あの日の君は泣いていた。
※この物語はフィクションです。
実際の人物・団体名等とは一切関係ありません。
この物語は、「その【嘘】が【本当】だと俺は知っている。」の、裏話の様な物です。
物凄く短い話になっていますので、
物足りないと感じた方がいましたら、
「その【嘘】が【本当】だと俺は知っている。」も、読むことをお勧めします。
学校の帰り、私は教科書を忘れた事に気がついた。
「ごめん恵美!私教科書忘れちゃったから先帰ってて!」
急いで学校まで走る。
途中の公園で私は、ある物を目にする。
告白シーンだった。
(あれは...うちの学校で有名な美人委員長、小山 春香?)
もう1人は知らない男子生徒だった。
男子生徒が告白する。
関係の無いこっちまでドキドキする。
委員長の答えは、✖️だった。
そそくさと帰る委員長。以外と辛辣だった。
残った男子生徒はただ涙を流し、泣いていた。何とも悲しい失恋だ。
しばらく経って、男子生徒が帰ろうとする。
(おっといけない!教科書忘れたんだった!)私はまた走り出す。
教科書も無事鞄に入れ、家に向かう。
家に着いてからも、不思議と私はあの男子生徒の事が気になっていた。
人が振られるところは初めて見た。
その事もあって、彼のことが忘れられなくなってしまった。
そこで私は、彼について調べてみる事にした。
次の日、クラスの人達に彼について聞いてみた。見た目の特徴だけが頼りだったので、見つけるのに苦労したが、何とか彼が何者なのか突き止める事に成功した。
こんな事をして、何を考えているのか、自分でも分からなかった。でも、こうでもしないと落ち着かなかった。
ようやく彼が、どこのクラスの誰なのかわかったと思ったら、もう冬休みが始まる時期だった...。
冬休みが終わり、クラス替えの時期。
私は、休み前の男子生徒の事などすっかり忘れて、自分のクラスが何処か、見に行ってみた。
しかし、すでに背の高い人がいて、
全然表が見れない。
(困ったな。)
跳ねながらどうしようか考えていると、急に後ろから、誰かに持ち上げられた。
誰だろうと見てみると、失恋の人だった。
(!?)
必死に驚きを隠しつつ、
笑顔で「ありがとう。」と言った。
そういえば、あれだけ詳しく聞き回っていたのに、まだ名前を知らなかった。
「君、名前なんて言うの?」
そう聞くと、彼は一瞬驚いたような顔をして、
「長草 圭人。」とだけ言った。
「そっか。私は、江西 三津。よろしくね!」
そう言って私は、表を見る。
どうやら彼とは違うクラスらしい。
しかしそんな事は関係無い!
私は休み時間になるとすぐに彼のクラスまで行って、ずっと彼に話しかける。
無視されても、ずっと話しかけ続けた。余計なお世話かもしれないが、もし彼がまだ失恋の事を気にしているなら、彼の心の支えになりたかった。
だんだん彼も私と話をしてくれるようになった。話してみると、意外と話が上手かったり、陽キャ的だったりと、私は彼にますます惹かれていった。
そして、時が経つにつれ、不思議と私「達」の周りには人が集まっていた。
憧れの高校生活は、順調だった。
そんな楽しい高校生活も、もうすぐ終わる。唯一やっていないことがあるとすれば、それは恋愛だ。
いや、それは嘘かもしれない。
私は、恋に落ちた。
友達のはずの、圭人に恋をしていた。
今日、私はその恋に決着をつけようと思う。圭人を公園に呼び出した。
彼はちょうど時間通りに来た。
私は深呼吸をして、口を開く。私は、勇気を乗せた、その言葉を口にする。
「好きです。私と、付き合って下さい!」
言ってしまった。もう、戻れない。
「え?」
圭人は、驚きを隠せないような顔をしていた。彼の答えは分かっている。
今になって、その答えを言われるのが、怖くなった。
「な、なんてね!嘘だよ。驚いた?」
そう、この言葉が嘘だ。彼に嘘をついてしまった。でも、彼も気づいているだろう。私の「嘘」に。
「え?あ、う、うん。」
彼が困っている。
彼の答えは、恐らく「付き合えない」だろう。理由も分かっている。
今日、家を出る時に気がついた。
私の見た目が、彼を振った女子生徒に似ていることを。
無意識のうちに、彼女の真似をしていたのだろう。彼の好きだった彼女の。
もし私が、自分自身でいられたなら、
私は、全てに嘘をつかなくて済んだのかもしれない。
ああ、何だか泣きそうだ。
こんなんじゃダメだ。必死に涙を隠して、いつも通りを装う。
「何ぼけっとしてんの?早く行くよ!」
涙が止まらないのを、押さえ込むように笑う。
「あ、ああ。」
彼は黙っていた。
教科書なんて、忘れなきゃ良かった。
こんなことになるなら、真っ直ぐ帰れば良かったのかもしれない。
そんな事を思ってしまうほど、辛かった。悲しすぎる初恋だ。
夕暮れに身を任せ、私は足を動かした。
最後まで読んで下さり、誠にありがとうございます。
恋愛についてはよく分からないので、
想像で書いてみましたが、悪いところがあれば、遠慮なく言ってもらって構いません。