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不思議の国の星が煌めくその夜に  作者: 黒猫
♥♢不思議の国のアリス編 prologue♦♧
2/37

000頁:学園からの手紙



ひらりと舞う桜は愛を伝えるために四季を回す。

ぽつりぽつりと雨音、聞こえてる?優しさにまみれた純情。

舞う紅葉の葉は、涙の証。

消えてゆく。真っ白に染め上げる無情な涙。


君は今、どこにいる?


***



開いてる窓から見える青い空。飛べたらいいなぁ…

そう思っていると、風が入って来て、カーテンと私の髪を揺らす。


パタン!


 本を思いっ切り閉じる。


「はあ…」


 溜め息をつく。何故か酸素が足りてないように思える。きっと気のせい。けれども、あれは気のせいな気がしない。…後ろにある扉から紫のシッポと耳がはみ出してる。え?なにあれバカなの?と言いたくなった。いや、バカなんだろう。


「…猫くん、隠れてないで出てきたらどうです?」

「あれま! ばれちゃったか」


 ピョコンと、笑う猫様の登場ですね。紫のシッポが景気よく左右に揺れる


「あの…シッポが丸見えだったんです。」

「ずっと後ろ向いてたじゃないか」

「チラリと見えてるんですよ」

「あ、ズルじゃないか!?」

「ズルって…何もしてないのにどうしてです?」

「いーや! 俺の中の何かが負けた!」

「いや知らないですよ」

 

なんて自己中心的な…いや、猫だからか…?おぉ! やはり猫族…なのだね?


「ねぇ、話変わるけどさ、本当に、行かないの?」

「……?」

「えっ…?」

「…なんのことです?」

「ま~たとぼけちゃってっ」

「…?」

「…もうっ白々しいぞっ!」

「な・ん・の・こ・と・で・す・か?十秒以内に答えなさいさもなくば平手打ちするです。」


 少し苛ついて、口調が少し早くなる。


「き、聞いてないの!?」

「聞くも何も私ヒキコウモリだしー。はい5秒切ったですー」


一体この猫は何を伝えようとしてるんでしょうね。

 彼の言っていることが理解できなく、少しだけ混乱してしまう。


「あっ…そうだった。えっと、見てないの?」

「…?」

「て・が・み!!!」

「…?」

「学園からの!!」

「えーっと……しばらく見てないです。あ、じゃあみるです」

「今からかい!?」

「ん…」


 そんなやり取りを終え、外に出る。

えーと、あ、あったあったー

 パカ、と開ける。


―――――途端


ドサァーー!!


「………ありゃ」

「どんだけたまってたんだよ!!??」


 そうちいち叫ばなくても…そう思ったが、言わないことにする。このことは心の中に…。


「…落しちゃいましたですね」

「落した、じゃなくて、落ちた、だ。間違えてる。」

「どうでもいいです。あと、落したのは私じゃなくて、郵便受けです。」

「あのな…」


 その中から一枚だけ手に取って、中身拝。


「えー…なになに…?

『やあやあ、拝啓チャールズ・ラトウィッジ・ドッドソン君へ

まず、一言だけ、言わせていただきます。

いい加減、学園にいけぇぇええ!!テメーは天才だぞ!!』分かります。『そんなテメーがよ、学園に行かず、森の中で研究ばっかやってて!宝の持ち腐れだ!!!』りじちょー字、間違えてる…」

「え?マジで?」

「まじです。ほらここ…」


 スペルが間違えてる文字を指をさす。


「うわぁ…まじかよ…」

「…悪口に等しいのでやめましょうです」

「そうだな」


若干本気でドン引きですがねっ


「大体、宝の持ち腐れじゃないのですがっ…!」


酷いなぁ…殺したいのはやまやまだが、殺さない。人をころしたらそれは罪だ。…狂人が言う言葉でもないですがね。


「ああ、知っている奴は宝の持ち腐れなんて言わねぇから。含めっ面すんな」

「うん。『だから、来い!!うちの学園に!!』だとかです」

「うん。迫真の声だけ演技だった。で、行くの?」

「行きませんです」


実に即答です。自分で言うのも有れですがね。うん。行きたくないし。私はここでのんびり研究やらしてますよーだっ。


「何故に?!」

「…まあ、一応私、頭の可笑しい研究者ですよ?頭の可笑しい研究者。」

「あ」

「だから、材料の糧となる人間さん、または怪異をね、えっちらおっちら殺しながら運ぶ、とかさ、ホラーじゃないですか?見た学生が居たらトラウマもんです」

「そっちかい!」

「え?」

「え?じゃない!! 問題はそこじゃない!!」


 じゃあどこなのさ、と思ったことを口に出すとため息まじりに言った。


「はぁ…問題は、見られたらって事だ!」

「…?」

「見られたらマズいだろ!? 通報されるぞ!?」

「…殺しちゃえば問題なっしんぐですっ☆」


 ぐっ、と拳を作って親指を上げる。

うん、問題は無いね。…ないよね?ね?


「おい!? 教師とかは!?」

「脅せば…?」

「あのな…! ……?おい、ラトまだ続きがある「っち」…ぞ」


…っく…思わず出ちゃった。あーあー…これは無理矢理にでも行く羽目になるな。間違いなく、絶対、行く羽目になる。


「あっ…ふーん…決定だな。行くぞ。準備をしてこい。」

「…材料は?」

「えー…なになにぃー『追伸:材料ならたっぷりあるぞ☆』だと」

「…わ、分かった。うん。行くです。」


 仕方なく頷くと猫くんはガッツポーズをとった。

そこに、今は聞きたくない奴の声が入ってきた。


「ふっふっふー!!来ましたよ!今日こそは倒しま、ぶへぶ!!??」


 全力でけったら気絶したウサギさん。

いやぁ…この兎さん好きなんだけど…ね?…タイミングが悪かったのです。


「あらぁ…ごめんなさい。今ちょっと気分が悪いんですよ」

「気分じゃなくて、機嫌、だ。」

「うんそれ。あ、蝶です! 待て~」


 いい感じの材料の糧になりそうかも…しかも綺麗な蝶だ。灰色と青の蝶。珍しい、綺麗、可愛の三拍子だ。すごい。


「材料にしようなんて考えてないよな?」


 猫くんのその言葉にピタリと動きが止まる。


「…ダメ?」

「うぐっ……可哀想だろー止めてあげろよ」


 しばらく考え込む…確かに、可哀想だけど…いや別に、殺そうとはしてない…少しだけ研究をね…でも…むむむ…


「…仕方ないなぁ、止めときますです。」

「あぁ、止めてくれてよかったよ」

「そうですか。……うん?」

「どうした?」


 よかった?なんで、ここでよかった、と言う単語が出て来るのだろうか?


そこで私は、とっさに浮かんだ答えが出てきた。


選択肢:

1:問い詰める

2:何でもないと誤魔化して、深く考える。

3:とりあえず殴る。



→3:とりあえず殴る。


3だな。うん。 気になった。だが、多分聞いてもこいつはきっと誤魔化すだろう。そう思うと無性に腹が立った。


「とぉっ」


ごっ

どすっ


「…?」


横を見つつも猫くんの腹に右ストレートをお見舞いする。


「ぐばべぼっ!!??」

「あ、ごめ。つい…」


 行動が表に出てしまった。猫くんの頭を撫でつつ音がした方を見る。


「っ…ナイフ…!」


ナデナデ


「いってぇぇぇ……!」


ナデナデ


「…何故…狙われる理由なんて…」


ナデナデ


「………………ありすぎて良く分からないです…」


ナデナデ


「おい!ラト!」


ナデナデ


「なに?」


ナデナデ


「あっとだな…嬉しいがなでるの止めてくれ。」

「分かったです」

「………なんで撫でたんだ…」

「猫くん、あれ。」


 ちょいちょいと服の裾を引っ張って、ナイフを指さす。


「……。学園に行く準備をして来い」


 朱い朱い朱い朱い朱い朱い朱い朱い朱い――――…血。

 白い白い白い白い白い白い白い純白の雪が、

 朱い朱い朱い朱い朱い―――――――――――…血に染まる。


「っ!! …ったいなぁ…」


 頭を押さえる。

すこし、気持ち悪い………雪なんて…知らない…赤い血なんて…望んでいない…


「っ…つぅ…」


「ラト?大丈夫か?」

「だじょうぶです。じゅんび、して来る。ガクエンのてつづき、たのむのです」


 うまく舌が回らない。

と言うか、今、思い出しちゃいけない類を思い出した気がしますですよ。


「無理するなよ」

「ん…無理しないです」

「どーだか」


 それだけ言って私は自室に戻った。


 ―――――――――――


「んふっ…」


 ごほっと咳を止めようとしたら、なんか変態チックになってしまった。うぅ…

えっとー…これは持っていく持っていかない…


「ん…」


 旅行用鞄に必要な物だけぽいぽい入れて閉じた。


「っぷ…あはははっ! ら、ラト、超適当、だな! ははは!!! あひゃひゃひゃひーお腹いてー!」


 笑うチェシャ猫のご登場ですね。分かります。しかしだ


「失礼な奴には特大ストレートパンチをかますです」

「わ、悪い悪い…ぷふっ」

「…ふぅ…子供みたいですね」


何がおもしろいのか…。猫くんは面白く、不思議だな。


「わ、悪かったって…」

「悪いですむなら、サツはいらねぇ…」

「渋いっ!?」

「それ以上無駄口叩くと、催眠薬をのませるですよ。」

「すいません!!」

「別に…」

「はぁ…催眠薬、前に呑まされた時はずっと覚めないかと思った…」

「まぁ、あれは…私も怖かったです。それに、ちょこっと間違えて三個入れちゃったのですし。」


 ふっ…っと思い出に浸かってる。あの時は物凄い焦っていたですね…。


「……それで、学園の手続きやってくれた?」

「うん。やったぞ。」

「ん…ありがと。」


優しいな。絶対モテるぞ。こいつ。なんちゃって。


「ん…なんか、照れるな…」

「…そう?」


 照れる、か……ふぅむ…何だろう?


「…猫くん」

「ん?なんだ?」

「あのね、私を照れさして?」

「は!?」

「あ、照れさしてくれ、いや、照れさして下さい?」

「えぇ!? えっと…好きだ!」

「うん。私も好きですよ?」

「えっ…!? いや、俺と付き合って下さい!」

「何に付き合えばいいのです?」

「………」


 ヒクッと猫くんの口元が引きつった。どうしたんだろう。心配だ。


「?」

「恋愛感情で好きです! 恋愛関係として付き合って下さい!!」

「ご遠慮するです。」

「…ダメだ…多分絶対お前を照れさせる事が出来る奴なんて…早々いない」

「うーん?照れる…不思議です」

「いや俺としては逆にアンタが不思議だわ」

「不思議じゃ有りませんよ。多分。」

「へーそうかい。じゃなんでこの前来た時さ」

「うん」


 どんと来い、と構えてたら


「血のこびりついたカマを持って、日向ぼっこしてたのか。」

「ぐっ…そ、それは…」


 あれも結構ホラーだったなー…と、遠い目をしている猫くん。

トラブルメイカーって言うのかな?

いや、どちらかと言うと不幸体質、なのか…?あ、返事…


「…ただ、『復讐だぁ、俺らの親玉かえせぇ』的に怪異に復讐されて来たので殺しまくった挙句眠くなって寝たです。」

「バカだ!?」

「…むぅ」

「新たに敵がきたらどうするよ!!?」

「ザクリと」

「寝ながら!!?」

「うん」

「バカだ!?」

「馬鹿じゃ有りません」

「いいや、正真正銘のバカだ!!」


いらぁっ


「はーいっバカですっ」

「え」

「でもね、バカと言った方がもっとバカなんですよ」

「ごめんなさい。」


 ratoulitti、WIN!!そんな音が聞こえたのは気のせいだろう。


「時に猫くん」

「ん?どした?」

「喉が、痛いです…」

「あーアンタ俺が、と言うか人がいる時が居る時以外全く喋らないもんな…」


キュッキュイキュキュ


『君は喋りすぎと思いますけどね』


 スケッチブックに書いて、見せる。


「スケッチブックって…。喋りすぎかな…?」

『分かりませんが、私にとっては十分喋ってると思います』

「早っ!早すぎだろ…。なんか字がきれいだし…」

『達筆…?』

「そうだ。あ、水でも持って来ようか?」

『ううん。自分で取りに行きますよ。』


 私は立ち、台所まで行く。


―――――――――


ゴクゴク


「はぁー…キンキンに冷えてるぜーです」

「ん、んまいな」

「分かります?」

「分かりますね。奥さん奥さん」

「私そんな歳じゃないのですが……で、何ですか?」

「学園に行くお気持ちは!?」


 マイクを持つ仕草で私の口の前で止まる。

あ、独占インタビューって奴の真似事なのかな?


「鬱?」

「即答っ!? なんで?」

「…引きこもり」

「…引きこもりって…まぁいいか。楽しみじゃないの?」

「うーん…どんな素材が有るかは楽しみですけど」

「じゃあ素材目当てで行くとして」

「ニャイス」


あ、咬んだ…


「……ないすおぶぐっど!」

「やべっ…可愛い…」


 ふるふる震えながら手の甲で口元を隠すように押さえている猫くん。


「…あ、いらぁっってきましたです。」

「え!? ちょっ! 怒んないで!?」

「…許しませんです」

「ちょっ! まっ! その顔まじで止めてっ!!」


そうして猫くんが逃げて私は追うことをせずにそのまま、晩御飯として、カロリーメィツトを食べて、自室のベットに戻って、すやすや景気良く寝たのでした。


めっでたしめでたし☆




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