弱者
この場合の弱者は敵です
第64話 弱者
花蕾と修留。二人の聴覚で僅かな音を辿っていく。
「――来たね」
声がはっきり向けられる。
「――どうやら」
かちゃっ
「――あっちにもこちらの動きは筒抜けの様だ」
聴覚がいいのは魔人だ(翼人もいいが)どうやらあちらには魔人が居るらしい。
「――行くぞ」
ひっそりと言っても無駄なようだと告げると、その言葉を待っていたように隠し扉が開き、
「――ようこそ!!」
と得体の知れない男が巨大な炉をバックに立っている。
「魔人だな」
特徴的な角。首筋に見える痣。
明らかに魔人だ。
「ようこそ!! この私の工房へ!!」
ばっ
大きく広げた手。その手の向こうには、
「お母さん!! 海璃!!」
駆け寄ろうと走り出す飛空。
「行っちゃだめ!!」
相手の思うつぼだよと慌てて修留が止めるが、
「離して!! 助けなきゃっ!!」
怪我させないように本気を出せない修留と必死に助けようと暴れ、手加減なしの飛空。
本気を出せば一発で抑えられるが、怪我だけじゃすまない。
「――お前達が倒神倒魔具を作りたい輩か?」
「そうだと言ったら?」
香真が動く。
「その前に殺す!!」
「それが、《阿蛇》の持ち主が言う事かい?」
「だから、だよ!!」
かんっ
香真が阿蛇と共に切り付ける。だが、
「強化ガラスだよ」
にやりと笑う不愉快な顔。
「いくら《阿蛇》でも壊せないだろう」
誇らしげに笑う顔がカエルを踏み潰したように見える。見ていて楽しい物じゃないさっさと退治しろと香真に視線を向ける。
「ったく、お前の命令は聞きたくないけど、俺のしたい事とおんなじだからな」
しゃ~ねえな。
ばりいいいいいん
割れていく強化ガラス(笑)。
「ワリィな。しっかり対策してくれてたみたいなのに」
壊しちまった~(笑)。
にまにまと、気味の悪い笑い方をする奴だ。
・・・
「なっ、何故だ!! このガラスは《阿蛇》でも壊せないとあの者が言っていたのに!!」
あの者?
「――黒幕はお前じゃないのかっ!?」
てっきり黒幕はこいつだと思っていたのに、
「うっ、五月蠅いっ!!」
さっさと捕らえろと魔人が叫ぶが、
「あっ、ごめん!」
「もう倒してしまいました(にっこり)」
死屍累々。
飛空を抑えていたはずなのに、いつの間にか飛空を片手で抑えたまま――その方が力が加減できた(修留談)――モブとしか言えない三下の魔人を倒していた修留と花蕾。
それを確認して、
「さっさと片付けろ」
声を出して命じる。
「いや、それよりも黒幕を話してもらわないとな」
こんな厄介事二度とごめんだ。
「じゃあ、捕らえますか」
ぴきっ ぴき
腕を鳴らして香真がそいつに近付く。
♦
「役に立たないわねぇ」
まっ、所詮小物だし、仕方ないか。
遠方からその戦いを見ている女性は楽しげに笑う。
「まあ、最後は楽しませてね」
くすっ
ぱちん
指を鳴らす。
そして、戦いの場に異変が起きる――。
黒幕「………あたしの出番何時かなぁ~」




