ヒトと魔人と…
希望を持つより諦めた方が楽な事もある
第3話 ヒトと魔人と…
魔人族の人狩り。
「ねえ、紅諒」
くいくいと袖を引っ張る修留が不思議そうに首を傾げ、
「ここって、人神の領土だよね?」
何で、魔人が来るの?
「……」
「人神様か…」
町の住民が魔人族をどうしようかと話していたが、その中の一人が反応する。
「そんなの本当に居るのかね」
信じてないというような独白。
「ねえねえ、悪い子は、黒い翼の翼人に酷い目に合わされるんでしょ。何で人狩りは黒い翼の翼人に酷い目に合わされても平気なの?」
小さい子供が母親に問いかけている。
「人神様も翼人もおとぎ話だな」
「……」
この世界には、三つの種族がある。
一番数が多い人。
人よりは少ないがそれでも多い魔人。
数はとても少ない人神。
人は、非力さゆえに人神を信仰して保護してもらっている。人神も人が信仰する事で力が増え、寿命が延びる。
それでも圧倒的に数が少ないので人神が居ると聞いていても見た事の無い者の方が多い。
「翼人も人神様もおとぎ話の中。実際に居るわけない!!」
女の子の恨みの籠もった声。
「友達もたくさん人狩りに攫われて居なくなったんだから!!」
自分を助けてくれたのは、そんなおとぎ話の存在じゃないと分かっているから。
「……本当に居るなら。友達も助けてよ……」
泣きそうな声。
「お姉さん。ごめんね。来るのが遅くて…」
修留がそっと涙を拭く。
「あっ、ごめんなさい。助けてもらったのにそれじゃ責めてるみたいだったね」
貴方みたいな年下の子に助けてもらったのに、
「人神様なんて居ないさ。俺らは、所詮魔人族に狩られるだけさ」
魔人を捕らえた事で当たりが酷くなるかもしれないと怯えているのかやけくそ気味に呟く声。
「紅諒」
花蕾が口を開く。
「急な呼び出しでしたが…」
「―-その話は後でする」
まずは宿だな。
「あの、それでしたら。うちに来てください。お礼も兼ねて、ただとはいきませんが、安くします」
女の子の言葉にどうするんだと三人の視線が紅諒に集中する。
「そうさせてもらう」
紅諒の言葉に、
「よっしゃ。休める!!」
「宿代は紅諒持ちですね」
すたすた歩いていく香真と花蕾。
「美味しいごはんあるかな」
ねっ、と話し掛けてくる修留の動きに合わせて修留の一つにまとめた髪がぴょこぴょこ揺れた。
宿でのお話し