使える者は他人でも使う
香真久しぶりに活躍する
第57話 使える者は他人でも使う
遠くで火事が起きているのが視線の先に見える。
「あいつらだろうな……」
派手にやりやがる。まあ、それで動きやすくなったと言えばいいだろう。
人々は窓から家事の様子を見ている。自分達の所には届かないと思うからその火事すら楽しんで見られる。まあ、口では心配だとか色々言っているけど。
そんな客人を相手にしないで、人々と反対方向に向かって歩き出す。
本当なら接待をしている人達が関係者以外立ち入り禁止となっている所に入ろうとするのを事前に止めるものだがそういう人達も火事の方で気が漫ろだ。
……………心配そうというかやや顔色が悪いのも居るから。もしかしたら家族とか知り合いがそちらに居るかもしれない。
関係者以外立ち入り禁止区域の目星を付けていた一室に音もなく入って行く。
「ありま……」
乱雑に置かれた書類。掃除ぐらいしろよと文句を言いたくなるぐらいの汚れ具合だ。
「阿蛇。目的のモノって分かるか?」
ここから探すのは一苦労だと言外に告げると、
《燃やした方が早い》
「………それは同感だけど。今回はあえて証拠を残して捕らえてもらった方がいいんじゃない。紅諒の上司が動いてくれるし」
《理解不能。上司がきちんと動いてもその命令が末端まで浸透しているか分からない》
流石阿蛇。賢いな。
「それはそれ。俺としては完全に消し去りたいところだけど、………前回消し去ったはずなのにまだ残っていた。近くに居る時なら対処できるけど、お仕事で遠くに居る時は飛空を守れない。それなら、完全に消し去ろうとせず、公然の秘密にして隠密に飛空を含めた被害者を守ってもらった方がいい」
その方が賢いやり方だ。
《………理解不能》
「そうだよな。……難しいんだよ色々と」
しがらみが多くて、などと言って仕方ないと一枚ずつ調べようとしたら、
「………目的は同じだったみたいだな」
後ろから声。
「あらあら…さっきのスカウトしてくれたお兄さんじゃないですか」
阿蛇の正体を見抜いて、こちらの精神状態を気付いてスカウトしてくれた魔人。
その魔人の背後には女性と男性。
もしこの場に紅諒達の誰かが居たらその二人に対して攻撃の構えを取っただろう。………街中で先頭をしていた桜見とその桜見を回収しに来た恵石がそこに居る。
本来なら警戒しなくてはいけない場面。だけど、香真の勘が”今は”警戒しなくてもいいと判断している。
それどころか………。
「――丁度いい」
にやり。
「目的は同じだろう。ちょっと協力してくれ」
「……………ほとんど初対面だろう」
「まあな。信用できそうだと判断したから言うけどな」
「……」
香真の言葉に青年は溜息一つ。
「桜見」
「玲純様!! この者の指示に従うんですか!?」
止めようとする女性――桜見に、
「若君の判断だ」
とさっさと動き出す男性――恵石。その様を見て、
「ふうん」
成程ね。
《主》
「気付いてるよ」
少し違うが倒神倒魔具の気配が感じ取れる。おそらくどちらかが持ち主だろうと当たりを付けた。
香真が使った他人の正体はまた次回




