はなみつ
店を開けてしばらくすれば…
ほとんど誰もいなかった横丁は活気で溢れかえっていた。
掃除を任された俺は棚の埃を落としていた。
不思議なことにこの世界の埃は真っ白で、
まるで雲のようだった。
「すみませんシュウくん。少し商品を取りに行ってきますね。」
さっきまで帳簿の整理をしていた時雨さんは
そう言って地下へと降りていった。
地下には品物が保管されているため俺は入ることが出来ない。
少し気になるけれど、しかたない…
と、そのとき
「こんにちは。」
おっと、いけない。お客様だ。
「い、いらっしゃいませ!っ…」
そこにいたのは赤い着物を着た黒髪の綺麗な女の子だった。
漆黒の黒髪は艶やかで、漆黒の瞳は宝石のようだ。
「あら?時雨はお留守?」
時雨…と呼ぶことからして仲が良いのだろう。
っ…もしかして…
「人違いだったらすみません。もしかして…
花蜜さん。ですか…?」
「ええ!そうです!貴方は?」
良かった…
今朝時雨さんが言っていたからもしかしたらと思っていたが、あたりだったようだ。
「楠木秋です。」
「クスノキ?…」
何かを考えるような花蜜さんの反応は時雨さんと同じ反応で。
「あの…なにか?」
「いえ。素敵なお名前だと思いますわ。」
お気になさらず。というように微笑む花蜜さんは話を逸らすかのように時雨さんの行方を尋ねた。
楠木という名字がそんなに珍しいのだろうか…?
「時雨さんは今商品をとりに…あっ!戻って来ました。」
時雨さんは大きな筒を抱えていて。
「よう。時雨。」
ん?
「ああ。来てたのかい。…花蜜。」
花…蜜…って…え!?
慌てて振り向けば確かに声の持ち主は花蜜さんで…
「ああ。この前質に入れたやつを取りに来たんだ。」
んん?!
なんだか花蜜さんさっきと口調が…
「これだろう?はい。30鈴。」
「おう。」
あ、あれ?同一人物だよね?え?
全くついていけていない俺に気づいたのか時雨さんは花蜜さんを軽く睨みつけた。
「全く…貴女は…」
睨みつけられた花蜜さんは「しまった。」というような顔を浮かべていて。
「悪いな少年。職業柄…な。」
どうやら花蜜さんは元座敷童子で、今はあの世で案内役をしているという。
最初の口調は案内役の時用らしく、
素はこっちらしい。
「は、はあ…大変ですね…」
なんだか忙しそうだ。
「そうなんだよ!お前…いいやつだなあ!」
そう言って俺の背中を、バシバシ叩く花蜜さん。
少し痛い…
あと着物で足を開くのはどうかと…
「花蜜。足。」
あ、やっぱり…
「はいはい。」
なんというか…花蜜さんは見た目と行動が正反対な人だった。




