンカーンコーン---


「しまった!!」


雅哉さんの言葉を遮るように、午後の始まりを告げるチャイムが鳴ってしまった。


「すいません!私もういかなきゃ!!」


「えっ!?ちょっと!?」


キャリーケースを握りしめ、理事長のお孫さんへの挨拶もそこそこに再びダッシュ!

あぁ、今日は罰としてトイレ掃除だろうなんて思いながらとりあえず寮へ向かった。




「忙しいシンデレラだね」


「…お前、自分で言ってて恥ずかしくねぇのか?」


彼女を見送りながら、思った印象を呟けば大和が呆れている。


風の様に現れて、そして去っていった女の子。

さっきの大和との対応を見てて、自分よりも相手を心配する心の優しさがわかった。

それに、美人なのに特にそれを鼻にかける様な事もなさそう。

というか、しゃれっ気もなくて言うなればダイヤの原石だ。そう、まるで舞踏会に出る前の家で働いてばかりのシンデレラ。

多分、自分の魅力にすら気づいていないだろうな。あれは。磨けば光る素質を備えてて、僕にふさわしいと直感が告げる。


「僕、あの子に決めたよ」


「…まじかよ。お前もか」


溜息をつく大和。


「何?大和もなの?さっきまであんなに怒ってたくせに?」


「うるせぇ。面白そうなオモチャだろ?」


そう、悪魔の様に笑う片割れ。

確かに僕も思ったよ。

絶対、からかったら面白そうだろうって。

反応よさそうだもん。


「ふーん…おばあ様はどう言うかな?二人とも同じ相手選んだって報告したら」


「別に、あのばぁさんなら面白がって俺達二人と一緒にするんじゃね?」


「そっか。じゃあ、理事長室へ報告に行こうか」


「あぁ。明日から、面白くなるな」


そのまま、僕達はおばあ様の所へと向かった。


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