抱える病
安全第一
第17話 抱える病
運転手が替わって運転が穏やかになり、
「運転は香真にお願いした方がいいね」
と後ろの席で修留が告げると運転席の後ろで不機嫌そうにそっぽむく紅諒。
「……でも、道は同じところ回ってるみたい」
不思議そうに首を傾げ、
「紅り…」
「結界だな。徒歩の方が良いみたいだ」
そう判断して降りる。
「そうですが…。車はどうすれば……」
花蕾に答える前に車はポンと音を立てて、水晶の中に入っていく。
「霊具はこうやって回収できる」
持ち運び便利だ。
「えっと…、そんな事出来ましたっけ?」
質量保存の法則とか…。
「僕の霊力高いから、物質に常識外れな変化もさせれるんだ」
「修留の霊力ないと出来ないぞ」
修留と紅諒。二人が完結に説明する。
「えっと、あの詳しい説明を」
困ったように尋ねると、
「理解力ないな」
「お前らが説明力無いだけだろう!!」
香真が叫ぶ。
「………」
紅諒は面倒だというように、修留はどう言えばいいのか考えるように。
「う~ん。僕翼人でね」
………修留曰く、翼人は内面の霊力に肉体が耐えられないので翼と言う形で常に力を放出している。だけど、それをすると肉体が翼がある所から壊れて死を迎える。
「それを防ぐのには、常に力を使い続ける事で、翼が黒……闇に染まった者は、破壊衝動でその死を防いでるの」
修留の翼は闇色。つまり破壊衝動を常に持っている。
「でも、桁違いの力を使用する霊具を使えば肉体を壊さずに、破壊衝動を抑えられる」
「これは、その実験だ。巨大化させるのも、動かすのも翼人の霊力次第。ただ、修留自身の負担も大きいのも事実で俺の霊力も使用してる」
これが実用化できるようになるのも短命な翼人。狂いやすい翼人を減らせれる。
狂いやすい翼人。か…。
『どれくらい……をすればいいかな?』
幻聴が聞こえる。
『……をした果てはどうなるんだろうな』
面白そうに観察する視線を感じる。
『壊れて狂うか。それとも、快楽に目覚めるのか』
楽しみだと嘲笑する声。忘れたいのに未だに呪いのようにこびり付く。
「………い? 花蕾?」
不思議そうに修留がこちらを呼ぶ。
「あっ……」
人一人通れるぐらいの山道。どうやら移動しながら意識が飛んでいたみたいだ。
「汗もびっしりだよ」
大丈夫と心配している修留に大丈夫ですと告げると、
「ああ、こいつは体力ないからな。疲れが来たんだろう」
香真が花蕾を支えるように腕を回し、
「持病持ちだからな」
と紅諒がネタをばらすように告げる。
「それなのに旅していいの? 無理してない?」
案じる修留にいい子だなと――実際年齢は上とは聞いていたが――そう思ってしまう。
「すみません。久しぶりに動いたので疲れてだけです。紅諒ダメですよ。持病も大騒ぎする事ではないのですから」
不安にさせては。
にこりと笑うと修留を近くに寄せて、
「いい子ですね。ほんと紅諒には勿体無い…」
がばっ
紅諒が慌てて修留を花蕾から引き離す。
ふふっ、冗談ですよ。
と笑うが、香真はそっと修留に気付かれないように、
「…発作か?」
「いえ…、修留の真っ直ぐさに充てられました」
と花蕾はやや苦しげに笑ったのだった。
実は花蕾は修留はいい子だと思ってるけど苦手意識もある