謎
「まだ朝も早いですし、散歩にでも行きましょうか。」
朝食の片付けを終えた俺に時雨さんはそう言った。
ちなみに毎回の食事の片付けは俺の担当だ。
時雨さんは自分がやると慌てていたが
これくらいはさせて欲しいと俺が頼んだところ申し訳なさそうに了承してくれた。
元々家事は良くするほうだったし、2人分の食器など手間では無い
「まだ少々暗いですが。」
時雨さんに連れられ外に出る。
外は少し靄がかっていて薄暗い。
昨夜自分が歩き回った場所とは思えないほど
に色鮮やかな横丁の姿。
昨日は暗くてよくわからなかったけれど。
「シュウくん?」
「俺…この場所知っている気がします。」
「それは…」
「なんでかはわからないですけど…」
そう、理由はわからない。
でも確かに俺はこの場所を知っている。
ただ知っているのだ。
「ふむ。なかなかに興味深い。」
そういう時雨さんはなんだか楽しそうで。
「失礼。私は昔から謎が大好きでして。」
何故?の理由を探すのが趣味だという。
確かにわからないものがわかった瞬間はなんとも言えない気持ちになる。
嬉しさだけじゃない。解けた達成感というか…わからないからの開放感というか…
とりあえずその瞬間の気分は最高だ。
「理由。きっとわかりますよ。」
「そうだといいんですが…。」
「答えのない謎はありませんから。」
答えのない謎はない…
ここにいればいつか思い出せるかもしれない。
それが…どんな理由でも。