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定期実技試験、そして

 月曜日の早朝という変な時間の投稿で申し訳ないですが、今話から新章開始です。

 毎度の事ながら誤字報告ありがとうございます。非常に助かっております。


「は〜い! 皆さん、そろそろ定期実技試験が近付いて来ました〜!」



 教壇に立ったフレアさんは、いきなりそんなことを言い出した。

 俺の部屋に何故か小動物系魔王とその右腕のドM魔族が住み着いてから数日後、俺は今Sクラスの教室に居た。

 因みにだが、何故か魔王達もこのクラスに居る。いや、理由は明確なんだけどな……。


 彼女達が俺の部屋に来た翌日、フレアさんが唐突に「編入生を紹介します〜」とか言い出した時にはもう既に嫌な予感がしていたのだが……。まあ、なんだ。その転入生とやらがセラフィーナとミリヤの二人だった訳だ。

 勿論教室は騒然。そりゃそうだよ。魔王と魔王の右腕が今日からクラスメイトになりますので仲良くして下さいと言われて簡単に受け入れる奴が何処にいる。ましてやミリヤに至っては俺達を襲撃したばかりだからな。

 怒号が飛び交う教室。無理もない。にこにこしながら「賑やかになっていいじゃないですか〜」と呑気に宣うフレアさんがおかしいのだ。

 因みに、怒号を飛ばしていたのは主にアイラである。本当にお前はみんなと仲が悪いな可愛い可愛い妹よ…………。人付き合いが苦手だと将来苦労するぞ? 兄はとても心配です。


 話が逸れたので戻そう。フレアさんが言うには「この学校は身分や生まれなど関係なく、実力で見るというシステムですからね〜。その点、こちらの二人はSクラスに配属されるのに十分な実力を見せてくれましたし〜」とのこと。


 いや、この学校が身分とか生まれを気にしないってことは知っていたけど……。まさか種族すら気にしないとは思わないだろ……。


 と、いけない。また話がそれてしまったな。とにかく、なんやかんやあってクラスメイトが二人も増えた。ただそれだけの話。そのクラスメイトが魔王達だっただけだ、うん。無理矢理にでも納得しような。

 そんなことよりフレアさんは今なんと言った? 定期実技試験? はて、何のことだろうか。



「皆さんなら分かっているかと思いますがこの試験はとても大事なものですから頑張ってくださいね〜」



 そう言われたら聞こうにも聞けなくなるではないか。待ってくれフレアさん、その分かっているみんなとやらに俺が入っていないんだ。俺は全力で分かってますよオーラを漂わせながら密かに悲しんだ。


 というか前にもこんなことがあった気がする。ほら、Sクラスに配属された初日にさ。あの時も思ったけどみんな察しが良過ぎない? あのリーナですら理解していることをまた俺だけ分かってないのか……。勉強が出来るイコール理解力があるではないということか……。

 そうして俺が軽く絶望していると、控えめな質問が聞こえてきた。



「ご、ごめんなさい……。その、定期実技試験とはなんでしょうか?」

「うむ。済まないが我達は最近ここに来たばかりでな。詳しく説明してくれると助かる」

「あ、ごめんなさい〜。そうですよね、お二人は遠くから来たばかりですし分かりませんよね」



 では、改めて詳しく説明しますね〜と言うフレアさん。た、助かった……。

 ありがとうセラフィーナ! 特に遠くから来た訳でもないのに分からなかったという事実からは目を逸らしながら、俺は現れた救世主に感謝の気持ちを込めて視線を送る。


 こっちの視線に気付いた様子のセラフィーナににこりと微笑みかけると、途端に顔を真っ赤にして俯いてしまう。どうしたのだろう、体調でも悪いのだろうか。

 その隣では自分だけ完全に無視されたミリヤが「あぁ……っ! 無視されるも良いな……っ!」と顔を真っ赤にして息を荒らげている。……どうしたのだろう、体調でも悪いのだろうか。

 更に俺の隣に座っているアイラがそれを見て舌打ちをした。握っているペンがミシミシと音を立てている。…………どうしたのだろう、体調でも悪いのだろうか。

 うん、俺は何も見てないぞ。現実逃避なら任せろ。それよりもいまは定期実技試験とやらの説明だ。入学試験の時のようにまた水晶に魔法をぶちかませばいいのだろうか。



「定期実技試験というのは毎年定期的に行われる試験の事です〜。試験の難易度はかなり少し高いですけど、無事合格すれば年に一度のランクアップ試験を受ける資格を得られますよ〜! ですので皆さん頑張りましょうね〜」



 なるほど、そういうことか。

 このアルカナム校には学年という概念がないというのは一度説明したことがあるだろう。その代わりに『ランク制』という制度があると。

 ランクとはランクアップ試験に合格すると上がる仕組みで、初期値は0。ランクが4になると卒業の資格を得ることが出来るというものだ。実際はその難しさ故に殆どの生徒が卒業は出来ないのだが。


 というか、ランクアップ試験って誰でも受けられる訳ではないんだな。ランクアップ試験への挑戦権を獲得するための試験が定期実技試験だというのなら、確かに大事だな。一流の踏み台を目指す者として決して失敗は許されない、頑張ろう。



「それで、結局その定期実技試験の内容はどのようなものになるのでしょう?」

「いい質問ですねエルナさん! 今日はその話をしようと思ってたんですよ〜」



 エルナの質問に対し、フレアさんは両手を合わせてニコニコと答える。ふむ、どのような内容になるのだろうか。ありえそうなのは前の授業のように薬草を取りにダンジョンへ行くとかか?

 みんながあれこれ予想を付けながらフレアさんの言葉を待つ。そして――――





「皆さんには、それぞれドラゴンの鱗を取ってきて貰います〜!」





 いや無理。





「ドっ、ドラゴン!? いやいやいやいや! フレアせんせー! ボクドラゴンなんて見たことないよ!?」

「あっ、安心して下さいね。勿論生徒さんにそこまで厳しい試験ではありませんから〜」

「ほんとっ? そ、そうだよね。ほっ、よかっ――――」

「このドラゴンというのに指定はありませんから、ドラゴンなら何でもいいですよ〜」

「いやそういう問題じゃないと思うんだけどなボクは!」



 聞き分けのいいユリアがここまで食いかかるなんて珍しい。が、それも当たり前だろう。生徒に対してドラゴンを狩ってこいという試験を出す教師が何処に居るというのだ。まあ、信じ難いことに目の前に居るんだけどな。

 ギャーギャーと喚くユリアを、その肩にぽんっと手を乗せたリーナが宥める。これ以上無い程に取り乱すユリアを落ち着かせてやろうなんて、リーナは良い奴だなぁ……。



「まあまあ、良いじゃねぇかユリア。ドラゴンだろ? 腕が鳴るぜ!」

「な、なんでリーナはそんなに余裕そうなの!?」

「だってよぅ、ドラゴンだぜドラゴン! オレ昔からずっと一回戦ってみたいって思ってたんだよなぁ」

「ボクはやだよ! 食べられちゃうかもしれないじゃん!」

「…………脳筋は人生が楽しそうで羨ましい」



 前言撤回、ただの戦闘民族だったようだ。

 騒ぐ二人と静かに毒を吐くクリスティーナ。もう教室内がハチャメチャなんだが……。


 それにしても、ドラゴンか……。俺も学者として色々調べたことがあるけど、そのどれもが学生が相手するには荷が重いものばかりだった。難易度が少し高いってレベルじゃないんだけど。

 定期実技試験の段階でこれとか、より難関なランクアップ試験は一体どれほど難しいんだろう。やべぇ……考えてたら頭が痛くなってきた。


 クラスメイト達はそれぞれが頭を抱えている。いや、テーネとミリヤは何故か涼しげな顔をしているけど……。彼女達の場合は実力もあるし、勝算があるのだろうか。


 そんな異様な空気が流れる中、これまでずっと黙っていたアイラが明るい声をあげた。



「では、一緒にドラゴンを探しましょうねお兄さま! 私とお兄さまならばきっとドラゴンなんてすぐに――――」

「あ、そういえばアラン君はこの定期実技試験は免除されていますからやらなくても良いですよ〜」

「なんでですかっ!? 折角お兄さまと二人っきりで遠出するチャンスなのにっ!」

「アラン君は元々実績がありますし、つい先日魔王を倒したばかりですからね〜。特例として学校側が認めたんですよ〜。それに〜――――」



 フレアさんはそこで一度言葉を切ると、教室内をぐるりと見渡し言った。まるでそう、クラスメイト達一人一人と目を合わせるように。



「皆さん、アラン君に頼る気満々でしたよね〜?」



 クラスメイト達は全員サッと視線を伏せた。勿論その中には嬉しそうにしていたリーナと余裕そうにしていたテーネとミリヤも含まれる。えぇ…………お前ら…………。

 というか、俺本当にこの試験受けなくていいの? いや、俺が免除されてるのは嬉しいんだけどさ。なんというか、ハブられた感というかさ、課外授業でグループからハブられた前世の苦い記憶がフラッシュバック――――これ以上はやめよう。このままでは俺のメンタルに致命的なダメージが入ってしまう。

 そうして俺が自己防衛している間にもフレアさんは言葉を続ける。



「アラン君に頼られたら試験の意味がなくなってしまいますからね〜。それぞれの力で頑張って下さい〜」

「し、しかしそれではあまりにも難易度が高過ぎるのでは?」

「別に先生はドラゴンを倒して下さいなんて言ってませんよ〜?」

「えっ? それってどういうこと?」



 エルナの質問に対するフレアさんの回答に疑問符を浮かべるユリア。そんな彼女を見たフレアさんはニコニコと優しく説明する。



「別にドラゴンの鱗さえ手に入れれば手段は問いません〜。別に人から買ったりしてもいいんですよ〜?」

「あっ、そっか! それならボクでも出来るかも!」

「…………ユリア。残念ながらドラゴンの鱗は滅多に売ってない」

「ええっ!? じゃあダメじゃん!」



 ぱぁっと笑顔を浮かべて喜ぶ純粋なユリアにクリスティーナが冷静な指摘を入れる。

 再びざわめき出すクラスメイト達を優しく見つめながら、フレアさんは締め括った。





「期間は今日から二ヶ月間です〜。どうやってドラゴン鱗を手に入れるかを考えるのも試験の内ですから、皆さん頑張って下さいね〜!」



 はてさて、どうなることやら。

 今日で丁度初投稿から一ヶ月です。まさかここまで沢山の方に応援して頂けるとは思っておりませんでした、皆様本当にありがとうございます!

 一ヶ月間は頑張って毎日投稿を続けたいと思っておりましたが、それは途切れてしまいましたね。


 私事ではありますが、新年度を迎えリアルの方がかなり忙しく大変な時期になってしまいました。それに伴い、投稿ペースが一時的に落ちてしまいます。極力執筆の時間を取る努力は致しますし落ち着き次第またペースを戻せればなと思っておりますのでご理解下さいませ。


 新章にも突入致しました事ですし、これからも精一杯頑張りますのでお付き合い下さいませ。


               清水彩葉

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の兄としての生き様、踏み台になろうとしながら英雄のようになっている空振り感がとても良いです。 グラン君の主人公に対する信頼が熱くて好きです。 他の女性キャラも個性があって読者の好みで…
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