祈りの歌
花蕾編終了
第32話 祈りの歌
「人質は居なくなりましたね」
いや、あれにとっては餌だろうが、
「同じモノ」
それはどんな思いで呼ぶのだろうか。仲間にしたいからか。それとも、
「違いますよ」
甘い甘い血の臭い。
食欲を掻き立てる誘惑の味。
それらで常に理性を飛ばしそうになりながらも、耐えてそれに近付く。
腕を伸ばせば触れられる距離になり、こちらが敵としているのを判断したのかそれが攻撃しようと腕を大きく振り上げた。
「私は欲望のまま生きられないので」
宣言と同時に腕を上げたのを避けて、無防備になった所に振り落とす爪。
流れるのはそれの血。
「お休みなさい。……もう食べなくていいのですよ」
その声に、
モウイイノ……?
モウオシマイ……?
子供のような声が聞こえたのは気のせいだろうか。
「ええ。もう終わりですよ」
しっかり告げると、安堵の表情を浮かべた気がするのは気のせいだろうか。
錯覚かもしれない。でも……。
響く神歌。
この地で流れた血を。魂を救う浄化の歌。
「おいしい所を持っていきますね」
そう言いつつも洗い清められていく事に安堵する。
「……良かったのかよ?」
香真の声に少しだけ答えに迷い、
「良かったのですよ」
あの子供の声が気のせいでは無かったのなら。
「……そうか」
神歌はまだ響く。
壊れた屋根から光が差し込んできて、歌う紅諒を照らしていく。それを幸せそうに見る修留と人神の奇跡を目の当たりして感動している少年。
それはさながら宗教画の様だった。
♦
「で、証拠がないので人神を裁けないのですか」
車の中。
「ああ。この日記には上司の名は書かれてない。もし書かれても証拠としては役に立たないだろう。勝手にした事で自分は関与してない。……トカゲの尻尾切りだ」
日記に目を通して告げる後部座席の紅諒に、
「そういうものですね」
ままならないと呟く助手席の花蕾。
「…なあ」
ハンドルを握っている香真は青筋を立てながら、
「何、しれっと話をしてるんだ!!」
と文句を言っている。
「何を言っている?」
「狭い車内で喚かないでください」
二人の突っ込みに俺が間違ってるのか言いたくなるが、
「なら、さっさとその膝の上を何とかしろ!!」
膝の上。紅諒の膝に乗せられているのはいろいろあって気を失っている修留。
「霊力を使い過ぎたから仕方ないだろう」
話は車に乗り込んですぐの事だった。
「下僕その1」
「うんっ?」
どうしたのと尋ねようとした修留を膝に乗せ、濃厚なキスを仕出かして、ってか、舌入れましたよね。
「うっ…」
何か修留の息遣いが荒くなってきてますよ。
エロいオーラを出してずっとキスシーンをして、さすがの修留も気を失い、その修留を膝に乗せて現在に至る。
「こっちは運転中だったんだぞ。自重しやがれ!!」
「騒ぐな。修留が起きる」
その修留の気を失わせたのは誰だよ。と文句を言いたかったが、さすがにそれは修留の為に耐え、
「ところで…」
「ああ」
そんなに長く持たない封印だった。だけど、タイミングが良すぎた。
もしかしたら、誰かが、故意に。
「それだったら、開けた奴が食われてるはずだ。そんな自殺行為をするわけないだろう」
と言いつつも歯切れが悪い。
「だよな……」
すっきりしない。
「私が近くに居たので刺激を与えた…そうならないための結界でしたから」
気になる事が多い。でも、真相を掴むのも難しいだろう。
「さて、進みますか」
「ああ。…下僕その2」
「だから下僕じゃ…」
「お前の街に行くぞ。………薬の補充をしないとな」
その言葉に香真の反論が消える。
「ああ……助かる」
まだ気を失っている修留が起きていたら訪ねただろうが、起きてこないので三人はそれだけで話を終えた。
少し離れたとある所。
「あれが…、人神」
車を見る一人の女性。その背には純白の翼。
「……あの方の敵」
手には鞭。強い決意を宿した眼差しで車を―ー紅諒達を睨んでいた。
RPGで行くと4人は、
剣士 香真
魔法使い 花蕾
拳闘士 修留
僧侶 紅諒
になるけどきちんと当て嵌まってない。




