勘違い
「誰が修留をどこぞの馬の骨にやるか」
「ツンはどこの置いてきたんでしょうね」
第52話 勘違い
今言われた事を思い出してみよう。
「えっと、兵器を創り出していると言いませんでしたか?」
戸惑う三人の代表として花蕾が訪ねる。
「何惚けているのですかっ!!」
槍を向けてくる女性が怒った様に怒鳴ってくるが、
「そんな面倒な事誰がするか」
「ですよね」
この人神翼人は修留しか興味ないだろうし、
「誤魔化しても分かってるんですよ!! 翼人を人工的に交配させて、安定させる兵器にする計画を知ってるんですからね!!」
「――ほお!!」
紅諒から冷たい声が零れてくる。
「げっ!!」
「あらっ!!」
何もないのに寒くなってきた気がするのは、その声があまりにも冷たいからだろうか。ってか、そちらを直視したくないので微妙に目を逸らす。
それは修留も同じだったのか若干顔色を悪くして、正視しない様にしている。
「………翼人を交配させているというわけか。俺が」
どどどどどどっ
表情は変わらない――まあ、元から眉間にしわを寄せているが――だが、はっきり怒りが伝わってくる。
「――俺が修留にそうするとでも」
しないですよね。絶対。
自分以外の男の手垢に染めようなんてしませんから絶対。
「えっ、えっ!?」
可哀想に、大変ですけど、この――めんどくさい――紅諒を怒らせたのですから、まあ自業自得という事で諦めてください。
合掌。
「ええぇぇぇぇぇぇぇ!!」
悲鳴を上げるが、もう遅い。
紅諒は壊れた銃以外にも複数銃を持っている。次から次と撃っていくのを女性は逃げている。もはや、玉砕覚悟(どやぁっ笑)と言っていたのが嘘みたいな状態だ。
「暇~」
いつの間にか翼を片付けていた修留が、屋根の上で座り込んでいる。
「暇なのが不満ですか?」
「だって…」
久しぶりに全力で戦えると思ったのにと些か戦闘狂に思える台詞を言っている修留に苦笑いを浮かべてしまう。
「それにしても……」
気になりますね。
「何が?」
「あの女性の行っている事ですよ。私達は勘違いで狙われたのならどこかでそれをしている人がいるって事ですし」
もしそうならこのまま遊んでいていいものですかね。
真犯人が逃げてしまいますよ。
にこやかに告げるのと、修留が何かに気付いたように動くのは同時だった。
「――部下が、失礼した」
銃を撃っていた紅諒の前に一人の男性が現れる。その男性が剣を向けようとするのを修留が腕を掴んで止めている。
互いに本気を出してない。
敵意は無く。ただ、視線を向けるためにあえてそうした男性を修留が警戒する必要性を感じなかったのだ。
「恵石!!」
女性が叫ぶ。
「桜見勝手に上司の命令を勘違いして飛び出すな。しかも玉砕覚悟とか……」
どうやら女性の名は桜見と言うらしい。
「かっ、勘違いだなんて…!?」
「うちには信頼できる手駒が少ないんだ。玉砕して勝手に減らすな」
冷たく言い捨てる恵石と呼ばれた男性。
・・
「これを回収させてもらう」
「――断る。と言ったら」
銃口を恵石に向けたまま告げると、
「そうだな」
一振りだった剣が、裂ける様に二振りに変化する。
「力づくで行かせてもらう」
左右で剣を持つ青年。
「………倒魔具。倒神具。………魔人が倒神具はともかく倒魔具を持つとはな」
「――本業は処刑人だからな」
成程な。面白がるように紅諒の腕が下りる。何かあっても修留が動くと判断したからの動き、
「感謝する。――桜見」
「はいっ!!」
「――礼として、この街に今翼人を人工的に創ろうとしている者が入り込んでいる。その者は翼人に近付ける実験の生き残り同士でまず交配させようとしている。………欲しい情報だろう」
「お前…」
どうしてそれをと言い掛けた紅諒に答えずに二人は姿を消す。
「ごめん…」
修留が腕を掴んでいたのに逃げられた。
「………いや、いい」
紅諒は首を振る。
「とりあえず。真実ならまたとない情報だ」
頭を切り替えるように、そう判断する紅諒。
「どうやら、あいつらは今は敵じゃないようだ」
なら、放っておく。
「………その情報の相手で八つ当たりすればいい」
その目は交配と言う言葉がまだ許せないんだなと下僕二人は何も言えなかった。
桜見と恵石はまた出します




