不信感
知らないヒトに付いて行くと思うんだろうか…
第100話 不信感
屋敷――大使館って言ったっけ?――を暇だから探検しようと思って歩いている所で、
「えっと、君は……」
話し掛けて来る人神。
「兄の部下の子だよね…。どうしたんだい?」
「………」
笑っているつもりなんだろうけど、目は笑ってない。
本当は話す気もないんだろうけど、目的の為に仕方なく話し掛けた。……そんな感じだ。
元々、紅諒の家族にはいい印象を抱いてない。
紅諒自身は気にしてないが――気にしていた次元はすでに超えてしまったとの事――最初に旅していた時はよく弟と母の夢で魘されていた。
父親は――本人は口にしないが――好きだったようで、紅諒の知識などは父から教わったと話してくれた――今の上司に会わせてくれたのも父親だったらしくその人がいなければ会う事も無かっただろうと思うと感謝してもいいぐらいだ。
実際。紅諒は優秀だった。
知識も身体能力も――今は最弱だが、他の者が規格外なだけ――高く、度胸もある。非常事態に対しても冷静さを失わない――非常事態以外は手が早いが――才能とそれに見合う努力もしていた。
ただし、そんな彼でも常に見下されていた。他でもない、人神の印が《一種》と言う最下層だったから。
弟は早く《梅》が――印が出たと聞いていたがその印が何かまでは知らなかったが――出たので、母は弟の方をひいきして、兄であった紅諒を蔑ろにしていた。
父親が居なければ死んでいただろう。そんな立ち位置だったと――紅諒本人ではなく第三者から悪意を持って聞かされた。
好印象を持てと言うのが無理な話だ。
「………」
修留は負の感情を抱きにくい。だが、いくら抱きにくくても抱かない訳ではない。
紅諒の事が大切であるからこそ修留は紅諒の『弟』に好印象を抱けない。
それに――。
(僕の事を利用出来る道具として見てる……)
長年。闇色の翼を持つ翼人として利用されていたのからこそ。修留はヒトを見る目は確かであった。
「君に兄の事を聞きたくて……ちょっと良いかな」
ますます印象が悪くなるな。何かをしているという前提で声を掛けて、こちらの返事を待たずに自分の要件を押し付ける――確認をしているように見せて命令形だ――明らかにこちらを格下扱いだ。
「する事があるんで断るけど」
言う事聞いてやるつもりはない。
「そうか…残念だな。……………………………………ただが人間のくせに」
前半はにこやか――ただし目は笑ってなかった――こちらに聞こえないと思っての後半のぼそっと呟いた独り言。
(翼人ですけどね)
内心そう答えて、さっさと去っていく。これ以上ここに居ると時間の無駄だ。
紅諒に報告しとかないといけないなと思って去ろうとしたが、
「…………………………なら仕方ない」
その声と同時に何か薬品の臭いを嗅がされて、動きを封じられた。
捕らわれの姫ポジション!!