いつかの話。それは誓い
第0話 いつかの話。それは誓い
そこは牢獄だった。
見た目は鮮やかな空間。
綺麗な屋敷。
でも、そこは、とあり人物の付けている首輪と常に連動して、その動きを制限する。
「紅諒」
その牢獄から出られるのは、そこの囚人にしか解決できない事件が起こったのみ――。
その時、必ず見張り番として付けられる存在が居たりする。
「…………」
見張り番になる者は将来が期待されているが、使い方を間違えると劇物になりかねない輩が選ばれる。
一種の昇格試験。
その囚人を使う方法を試されるのだ。
「良かったね」
囚人は優しく笑う。
久しぶりにいいヒトだった。
今はまだ新芽。未熟さが目立つが、きっと偉い人になる。
囚人はその様を見る事は出来ないが将来が楽しみだと思ったのは久しぶりだ。
「君は強くなるよ。……偉くなる」
彼の額には赤い点が一つ。彼の種族では、《種》と馬鹿にされる弱い者と決めつけられた証。
「僕が保証する。君と言う種が発芽して、花が咲く。その花はきっと綺麗に咲くんだろうね」
どんな花だろう。
次の任務が来るまでの暇つぶしに、想像していてもいいかもしれない。
………………次はどんなヒトになるか分からないけど。きっと、きっと。
「僕が一番楽しみに思える花になるんだろうね」
さてと、長話も御終いにしよう。
「じゃあね。――バイバイ」
もう、二度と会えないけど。
がしっ
掴まれる腕。
「紅諒?」
「…………てろ」
何を言ったのだろう?
「待っていろ。必ず、お前を自由にする。……都合のいい時の捨て駒にされ続けるお前の生き方を終わらせてやる!!」
その時、額の点が別の代物に………とある花の形に変化していた。
花の形で身分が変わる。最高位は《華王》と呼ばれる《牡丹》次位は《芍薬》。彼は……。
「――うん。分かった」
本当は信じてない。でも、信じてみたい。………罪人の自分でも夢を見ても許されるだろう。
「待ってる」
その言葉を最後に牢獄に戻る。
………期待しては心が壊れる。それなら夢は見ない方がいい。
でも、
でも。
「――待ってるよ。いつまでも」
この約束は大事な大事な宝物。
「…………」
牢獄に囚われたそれをいつまでも見つめていた。
「――力が居る」
強くなるのは必須。
知識を持てば選択肢が広がる。
発言力を手に入れるには出世しないと。
一人では出来る事は限られるから手足になる者も必要だ。
待ってる。
その言葉がある限り。止める事はしない。
「長く待たせないさ」
それは自分に課した宣言だった。
それから、約束の時は近付いていた。
主人公の若いころです