映し出すもの
主人公だなかなか出ない
第85話 映し出すもの
「久しぶり~!!」
楽しげに降ってくる声。
その声を聞いて、湧き上がってきたのは、その声と対照的な――恐怖。
「ねえねえ。無視するの~」
動揺して声が出せないのを、無視したと思ったのか首を傾げて顔を覗き込んでくる存在。
「………刹雅」
「あっ、わちしの事覚えてたんだ」
良く知っている。
若い姿。自分が最後に見た姿と寸分変わらない姿。
………老いた自分と違いまるで時が止まったように切り離されているが、偽物でもそっくりさんでもない。
「死んだんじゃ……」
そう、死んだはずだ。
「――砂漠化を止めなかったから。か」
急にふざけた口調から真面目な声になる。
そうだ。
「お前なら危険だと判断して止めるだろう!!」
実験の最中で亡くなった。
そう思っていた。
………そうなるように仕向けた。
「生きていたのなら連絡ぐらい…」
「――生き埋めになって、実際死んでいたけどな」
「えっ!?」
どういう事だ。
死んでた?
「死んだような目に合っていたと……」
「いや、違う。違う。ホントに死んでた」
冗談でも悪趣味な事を言う。
「まあ、でもこうやって今は生きてるし~」
刹雅は面白がるように寄ってきて、
「残念だったな。生きてて。なあ、《領主様》」
耳元で囁く。
「……………………やはり恨んでいるのか。刹雅…兄さん」
呆然と断罪人が来たのかと判断して小刻みに震える。
「俺が領主になったから」
刹雅は領主の兄だった。
本来なら、この街の領主になるのは兄だった。
それを――。
「実験の失敗による事故。そう思わせる様にわちしを実験室に閉じ込めたんだよな。砂で埋められて出てこれない状態にして」
砂漠化してしまった地。
「元々草原をより豊かにするための土壌実験。その暴走……。わちしが元々責任者だったからな。罪は被せられるし、領主の座は手に入るし、いい判断だよ」
実際成功したしな。
「わちしが生き返らなかったら。の話だけど」
さああああぁ
「ゆ、許してくれ!!」
青ざめ、怯える領主。
「別に責めてないよ~。実験の失敗で砂漠化して、結果的に領民を苦しめたのは領主様とか。善良ないい領主様として頑張っている弟さんだしね~」
がたがた
「おかしいな。褒めてるのにど~して怯えるのかな~」
褒めてる?
どこがだ。
獲物をいたぶって楽しんでいるしか思えないじゃないか。
「どうして、悪い方に捕らえるかな~。――別にわちしは領主の座に未練は無いんだよね。継ぐものだと思っていたし、そのために努力もした。だからさ、特に希望していたわけじゃないし」
お前が欲しかったらどうぞと言う気分なだけで。
「まあ、だから欲も無くてね~。混沌の民にならないとスカウトされた時は最初意味分からなかったし」
「混沌…?」
「そう意味じゃ、感謝してるよ~。死にそうになった直前になると選択したから生き返ったし」
ほんと死なないと欲望って分からないものなんだね。
「でさ、生き返ったし挨拶に来たけど、これからどうしようか?」
復讐という形でお前を殺した方がいい?
それとも、
ばあああん
「――お前がするのは混沌の民の事を話すだけだ」
銃口から煙が出ている。
ドアが大きく開かれ、そこには《蓮華》の印を持つ青年――。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふうん。彼女の言っていた。あれの今の飼い主って君の事?」
あれと言うのを知らないけどと告げる刹雅に、
「知る必要が無い」
と切り捨てた。
花蕾「混沌の民って?」
紅諒「……黙秘する」




