蛍
入口は普通に自動ドアだった。
「ここは同じなんですね。」
「うちは下界に行くことも多いからね。」
「最先端なんやで!」
大福さんはいつのまにか影坂さんの頭の上にいた。
「お帰りなさいませ。局長。」
「お疲れ様です!局長。」
笑顔ですれ違う人々に笑顔で答える影坂さんは本当に好かれているのだと思う。
「蛍。彼は今いるかい?」
受付の女性は蛍さんと言うらしい。
彼…
「はい。多分今の時間は、研究室にいらっしゃるかと。可愛らしいお客様ですね。」
「そうだね。ありがとう蛍。行こうか秋くん。」
去り際蛍さんは手を振ってくれた。
蛍さんに手を振り返し、影坂さんについて行った。
「エレベーターもあるんですね。」
広いフロアにはいくつものエレベーターが壁についていた。
「うちの局はビルだからね。階段もあるけどかなり…ね。」
たしかにこんな高いビルを階段で登るのは大変そうだ。
エレベーターに乗り込むと影坂さんは24階のボタンを押した。
エレベーターは俺のいた世界と変わらなかった。
大福さんのいう最先端というやつだ。
「ついたよ。」
「なんか…すごいですね。」
エレベーターを降りればそこは少し薄暗い一つの部屋だった。
無造作に積まれた本が今にも崩れそうだ。
棚にはフラスコみたいなのがたくさん置いてある。
「雅。いないのか?」
影坂さんは奥へ奥へと進んでいく。
「みや…雅!?」