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闇夜を照らす暁  作者: 高月水都
蛇と少女
66/265

お人形

誰が誰の人形なのか?

  第65話  お人形

 それは突然だった。


 ぎしっ

 ぎしぎし

 

 魔人の身体が奇妙に膨れ上がる。

 身体が関節を裏切って奇妙な方向に身体が曲がる。


「なっ、何だこれっ!! 痛い!! 痛い痛い痛い………………!!」

 魔人の叫びは断末魔の様に廃鉱全体に響き渡る。

 

 しゅっ

 闇色の翼を広げた修留は魔人の近くに居て危ない飛空の家族を抱え、飛空の元に着地して送り届ける。


「なんだありゃ…」

 香真が呟くのが聞こえる。


「――花蕾」

「はい」

「三人を連れて逃げろ。――お前の防御なら守れるだろう」

「――分かりました。行きますよ」

 飛空が三人を連れて行く、

「――修留」

「分からない。ぐちゃぐちゃしてる…」

 気持ち悪いと告げてくるが、

「我慢しろ」

 と切り捨てる。


 奇妙な奇妙姿だった。

 額には、人神のような花を思わせる印が浮かび――。一本、または二本の角が、両肩からそれぞれ一本ずつ、額からも花の印の下――眉間から生えてきて、背中には鳥の羽根と蝙蝠の羽根が混ざった代物が広がっている。


「やヴぇロ…苦チイ……!! タっ助けろ……か××」

 何者かの名前を言おうとした途端。魔人の舌が切り裂かれ、地面に落ちる。

 ぴちっ

 ぴちぴち

 舌は、陸に上がった魚のように跳ね、やがて動かなくなる。


「………《混沌の民》?」

 香真が呟く、

「………何だそれは?」

「いや、阿蛇が…あれは混沌の民だと言い出して………」

 阿蛇が?

 阿蛇は答える気が無いのだろう。香真が何度も問い掛けるが沈黙しているようだ。

 

 そうこうしている内にその…混沌の民とやらが鈍い動きで、飛空達を入れるために用意した炉に向かって歩き出す。

「………先にあの炉を壊した方がいいみたいだな」

「賛せ~い♡」

 修留が答えると、闇色の翼を広げて、

「はあああ!!」

 と気合入れて破壊する。


「…闇の翼人……ヤミのヤミの…!?」

 舌は切り落とされたはずだった。奇妙な体を全身で振るわせて、喉からではなく、身体を魔人が狂ったように喚く、

「……ヤミの、ヤミの………」

 混沌の民の目がじっと修留に向けられる。


「……女神ゴロシのテンテ…きぃぃぃぃぃぃ!!」


――そいつの口を閉じさせろ!!


 何者かの声が脳裏に響く、それと同時に香真が阿蛇で混沌の民を消滅させる。

「阿蛇…?」

 大きく見開いた目。香真の意思ではない。阿蛇が香真の身体を操って切り倒したのだ。


      ・・

「……………アレが居るのか」

 修留から低い声が零れる。

 その声に宿るのは歓喜。

 昏く、歪んだ歓喜。

「修留?」

 どうした?

 止めないといけない。とっさにそう感じて修留に近付く、

「紅諒?」

 どうしたの?

 首を傾げてこちらを見てくるのはいつもの修留。


 ……………気のせいか?


 違うのは、分かっている。でも、そう信じたかった。 








華王「真実はまだ隠さないといけない」

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