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取引成立、そして


 敵対していたはずのミリヤが完全に堕ちて俺の従順なペットと化したその後、なんやかんやで魔族や魔王に関する情報を得ることが出来た俺はミリヤを解放してやった。

 因みにその時、何故かミリヤは「えっ? もう何もしないのですか……?」と言って残念そうな顔をしていたが、俺がまた近い内に会うことになるだろうと告げると「はっ……! これはまさか、放置プレイ……!? あぁ、アラン様ぁ……!」とか言いながら嬉しそうに帰って行った。ちょっと何言ってるか分からないのでまた今度いじめてやろうと思う。


 さて、本題に入ろうか。何故俺がつらつらとこんなことを語っているかというとだな……。





「先程のはどういう事でしょうかお兄さま? 納得出来ません」





 目の前の辛い現実から逃避するためである。


 先程の俺の所業。それを纏めるとズバリ、『妹や弟、そして幼馴染の女の子二人の前で敵対関係の巨乳美少女を無理やりペットにする畜生』である。ははっ、さっきからアイラ達の圧力がすげぇや。

 そうして俺が必死に現実から逃げていると、思わぬ所から救いの手が差し伸べられた。



「まあ落ち着けよ、あー……フラムスさん。アランさんには深い考えがあるんだろう。実際、結果を見れば僕達の知らない情報を幾つか手に入れる事が出来たんだしな」



 そうやって表情の抜け落ちているアイラを宥めてくれたのは、なんとクリスティーナに怪我を治してもらったグレン君である。俺の判断ミスのせいで怪我を負ってしまったというのに、それでも彼は俺に信頼の目を向けてくれている。

 ありがとう、主人公……! 一生ついていきます……!


 確かに俺は欲望に負けて好き放題やらかしたが、完全に考え無しだった訳では無いのだ。ここで上手く誤魔化さねば、俺の『一流の踏み台転生者になろう計画』が崩壊してしまう……! せっかく今まで頑張ってきたんだ、ここは意地でも切り抜けてみせる……!



「ああ。グレン君の言う通り、考えあっての事だ。人類にとって重要な情報を引き出すために――――」

「違いますっ! お兄さまに深いお考えがあるのは勿論私も分かっております! ですから、そこは心配しておりませんっ!」



 俺が言い訳……もとい、深い考えとやらを話そうとしたところ、アイラがこちらへ乗り出して遮ってくる。えぇ……。



「……ふむ。では、何について納得がいかないんだ?」

「それは勿論あのミリヤとかいう胸と態度ばかり大きいクソ魔族女の事です!」



 そこまで言う必要はないんじゃないかな。



「ふむ。ミリヤの事か」

「何故あの女を逃がしたのかとは聞きませんし、お兄さまの行動が間違っている筈がありません! ですが、それと納得がいくかどうかは別問題です!」

「ああ。彼女を逃がした事については勿論これから説明を――――」

「そんな事は後でいいですっ!! それよりも――――」



 またもや俺の言葉を途中で遮るアイラ。ミリヤの気持ちがちょっと分かった。今思えば申し訳ない事をしたなぁ……なんて得意の現実逃避をかましていると、俺の可愛い可愛い妹は言葉の核爆弾を投下した。



「何故あの女を隷属したのですか! 私にはそんな事してくれてないのにぃ!」

「……………………は?」

「なんですかなんなんですか! 従順なペットなら私がいるじゃないですか! やっぱり胸ですか!? お兄さまもあんな無駄な脂肪の塊が好きだと言うんですかぁ!?」



 待て待て待て。確かに俺は大きな胸が大好きだがそれとこれとは別問題では……。そんな俺を尻目にアイラはよりヒートアップしていく。



()というものがありながら、他の雌に手を出すなんてどういう了見なんですかぁっ!! 私だってお兄さまの命令であればなんだって聞くのに! お兄さまが望むのであれば靴を舐める事だって、その、え、えっちな事だって――――もがもが」

「アイラ、落ち着け。端ないぞ」



 とんでもない方向へと暴走するアイラの口を無理やり塞ぎ、宥める。最初は興奮していたアイラだが、抱き締めて頭を撫でるとふにゃりとした表情になり、興奮のベクトルが変化する。鼻息がむふむふうるさいけど…………まあ、黙ってくれたので良しとしようか。


 エルナもクリスティーナも納得のいっていない表情を浮かべていたが、アイラの暴走を見てか冷静になってくれているみたいだ。そう考えたらアイラに感謝の念すら湧いてくる。……一瞬ちょっとだけ本気で引いてごめんな?

 まあ、何より取り敢えずは……。



「帰ってから説明する。もうテーネ達は森の入口まで戻っているようだ。俺達もすぐに行こう」



 この場から逃げよう。





 * * *





「で、アランくん。どうしてそのミリヤさんとやらを見逃したのか教えてくれるんだよね?」



 森の入口に転移すると既に避難を完了していたテーネ達と合流し、何が起こったのか一通りの説明をした。

 ちなみに俺が転移魔法を使えることを知った人達は最初驚いていたが、割とすぐに納得していた。俺だから仕方ないって最近よく聞くけど、微妙に納得がいかないんだよなぁ……。馬鹿にされてる訳では無いだろうけど、どことなく呆れられているような気がする。



「確か調教して従順なペットにしたんですよね〜? 先生、えっちなのはいけないと思いますよ〜?」

「あはは……。フレア先生、アランくんの考えも聞いてあげましょうよ。私には彼が考えなしにそんな事をするとは思えませんし」



 ぷんぷん! と頬を膨らませてこちらを責めるフレアさんをテーネが宥めてくれる。ありがとうテーネ! そしてごめんなテーネ! 完全に俺の理性が欲望に負けてしまっただけの話である。良心が痛むぜ!

 でもここは、俺が蒸発した理性で微かに考えていた理由を話すしかあるまい。



「そうだな。理由として、まずは重要な情報を確実に手に入れたかったという事が一つだ」

「うーん……。確かに魔王の本拠地やダンジョンが魔族の領地だとか、そういった情報が手に入ったんだよね。でも、それってアランくんなら普通に聞き出せたんじゃないの? ほら、アランくんなら人の頭の中を覗く魔法とか使えてもおかしくないし、なんならそのミリヤさんを倒して拷問でもしてしまえば良かったんじゃ? なんで隷属魔法なんて使ったのさ。まさかとは思うけど、その子が可愛くて巨乳だったからって訳じゃないよね?」



 何やら俺に対する偏見や物騒な思考とかテーネの黒いところが多々見え隠れしてるような気がする。まあ言ってること自体は思いっきりその通りな訳だが、勿論隠す。バレたら俺社会的に死ぬからな。



「勿論違う。テーネ、隷属魔法がどのような物か分かるか」

「えっと、その……知ってはいるけど……えっと……」

「…………命令を強制する事が出来る上級魔法。男の人が女の人に使う時は大体性奴れ――――もごもご」

「わぁぁー! ダメだよクリスティーナちゃん!? 女の子でしょ!」



 真っ赤になって言い淀んだテーネの代わりにクリスティーナが答えてくれたのだが、更に顔を真っ赤にしたテーネがその口を塞ぐ。は、話が進まねぇ……! いや確かに隷属魔法ってそういうイメージだけどさ……。



「話を進めさせて貰うぞ。確かに隷属魔法はそのような使い方をする場合も多いが、本質は違う」

「本質…………。ああ、そっか。なるほどね」

「えっ、なになに!? そっちだけで理解してないでボクらにも教えてよー!」

「む、すまなかったなユリア。簡単に言うと監視だ」

「監視?」



 小首を傾げるユリア。テーネとフレアさん以外の疑問符を浮かべている人達にも理解出来るように説明する。



「隷属魔法というのは、その対象の行動を術者はいつでも確認出来るんだ。無論高度な技術を必要とするため簡単な事ではないが。ミリヤは魔王幹部、何処で何をしているかが分かれば対応がしやすいだろう?」

「んー? でも、そもそもアランが魔王を倒しちゃったらダメなの?」

「出来ないとは言わないが、そうなったら戦争だぞ。一対一なら兎も角、総力戦となれば流石に大きな被害が出てしまうだろう?」

「そっか、ボク達は別に戦争がしたい訳じゃないもんね!」



 にぱーっと笑うユリア。さっきから罪悪感が半端ない。

 そんな俺の良心の呵責なんて知らない素直なみんなは次々に俺のでっち上げの後付けに納得の声を上げる。



「成程。今回の件について一番大事なのは私達人類への被害を抑える事。ここでアラン君が魔王の幹部であるミリヤさんを倒してしまえば魔族との戦争は回避出来ない。つまりあの隷属魔法はただ魔王の幹部を服従させるだけではなく彼女を見逃す事で魔族との戦争を回避しつつ、魔族の動きの監視も兼ねた策という事ですか」

「よくわかんねぇけど……まっ、流石はアラン! って事でいいんだよな、エルナ?」

「いやそれは適当過ぎませんかリーナ……。認識としては間違ってはいませんが……」



 結果的にエルナがいい感じに纏めてくれたし、テーネやフレアさんも頷いてるし、ゆ、許された……? え、この子達純粋過ぎでは……?



「…………という事は、えっちな事を考えてたのはアイラだけ」

「うっ! いやそれは――――」

「そうですね。アラン君は人類の平和を守る為に行動してたのに、それを貴女は……」

「ぐっ! ちょ、ちょっと待てよ! お前らだってお兄さまの事疑ってたじゃねぇか!」

「…………乱暴な口調で怒鳴れば誤魔化されるとでも?」

「とんだ自慢の妹もいたものですね、アイラ」

「うぅ……! ぐぬぬぅ……!」

「えっ、なになに! なんかあったの?」

「何でもない! うぅ……お兄さまぁ……!」



 皆が私をいじめるんです助けて下さい! と泣きついてくるアイラ。ぐっ、悪いのは完全に俺なのにアイラがここまでボコボコに言われるのは可哀想過ぎる……。心が痛い……。



「よしよし。誤解させてごめんな、アイラ」

「私の方こそほんの一瞬、ほんのちょっとだけとはいえ疑ってしまってごめんなさいお兄さま! 愛してます!」



 みんなが素直ないい子で俺の事を信用してくれて助かった……! もう二度と俺はみんなの信用を裏切らないぞ。一流の踏み台云々の前に人としてそこはしっかりしないといけない。

 それと、みんなが将来悪い人に騙されないように注意しないといけない。純粋なみんなを騙した悪い男である俺が言うのはどうかと思うが、こんな適当な言い訳で揃いも揃って騙されるとか将来が不安である。改めてこの世界の脳筋具合が分かった。


 本当にごめんな、みんな! そして本当にごめんな、アイラ! でもこれだけはハッキリと言わしてくれ、アイラ!





「それと、お前に隷属魔法を掛けていないのはお前の事は俺にとって従順なペットじゃなくて大切な妹だと思っているからであって、決してお前に魅力が無い訳では――――」

「わぁぁーっ! わぁぁぁぁーっ!! なんでそれ今ここで言うんですかお兄さまぁ!?」

「なにそれなにそれ!! なにがあったのかボクにもちゃんと教えてよ!」

「私も気になるなー。アイラちゃん何言ったの?」

「お前らは知らなくてもいいんだよ!! てか、あの時の私はおかしくなってたから、その……つ、つい言っちゃったんだよ!」

「ああ、安心したぞアイラ。あの言葉は本心ではなかったのだな。良かった」

「いえ! あれは私の本心ですから! 私がお兄さまの従順なペットなのも靴を舐めれるのもえっちな――――」

「うげっ……そんな事言ったのかよアイラ……。それは流石のオレでもドン引きだぞ……」

「わぁぁー! 引くなよリーナぁ! 違うのにぃー!」



 お兄さまのバカー! 大好きー! と叫ぶアイラの泣き顔は、新たな扉を開いた俺にとってはドストライクだった。……やべぇ、後戻り出来ないところまで来てしまった。

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