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自分の称号は『嫌われ者』です  作者: オタク侍
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第一章 『神の印象』

真っ黒な世界の中、突然自分の意識が消えたような感覚に襲われた。また夢を見ているのか……?

徐々に意識を取り戻した自分は体を起こして夢であったことを心より安堵する。

「あれ……ここ何処?」

目の前に映っている景色は自分の部屋ではない。周りに数えきれないほどの本棚が置かれている。天井を見上げれば宇宙の景色が広がっている。

「まだ……夢の中なのか……?」

夢ならば行動を起こせば覚めるきっかけとなる。何の夢なのかは判らないがとりあえず通路を歩こう。

通路を歩いてから数十分は経過しているが本棚は相変わらず続いている。歩けど歩けど本棚ばかりまるで何処までも続いているかのように感じさせてくれる。

「どれだけ広い敷地だよ……」

小休憩しようと座り込む。本棚に漫画が置かれていないか題名を見るが何も書かれていない。適当に本を一冊取り出す。

表紙には人の名前だけが記載されているだけ。試しに本を開くと表紙に記載されていた人の紹介なのか生い立ちが載っていた。

「浅田 大二郎……聴いたことがないけど有名な人なのか?」

次々とページを捲るが浅田 大二郎という人の幼児期の歴史、児童期の歴史が綴られている。最後のページには膵臓癌による病死であったようだ。

「随分と細かな詳細が載っているな……」

『浅田 大二郎』の本を棚に戻す。そして隣の本を取り出し再び開くと先程の本と同じく誕生に始まり死亡に終わる。次々と本を取り出し確認する。死亡による原因が老衰であれば他殺、自殺、病死様々であるが内容は全て同じ誕生から死亡の歴史が綴られている。

「ここは夢の中なのか……?」

頭の中に助けられなかった子供の記憶が鮮明に残っている。

「そうだ……あの子供」

半信半疑であるが子供の名前を思い出して本棚を探す。名前の順番を考えるならば五十音順かアルファベット順に並んでいるはず

「………あった―――」

同じく誕生の歴史が綴られていたが他の本よりも圧倒的に厚みが少ない。その理由が不思議と判ってしまった。予想が覆ることを望みながら最後のページを開く。

『殺人によるナイフで腹部を刺され出血多量による死亡―――』

やはり―――この本は死んだ人の歩んできた人生の全てが刻み込まれている。若くして死んだ故に本の厚みが薄い。

「自分の本も置いてあるのか」

自分の名がタイトルになっている本を探すが近しい名前ばかりで自分の本が存在していない。代わりに見つかった祖父母の本には孫である自分との出会いの歴史が載っていた。すっかり忘れていた幼いころの思い出話を思い出してしまった。

「ここに自分の本がないのであれば自分はまだ死んでいないのか……?」

「思い出せッ! 搬送され、子どもの死を知らされたあの時のことをッ!」


………―――


『聴いての通りだ……。お前が怪我を負わせた子供は搬送中に息を引き取ったよ』

『えっ?』

落胆した。犯人扱いされ手錠までも掛けられた扱いを受けただけでなく子供の命までも救えなかった。

このまま警察で事情聴取を受けるだろう…重傷を負った犯人が正直に話すとは思えないが警察の捜査でナイフが見つかれば真犯人があのとこであることを掴んでくれる。

また悪夢のような辛い時間を受けなければならない。そう思うと足の震えが止まらなくなる。

深呼吸して落ち着こうとして突然の暗闇に襲われた。

自分の視界が黒くなる間際に僅かに残っている聞こえた音の記憶―――エンジン音、地面を摩擦する金属音、車輪の音

そして、現在に至っていることから推測して恐らく事故で意識を失った……それとも死んでしまったのだろうか……。

自分が死んでいるかもしれないのに冷静に現状に整理が出来ている…。

「ここは死後の世界だろう。創作ばかりと思っていたが実在していたとは思わなかった。死んでみなければ判らないこともあるのだな」

「思ったよりも早い目覚めですね」

後ろを振り返ると突然現れたのは全身をフードで全身を纏っているが声を聴く限り性別は男であることは間違いない。


「天使や女神じゃないことに残念と感じているだろう?」

「いや別に……」

「良いよ。君の言いたいことは判っているから」

人の話を聞かない野郎だな。

「一応、自己紹介するね。『宇宙ほしの管理を司る神』のテクサム。まあ、君とは一度きりだから覚えなくても良いから」

テクサムと名乗る自称神様は一冊の本を取り出すと記載されている内容を読み上げる。

「女性の所持品の盗難、ストーカー、婦女暴行、一般人を巻き込んでの喧嘩―――」

「それはッ!」

「最期は殺人で捕まり、搬送中にトラックに激突されて死ぬ」

「生前の君は最悪。自業自得だね……これ以上資料を読む程もないよ。同じ男として悲しくなっちゃうよ」

資料を投げ捨てると自分のことをゴミ屑のように見る冷たい目へと変わる。

どうやら、あの資料には自分が生前に犯した罪が記載されているようだ。神様なら事件の真実を判っていると思っていたが所詮神も人と同じ種族なのか………

「でも、君みたいな罪人でも人手が欲しいみたいだし……仕方がないから異世界へ転生させてあげるよ」

「あの…何故。自分が異世界に?」

「君に神々の管理や法則を説明しても意味ないでしょう」

話の腰を折るなと言わんばかりに不機嫌な態度を取る。本当に神なのかと疑問が生まれてしまう。もう聞くのは辞めよう。神が発する言葉を黙って聞けばよいのだと疑問を持たずに黙って聴いて過ごそう。

やがてテクサムの説明は終わったようだが話す内容は正直、全く理解が出来ない。補足説明もなく、淡々と話すだけ。教える気はないのが良く判る。

「最後に何か質問はあるか?」

「ありません」

「転生に関して何も疑問を持たないとは屑に考える頭は持っていないようだな」

本当にムカツク神様だな。自称神様と謳っているだけの存在だろ。 最後まで理不尽な態度で

身体が宙に浮いていく。光に包まれていく。新たな人生へと転生が始まる。次に目が覚めた時、異世界とやらで自分は何をすべきなのか判らない今は何も考えず眠ろう。

再び起きた時に夢か現実なのか答えが出るのだから―――

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