第二章 『転生』
自称神に転生とか告げられて意識を失ってどのくらい時間が経過したのだろう……?
もしかしたら、自分自身が起こした事故から逃げ出したい現実逃避が夢となっていただけなのかもしれない……。
現実なんて、こんなものだ……。眠っている身体を起こそうとしているのに身体が動く気配がまるでない。何が起きているのか知るために次は目を開けようと試みるが目も開けられなくなっていた。
「―――ッ!?」
失ったことで脳が停止して、植物状態に陥ったのかもしれない。ある意味、一番の罰を受けてしまった。このまま寿命尽きる日まで静かに時を過ごそう。
………。
……。
…。
「――――――」
どのくらい眠り続けたのだろう……?
数秒、数分、数時間、数日、数年。時が経過しているのかさえ判らない。時の流れが判らない世界なのに何故か不思議と嫌な気分ではない寧ろ気分が良い。まるで広大な大海原で一人優雅に浮かんでいるような気持ちで過ごしている。
ゴゴゴ―――ッ!
突然、大きな揺れを感じ取れた。それと同時に襲い掛かる身体に変化。始めと逆、あれだけ動かせなかった身体が僅かながら動けるようになっている。しかし、目だけは未だに開くことが出来ない。その為、自分の現状がどのようになっているのか判らない。失った感覚の再生に自分の現状が本当にどうなっているのか判らない。不安と恐怖が交互に襲い掛かる中、突然の光が視界を白色で支配する。
「………ッ!?」
光に少しずつ慣れていき、視界に色が映りはじめる。目の前には涙を零す巨人とも言える大柄な男と子供達の姿に驚いて思わず声を出してしまったが声が裏返っているのか声が上手く出せない。
「あう、ああー……」
「おお、よしよし。怖がらなくていいぞ。お前のパパだぞ」
男は軽々と自分を担いでいる。大きな手が全身を軽々と持ち上げられたことで現状を把握した。自分が赤ん坊に生まれ変わっている。自称神の言う通り自分は転生してしまったのだ。
「あなた、私にも抱かせて」
「勿論だ。さあ、ママの所へ行こうな」
「さあ、坊や私がママよ。生まれてきてくれて本当に有難う」
母親である彼女は涙を零しながら自分を優しく抱きしめてくれた。その腕の温もりに優しい愛情で満ち溢れていた。感謝と同時に押し寄せる悲痛の感情……。
自分は転生した。それは『相馬 優斗』として生きていた者の生涯は終えてしまったのだ。
自分が生まれたことに喜び、感謝を唱える彼女に対して喜びと感謝を…。そして、母親に対する自責と後悔が混ざり合った。様々な感情の渦を言葉で出して叫びたかったが未発達の身体で転生したばかりの自分には出来なかった。ならば、赤ん坊らしく泣いて叫ぼう……。
生まれた子供らしく大声で―――。