夢
少し本編からずれるかな
第68話 夢
こぽっ
こぽこぽ
吹き出る泡。
泥のような底なし沼。
「久しぶり」
沼から声が届く。
「会いに来てくれたんだね」
黒い髪。血を思わせる紅い紅い瞳。
セリフだけなら何とも思えないが、その声に宿るのは狂気――。
「………」
泥の沼に触れないぎりぎりに修留は立っている。
そこから離れたいとは思っているが、離れられない。
………主導権は、沼に居る方が持っているのだ――。
「……僕を呼んだのはお前でしょ」
会いたくない。会いたくなかった。
「呼んだ?」
嗤う。
「封印されているワタシが出来るわけないだろう」
嗤う。
まるで玩具を見付けたようなあどけない笑みで――。
「――ふざけるなっ!!」
近くに殴れるものがあったら殴って破壊してしまうような激しさで叫ぶ。
「お前!! 僕の身体を使っただろう!!」
黒幕に心当たりが……。
・・・・
「――僕の身体…?」
ずずずっ
沼から移動して近付く姿。
「――勘違いしてるな。この身体はお前のじゃない。元々ワタシのモノだ」
顎に触れる手。
その手はいつでも顎を破壊できる力を持っている。
「くっ!?」
汗が流れる。殺される恐怖が湧き出る。
「――本当ならさっさとその身体を明け渡してもらいたいんだけどな」
幸いな事なのか沼の主にはまだ殺意はない。
破壊衝動もない。
「まあ、いいや。――奴らの封印を破るのも得策じゃないし」
沼の形をした封印。
そこから出る事は出来ない。
「あの女」
ぞくっ
「私が殺す。殺す。殺す。殺す」
明確な殺意。
「殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。ここ殺す。殺す。コロコロ殺す」
沼の泥が押さえ付けるように絡みつく。
「………」
殺意があるという事はまだましな方。
破壊衝動が常にある狂っている人格。
………もう一人の自分。
「………」
いや、本来の自分。
「殺してやる。彼らを殺したあいつを。彼女を苦しめた分も殺して殺して、ああ、いたぶり殺してやる」
想像したのだろう。その顔にすごく楽しそうな笑みを浮かべる。
光悦の笑み。
この笑みが出てくるともう時期、正気が戻ってくるだろう。
「――身体はもう少し貸してあげる。せいぜい、家族ごっこを楽しみなさい」
耳元でささやかれた言葉。
広がっていた沼は消え、白い霧。
「――分かっている」
家族ごっこ。
紅諒達と居るのはあれにとってはごっこ遊び。そこに僕の感情は含まれない。
自分は、偽物だ。
「――分かっているよ」
闇色に染まった修留を封印している一部が、今修留と呼ばれている人格。本質は都合よく封印するために作られた人形。
紅諒達と居るのは偽物。
嘘の世界。
「でも…」
夢は見させて、覚めるのは分かっている。
「紅諒」
そっと宝物のようにその名を呼んだ。
「ワタシの事はまあ《闇修留》とでも呼んでくれればいいよ」
「それ、どこのカード漫画?」




