罪人(つみびと)の証
ネタバレに付き黙秘
第10話 罪人の証
「もう大丈夫ですよ」
にっこりと助け出した人々に告げて、
「ここは危険なので逃げてください」
と送り出す。
「ほとんど俺が助け出したんだけどな」
香真が文句を言うがいつも通りスルーする。
「さてと」
スルーかよと言う香真の声が聞こえた気がしたが、それもまたスルー。
「まだ大丈夫だな」
香真か花蕾にやられた奴が霊具を使用しようと霊具に触れるが、霊具は動かない。
「霊具を起動させるほど霊力もないだろう」
霊具の欠点。使用者の霊力を動力にするため霊力切れで動かなくなる。
霊力の高い人神や魔人は己の力を過信するから使いすぎて動かなくなるという時の対処も甘くなる。
「人製の霊具は燃費いいから長時間使用できる。人製なら逃げれたのにな」
そんな理由で紅諒の武器も人製である。
「ひいいいい!!」
僅かに動ける奴は逃げていく。
「――追いかければ捕らえられた人を助けられるぞ」
この町の警備だったかに声を掛ける。
「きょ…協力を感謝する」
ああ、額見てないな。
人神の証である華の印を見たらあんな態度を取らなくなる。
それでも魔人を倒したことで怯えている。
「修留はどこでしょう?」
花蕾は血の臭いに耐えながら修留を探す。
修留はすぐに見つかった。
「……まだ、手を抜いているな」
なら、いい。
「手を抜いてる…」
「そう見えねえけど」
修留の足元には地面にのめり込んでいる魔人。四肢を潰されている魔人。再生できないほど細切れにされた者が山のようになっている。
地獄絵図。
ただし、まだかろうじて生きている。
「数で襲い掛かれ!!」
そんな声と同時に同時に攻撃を仕掛ける。
「う~ん。流石にやりにくいな」
修留の呟きと同時に襲ってくる魔人達。
間に合わない。
花蕾がとっさに目をつぶる。香真も間に合わないと知りつつも助け出そうと走り出す。
紅諒は、
「流石に枷があったら動きにくかったか」
と呟く。
魔人達は勝利を確信していた。
動きを封じるのにその奇妙な服は掴み易い。
「はあ~。やっぱ軽いな」
空の上から修留が呟く。
だが、答える者はいない。
ずっ
修留の投げ捨てた服を掴んでいた魔人の腕が奇妙な方向に曲がり、折れる。
別の魔人は折れる事はなかったが、その服の重みで地面にのめり込む。
そう重いのだ。
「あいつの服は、特殊な金属で作られていてな。見た目が優雅に見えるがその動きで刃の様に敵を切り裂き、魔人すら回復させない怪我を負わす」
そして、
「重さは確か…50Kgと言ってたな」
自分の体重以上だと話をした。
それゆえ、あいつは。
「あの服である程度の力を封じられている」
「封じられて…。じゃあ、いつもあれを着て動いてるのかよ!!」
そんなの正気の沙汰じゃないぞ。
香真の叫び声に、
「お前。何をしたんだ。そんなガキの頃から罪人服を着せられるなんてな」
魔人の一人がおかしそうに地面に着地した修留に告げる。
「………」
その言葉は、修留の動きを一瞬だけ封じてしまう。
「話には聞いた事あったが、実際見るとは思わなかった。特殊な金属で加工された動きを封じる拘束衣。その首輪はある人間に絶対的に従わないといけない束縛の首輪。とてつもない罪人が裁かれる最大の罪の証だそうだな」
その言葉に香真も花蕾も修留の首元を確認する。
「……」
そこには肌にぴったりくっ付いている首輪の姿があった。
修留の体重+拘束衣を抱き上げる男紅諒