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闇夜を照らす暁  作者: 高月水都
蜃気楼
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蜃気楼の街

タイトルのわりに街が遠い

  第72話  蜃気楼の街

 車は進む。

「あれっ?」

 ぼやけているが街が見える。

「修留?」

 どうしました?

 花蕾が問い掛けてくる。

「気のせいかな…? 街が見えるんだけど、ぼやけてて……」

 焦点が合わないと伝えると、

「蜃気楼でしょうか?」

「蜃気楼?」

 何だそれは?

「……幻ですね」

 説明が難しかったようだ。

「本物ではないと言うのだけは覚えてください」

 にこりと微笑んでいるが、誤魔化しているように思えるのは気のせいだろうか。

「昔は蜃気楼に惑わされて道を彷徨った旅人も多かったようですよ」

「ふ~ん」

 カーナビを見て、

「………今も惑わされているのかな?」

 相変わらず草原を走っている事になっているが。

「紅諒。カーナビ壊れてませんか?」

「カーナビだけならそうかもしれないが、地図も似たようなものだ」

 花蕾に地図を渡す。

「……………………砂漠ではないですね」

 地図では。

「なあ。結界とかに引っ掛かってると言うオチじゃないのか? よくやりそうだけど」

 香真が思いついたようにハンドルを握りながら告げてくるが、

「う~ん。僕は分からないな。紅諒は?」

「術は感じないな」

 高度の術ならそれまでだけど、それとは違うような……。


「紅諒」

 ふとそれに気付いて、声を掛ける。

「どうし…ああ」

「どうかしましたか?」

 こちらの反応が妙なので花蕾が尋ねてくる。ちなみに香真はハンドルを握ったままこちらに視線を向ける余裕はない。


「人だ……」

 僕の声と紅諒の声が重なる。


 視線の先。

 水瓶を背負って歩く男性。

「あっ……!?」

 男性がこちらに気付いて視線を向けてくる。

 たんっ

 車から出て、砂に足を取られる事無く軽やかな足取りでその男性に近付く。

「すみません。道を尋ねたいのですけど…」

 と尋ねると男性は化け物を見るような目を向けてくる。

 翼を出しているとよくそういう目を向けられるが、今は翼を出してないしな。

 無意識で出しているだろうか…。

 ついつい背中を確認すると、

「修留!!」

 香真が叫ぶ。

 それと同時に砂から巨大なミミズみたいな生き物が現れて――あくまでみたいだ。ミミズに鋭い牙など無いだろうし――大きく口を開いてこちらを食べようとしてくる。

「うわっ!?」

 ミミズ嫌いな人が見たらトラウマになりそうだ。

「危ないっ!?」

 男性が声を掛けてくれる。心配してくれているが、

「よっ!!」

 砂に足を取られたからいつもより高く跳べないが――翼を出してない蹴力だけなので飛んではいない――軽々とその化け物の頭上を超えて、

「せいっ!!」

 と両手を合わせて握り、叩き付ける。


「終わったな」

 紅諒の声と同時に、化け物は脳震盪を起こして倒れる。

「やっぱ、いつもより力で無かったな。気絶で終わらせちゃった」

「……………………気絶。か…」

 紅諒の呆れた声。

「お前。見た目はノーダメージなのに内側は破壊ってどういう技術だよ!!」

「へぇっ!?」

 どういう事だろうと首を傾げると、

「…脳みそは破壊してあるぞ」

 化け物の口から溢れている液体。それは、

「内側の身体の組織を破壊して出てきたものだ」

 紅諒はやや呆れたように告げるのだった。














修留「ミミズによく似た生き物は、外装は堅いけど内側はもろいよ」

紅諒「それはお前だけだ」


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