似てない兄弟
紅諒「会いたくない奴に会った…」
第99話 似てない兄弟
「似てないね」
「ああ。似てない」
「どこで遺伝子を置いてきたんでしょうね」
ひそひそ
三人が話をする。
「聞こえてるぞ!!」
どこからともなく取り出したピコピコハンマーで三人を叩く。
四人が居るのは、とある建物の一室。
「ここって、魔人族の領域なのに立派な建物に住んでいるんだね」
「……あいつは外交官だったかな。魔人族の領域にある人神の領域――大使館と言うんだ」
つまり特例だと答えると、
「へぇ~。凄いんだ」
何が凄いか分かってないだろう。
「それにしても…似てないですよね」
またその話に戻るのか。
「だよね。――紅諒は常に眉間の皺が寄っているけど、綺麗な顔立ちなんだけど」
「弟は特徴のない顔だよな。兄弟と言っても未だに信用できないし」
「紅諒は《蓮華》なのに弟さんは《梅》ですしね」
三人三様な事を言ってくる。
「人神の印は血統じゃなくて、魂の格で浮かぶからな。魂の格がどれだけ高くてもそれに準ずる意志を持たないと印は出てこない」
実際あいつの方が出るの早かったし、俺は人神の中で遅い部類だったぞ。
そう説明する。
「外見は~?」
「あいつは、母に。俺は父に似てた。それだけの話だ」
そもそも、
「似てる似てないという話ならお前に言われたくないが」
「んっ?」
思わず修留を見る。
背中に翼があるという時点で親に似ていない。
「ああ。そうだね」
気が付かなかった。
「因みに母は《四葉》でだった」
「葉? 花じゃないのか?」
「花より弱いな。《一種》《双葉》《三つ葉》《四葉》そこから花になる。自分の子が《梅》だった事に母は狂喜乱舞していたからな」
この子は凄い。
自慢の子だ。
褒め称え、自慢していた母の顔を思い出せない。
自分より格が上の子供。それを誇らしげに見て、自分にもう一人子がいるのを忘れていた。
……《一種》の子はどんなに優秀でも《一種》というだけで恥だったのだろう。
「……ふうん」
相槌を打って、
「そんな性格だから《四葉》だったんじゃないの?」
「………珍しいな」
お前が毒を吐くなんて、
「だって!! ただが開花が遅れただけで、実の子供を蔑ろにするんだよ!!」
「………」
そう怒ってくる修留に。
「そんな親でも価値は下がらなかった。俺はそう評価されるんじゃないか」
そんな些細な事気にしてない。
だが、
「修留。香真。花蕾」
三人の名を呼び、
「弟を信じるな」
そう、兄とは呼んでいるが、あいつは、
「俺と言う存在を忌々しく思っている」
そう告げる。
あいつは……。
別の場所。
その人神は醜悪に顔を歪める。
「……これだな」
こっそりとある部屋を覗く霊具を使用してじっと様子を見ている。
「これが、あいつの弱点…」
映っているのは四人。そのうちの一人――修留を見て、
「これをあいつから奪ってやればいい」
奪われた時のあいつの反応を想像して、その人神は、昏く嗤った。
紅諒は、家族を正直どうとも思ってません。(でも、父親は嫌ってない)