2話 私はシャイン(シャイン視点)
洞窟の奥に作られた、部屋の中で方膝をついた状態のまま私はネル様の声を待っていた。
「えっと…… コードネーム・シャインさん?」
その声はとても小さく、名前を確認するかの様な弱々しい声であったが、返事を貰った事が嬉しく思えた。
「ネル様、私の事はシャインと呼び捨てで構いません!」
ネル様はまたしても、手の平をこちらに向け、首と共にブンブン振り回した。
「呼び捨てなんて出来ませんよ。僕はまだ7歳ですし、あなたはどう見たって僕よりお姉さんだ。せめて…… シャインさんでどうですか?」
私は17歳の女性を元に設計されている。確かにネル様の方は外見、7~8歳で髪型は耳が髪で隠れていてボブカットと呼ばれている系統だろう。髪色は綺麗なブラウンでとても似合っている。目は大きく、顔の輪郭も整っていて美少年の部類であると断言できた。
身長の方は私が158cmでネル様は120cm私の方が40cm程度高く、ネル様の言われる事も理解できた。
「ネル様、解りました。私の呼び方はお任せ致します。それで私はネル様の御傍に置いていただけますか?」
ネル様は腕を組んで何やら考えている様子であったが、考えが纏まった様に私に語りかけてくれた
「シャインさん お話しませんか? ここは僕の秘密基地ですが、今日突然シャインさんが現れて、連れて行ってくれって言われて…… 僕はシャインさんの事を何も知らない。僕にシャインさんの事を教えて下さい」
そう言ってネル様は礼儀良く頭を下げていた。
「ネル様、解りました私が話せる事はお話しましょう」
その言葉を聴いたネルは、嬉しそうにタンスの横に隠れるように置いてあった。
椅子を向かい合わせる様に2つ並べ、シャインに座るよう手招きをした。
「それではシャインさん、あなたは精霊でもない、じゃあどの様な人で、何処から来たのですか?」
ネル様は私の話を何処まで信用してくれるかは解らないが、それでも私は正直に話す。それしか出来ないから……
「私は戦闘用に開発されたアンドロイドです」
ネル様は、想像通りの反応をしていた。
「アンドロイド?」
正に単語自体聞いたことが無く、反応にも困っている様子である。
私は今までのやり取りで、ネル様が住むこの世界の世界観をある程度予想していた。
私の事を本気で精霊などと思っている事など、近代科学が進んでいた世界ではありえない。
推測出来るのは、ファンタジー小説によくある世界と思われる。
それを確定させる為、私は次なる言葉を投げかけてみる。
「ロボットはご存知ですか?」
「ロボット?」
ふっ! やはり同じ反応。
しかし、この世界でもっとも私に近い存在をすでに検索済みである。次で理解されないと説明が困難と思われるが私が思うにネル様はきっと知っているであろう。
「では、ゴーレムとかはご存知でしょうか?」
「ゴーレム! 知っています! ゴーレム知っていますよ。えっと、精霊契約で土や石などに命を与えて命令出来る魔法の事ですよね?」
ネル様はやっと自分の解る名前が出てきたのでとても嬉しそうであった。
私の方も大方予想通りの回答であった為、ネル様にも解りやすい様に言葉を返す。
「そうです、そのゴーレムです。普通のゴーレムと言えば普通、精霊契約や魔法で生まれますが、私は全て人の手で作られた動く人形と言う事になります」
ネル様は真剣な顔で私の目をみつめていたが、その後何も言ってこないので私は次の問いに答えを返した。
「次に何処から来たのかと言う問いですが、まだ推測の域でご説明しますと、ネル様がいる世界とは違った所と思われます。
爆発の影響で何か特殊な条件でここに飛ばされたと思います。今はまだ情報も足りませんので、もう少し時間があれば詳しく調べご説明致します。簡単に言うと、物凄く遠い所でしょうか……」
この問いに関しては、理解できるのか難しい所である。ネル様は両腕を組み、ぶつぶつ何か呟いている様である。
その後ネル様の考えが纏まるまで時間は掛からなかった!そしてネル様は語ってくれました。
「僕はシャインさんを初めて見たとき、体に電気が走りました。指先から心臓まで一瞬に同じ衝撃が襲ってきた感じでした。
動かなく片腕の肘から先が無いのを見たとき全身から力が抜けていくようで、目を覚ましてくれた時は本気で涙が出て何故だか解らないのですが、心から良かったと思いました」
ネル様は手振りを含め語ってくれている。
「最初にシャインさんが何故ここに居たのか、説明を聞いても理解できませんでしたが、シャインさんが人の手で作られたと言うのは理解できました。そして人の手で作られたと言う事は、人の手で治せるという事です。
そして貴方を作った人もどこかにいます。僕はシャインさんを元の場所に戻れる為に何かをしたい。その腕も治してあげたい。僕で無理ならシャインさんを作った人に治して貰いたい!」
ネル様が私を強く見つめ、大きく息を吸い込み、先ほどよりも大きな声で伝えてくれました。
「初めてあったばかりなのに、何故そう思うのか僕にも解りません。
精霊様の導き……? いえ、違うと思います。
僕はシャインさんの力になる為に生まれたと感じました。
こんなの変ですよね?
僕は僕の感じた思いを信じたいと思います。シャインさん僕を信じて、僕に着いてきてください!」
真剣な眼差しを逸らさず、自分の表現出来る言葉で語ってくれた。そして暖かな右手を差し出してくれていた。
あぁ、この人はやはりマスターなのだろう…… そういう風に私は思ってしまった。
私が本当の人であったなら、きっと涙を流していたのかもしれない。
涙が流せないのであれば、せめて最高の笑顔を見せてあげようと、ネル様が差し出している右手を取って笑顔で言った。
「ネル様、私はシャインです。よろしくおねがいします」
どうもおかしいこんな風に考えるなんて、私にはどうやらエラーが多すぎるようだ……