雅
「どうかしたんですか!?」
突然大きな声をあげた影坂さん。
慌てて駆け寄れば目の前には崩れ落ちたと思われる本の海が広がっていた。
まさか…
「さ、朔夜くんか…た、助けてくれないか…」
っ!?
本の海から男性の声がした。
「い、急いで助けましょう!」
猛スピードで本をどかしていく。
そして…
「はぁ…し、死ぬかと思ったよ。」
本の山から現れたのは着物の上から白衣を着た黒髪の男性だった。
「全く、本を積みすぎだっていつも言っていたのに…」
はぁ。
と影坂さんは大きなため息をついた。
二人の会話を聞く限り二人は仲がいいみたいだ。
「ところで…お兄さんに助けられたのは二回目だね。」
あ、やっぱり。
雰囲気が違ったからか、少し不安だった。
でも…声が。
あの人と同じだったから…
「あの時も今回も、ありがとう。助かったよ。」
あ、なんか…笑顔が影坂さんに似ている気がする。
「はぁ…お前のせいで秋くんはいろいろ大変なん…」
「おっと、コーヒーが出来たかな?砂糖とミルクは入れるかい?」
「逃げるなやー!あ、わいはミルクとお砂糖たっぷりやで!」
コーヒー丸底フラスコで作るのか…
「少年は?」
「秋くん。」
「悪いね。秋くんは?」
「あ、大福さんと同じで。」
実は甘党だったりする。
「いただきます。」
コーヒーは、苦くなくてまろやかですごい美味しかった。
「えー改めて、俺は影坂雅。ここの科学者をしています!よろしく!」
「楠木秋です。よろしくお願いします。…影坂って…」
「…私の弟だよ。」
なんだか嫌そうな影坂さん。
ど、どうりで笑顔がそっくりな訳だ。
「朔夜くんは硬すぎるからね。…気をつけて。」
クスッと笑いながら言う雅さん。
「だ、大丈夫ですよ。優しくしてもらっていますし…」
「優しいなー!秋くん!」
バシバシ叩かれちょっと痛い。
雅さんはなんだか大福さんに似ている気がした。