明けゆく今日
処女作となります、少しでもこの小説の情景を想像してもらえたらうれしいです。
「きれいだ……」
海に沈みゆく夕日に向けられた、不意に出た言葉だった。
「まさかこんなくさい台詞を言うなんて……俺ってやばいやつ?」
つい今しがたの自らの行動を省みる。
しかしこの男、その行為を存外楽しんでいるようだ。
実感がないのか達しているのか、その表情はおかし気。
それでも悲哀で満たされたその目は遠くへとむけられ、それ以上なにも語ろうとはしない。
「今はむかし……。ははっ、これもあいつらには聞かせられないな」
夕日のつくり出す雰囲気がそうさせるのか、男の頭の中は昔に思いをはせることでいっぱいのようだ。
この男、名は秋という。
秋に生まれたから秋。単純がゆえに彼はこの名を気に入っている。
その性格は恥ずかしがりや故に強情、しかしその実、内には純粋な優しさをもっている。
時々彼はこうして何も考えずこの岸辺にやってくる。
何も考えずにやってきては何も考えずに過ごす、その時間はいつしか安らぎの時間へと変化を遂げた。
「アキくーん、なにしてるの?」
「えっ」
ふとした時間に思ってやまないあの娘の声が聞こえた、気がする。
きっと聞き間違えだろう。
ここは村のはずれにある岸辺、人を見かけることは滅多にない。
「ふー」
青く澄んだ自島の海は変わらず目の前に在ってくれている。……平穏だった。
「なにしてるの?」
「わっ!えっ?」
驚いた、本当にいたんだ。
あの人が本当にこんな場所にいた。
なぜかなんてどうでもいい。
「なにもしてないよ、ボーっとしてただけ」
休憩はもう十分とった
また俺の世界が動き出す
そして俺は立ち上がる
太陽はすでに休んで、
明日の準備をしている
明日のため、俺はこれから何をしようか