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6話 ネル12歳の日常と本当の精霊さん

 精霊魔法とは精霊と魂の契約を行う事によって、使う事の出来る魔法の力である。約5,000人に一人が精霊と契約できる能力がある! とされているが、能力保持者の全てが術士ではない。

 能力保持者よりも精霊の数が少ないからである。

 能力保持者100人に対して精霊の数は10程度と言われている。


 次に能力保持者と精霊が必ず契約出来る訳ではない。

 一説には、相性の問題、また他説には精霊と能力保持者の力量が釣り合っていない為など幾つか言われている。


 次に精霊は何処に現れるのか、未だにはっきりとしていない。森や川や木陰など様々報告されている。時には術士の部屋に突然現れた事もあるらしい。ただ、何処に精霊が現れようが、能力保持者にしか見ることは出来ない。


 精霊との契約は双方の合意とされている。作者である私の場合は精霊が大きく光だし、それを私が受け入れ契約に至った。


 精霊と契約を行う事が出来た者は精霊術士と呼ばれ、魔法を使う事が出来るが、使える魔法はたった一つである。


 火の魔法を使える者は水や風など、他の魔法は使用出来ない。

 魔法の種類は、一般的な火、水、風、土から身体能力増加、空中浮遊など戦闘に使える物から、何処にでも色を塗る事が出来る着色魔法まで様々確認されている。

 魔法は訓練や経験、工夫により、出力や威力に差がある、また術士本人の資質が大きく影響される。

 同じ火の術士が同じ師に、同じ訓練を同じ時間だけ指導され、同じ魔法を使った所、威力に倍近い差が出たと報告がある。

 だが、魔法は精神力を使用して発動するので、強い魔法ほど精神が早く枯渇してしまう。


 最後に術士は、生涯に3回、精霊と契約出来る。

 4回目でその術士は必ず死亡する。理由として、一番有力な仮説だが、魂の契約故に、魂が食いつくされる為だと考えられている。

 そこで、火の精霊術士が2回目の契約を行った場合どうなるか。その時は、違う魔法に変わる様である。


 新たな魔法を習得しても、火の魔法は使えなくなってしまう。

 新たな魔法は弱いままなので、魔法を一から修練しなくてはいけなくなる。

 そういう理由で、一般的には、自分に有利な魔法を習得した時点で、新たな契約を行う者は少ない。


「ふぅ~勉強終わり!」


 ネルはそう言って、本を畳んで本棚へもどす。本棚には本が隙間無く並べられている、全てシャインが買い揃えた物だ。


 ネルは今、12歳でシャインとの出会いから約5年経っている。


 この世界も地球と同じで1年365日、1日24時間であり、町に鐘の音色を響かせて皆に時間を知らせている。


 今の彼の1日のスケジュールを見てみると。朝食後、基地へ向かいアスレチックコースを周り、その後シャインから剣術の指導を受ける。昼食後、実践的な訓練を行い、シャインから学問を教わる、そして夕方前には帰宅する。


 実にハードである。

 同年代の子供は、友達と遊ぶ事に夢中である年代だ。


 一般の子供であれば、10才から5年間は学校へ行くのだか、ネルが行きたくないと懇願し、父は猛烈に反対していた。ネルが5年生の問題を全て正解して見せた結果。父は最後まで社交性を養う為だとか色々言っていたが許してくれた。


 ネルは両親に心配を掛けない様に、早寝早起きを心がけ、たまにネル草やノウサを持ち帰り母に渡していった


「ハッ!」


 小さい息継ぎを合図に、ネルがシャインへ向け走り出す。シャインへ近づいたネルは上段から斬りかかった、だが半身をズラされてかわされてしまう。


 その後、ネルの胸板辺りへ水平に暫撃が襲う、とっさに木刀を垂直に構えそれを受け止めるが体ごと1mほど弾き飛ばされる。飛ばされながらも空中で体制を整え着地と同時にシャインへ再度切りかかる。


 今度はシャインが木刀で受け止めた、それを機と見たネルが初撃の速度を利用し、角度や狙いを変え、三連撃を放つ。

 だが、そのどれもシャインには届かず上段からの反撃が迫る、それを木刀で受け、斜めにずらし反撃を地面へ逃がしていく。

 木刀が地面に突き刺さるのを横目で見ながら、ネルはシャインの首へ向けて斬りかかった。防ぎようのないタイミングであった筈だが、手応えは伝わって来なかった。


 目の前には、木刀を手放したシャインがしゃかんで一撃をかわし、そのまま体を回転させネルの顔面へ回し蹴りを繰り出していた。

 どうしようもなく、歯を食い縛り耐えよと身構えたが、衝撃は来ることは無かった。

 顔に当たる寸前で蹴りは止まっていた


「ネルさん! 大分、上達しましたね」


「シャインさん、ありがとう。でもまだまだエル兄さんには勝てませんよ」


「では、今日はこの位にしましょう」


 二人は身体の汚れを手で払い、いつもと同じように基地へと帰った普通ならこれから勉強に入るのだか……


「シャインさん、今日の夜に町でお祭りがあります。良かったら一緒に見に行きませんか?」


「えっ?」


「私が行っても良いんですか?」


「僕一人で見るより、シャインさんと見る方が楽しいし」


 そう言って、笑顔を向けた。


「わっ! 解りました。私も行きます。ただ、色々準備もありますので、今日の勉強はお休みです」


「ネルさん、祭りはいつ始まりますか?」


「たしか7の鐘が鳴ってからです」


「じゃあその時間にここへ迎えに行きます」


 そう言うと、ネルは帰宅して行った。ネルを見送った後、シャインは金貨を数枚握りしめ、町へ駆け出した。


「母さん、今帰りました!」


「あら、ネル今日は何時もより早いわね?」


「はい、今日はお祭りだから、早く帰ってきました!夜に見に行ってもいいですか?」


「遅くならないなら、いいわよ!それで一人で行くの?」


「……いえ ……友達です」


「あら、ネルにお祭りに行く友達が居るなんて、お母さん知らなかったわ」


「友達って男の子?」


「いえ、女性です……」


 ネルは外堀を埋めるように、聞いてくる母の勢いに逃げ腰になっていた。


「やだ、まぁ! 今度家へその子連れてきなさい!」


「すぐは難しいけど、機会があればつれてきます……」


 そして逃げるように、ネルは部屋へ飛び込んだ。


 7つの鐘が鳴る頃、ネルは基地の前に着いていた、夜の森は普通なら前が見えない位に暗いのだか、ネルは夜目がきく上に今日は15日周期で回ってくる星の日で星がネオンの様に明るく輝き、森を照らしていた。


「シャインさんいますか?」


 ネルは真っ暗な洞窟へ向かって声をかけた。


「います。います。すぐいきます」


 シャインは焦った声で返した。

 その後、洞窟から出てきたシャインを見たネルは言葉を失った。

 シャインは白のワンピースを着こんでいた、星の光に照らされて、その姿は何処かのお姫様の様であった。


「おかしく……無いですか?」シャインは怯えた様に尋ねた。


「凄く似合っています。お姫様見たいです」


 ネルはシャインの目は見ずに、下を向き恥ずかしそうに、素直な気持ちを返した。


「ありがとごさいます」


 シャインが嬉しそうに言った。


「じゃあシャインさん、行きましょう」


「はい!」


 二人は町へと歩いて行った。

 シャインさんと歩いている所を見られたら問題になるかも知れないそう思ったネルは、人通りが少ない、一番外回りの道を歩いていく。


 ネルの予想通り、町の人は祭りで中心部の方へ集まっている為かほとんど見掛ける事はなかった。


「今日は豊作を祈る祭りなんです。町の中心を流れる川に自分達が作る穀物の種を手の平程度の船に載せて、豊作を祈りながら流します。船の先には蝋燭で火が灯してあって、凄く綺麗ですよ」


 ネルはそう言って人気の無い川辺に腰を落として座った。そしてその隣にシャインも座った。

 ネルはシャインを見て初めて出会った時の事を思い出していた。


「あれから、5年経ちましたね」


「はい、そうですね」


 ネルの問いにシャインが答える。


「僕には余りにも時間が経つのが早くて、数週間しかたっていない気がします」


「ネルさんがそれだけ頑張ったと言う証ですね」


「僕は5年経った今でも、シャインのへ誓った気持ちは変わりません! その腕を治し、元の場所へ……」


 しかし、ネルはその先の言葉を続ける事をためらい、何も言葉を発しないまま顔しかめ下を向いてしまった。

 ネルがうつむいていた時、川の上流から蝋燭に火を灯した船が流れてきた。


「きましたね」


 ネルはそう呟き川の方を向いた。

 最初はポツポツと1艘ずつ流れてきたが、直ぐに川を埋め尽くすほどの光が押し寄せてきた。

 その美しく光に包まれた情景を二人は黙って眺めていた。


「とても綺麗です」


 シャインがポツリと言った。


「僕もそう思います! シャインさんと見られてとても嬉しいです」


 そして二人は顔を見合って笑った。

 最後の1艘らしき船が通りすぎた直後、川の上流から幾つかの光が流れてくるのが見えた。


「今のが最後じゃなかったみたいですね」


「……! ネルさん、おかしいです。上流の光には熱量が感知されません」


 そう言って、シャインは庇う様にネルの前に移動する。

 その間も光は水面近くを、揺れながら波が流れるように近づいた。丁度ネル達の前に来た時、空中へ浮き上がり光はゆっくりとネルとシャインの周りを周りだした。

 警戒するシャインに、ネルが何かを感じた様子で声をかけた。


「シャインさん、もしかしたら精霊さんでしょうか?」


「解りませんが油断しないで下さい」


 ネルが浮かれた様に発する言葉にシャインは注意を促した。


「シャインさんとりあえず、敵意は無さそうです。様子を見ましょう」


 幾つかの光が二人の周りをクルクル回っていたが、2つが大きく輝き出し、それぞれネルとシャインの前で停止した。


「シャインさんが持っていた本に書いてありました。後は僕達が受け入れるかどうかです」


「そのデータは私の中に在りますが、私は人ではありません。何故私の前にも精霊がきたのか理解不能です」


 シャインがネルの方を向くと、これから起こると推測される神秘的な現象を思い描いているのだろう。ネルは笑顔と興奮が入り混じった顔で答える。


「僕にもそれは何故か解りません! だけど僕はこの先貴方の為に力が必要になる時がきっと来ると思います。その時の為に僕は精霊を受け入れます」


 その言葉と共にネルは精霊の方を向き大きく息を吸い込んだ。


「私はネルさんの力になる者、私に力を貸して貰えるなら私も精霊を受け入れましょう」


 シャインも同じ様に精霊へと身を向けた。


 その後二人は同時に光を手に取った。

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