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望まぬ結果 光視点

ほとんど一ヶ月も放置してしまって、申し訳ありませんでした(/--)/

時間が無く←言い訳

眠気に勝てな←これも言い訳


…すみませんでした(((^^;)


「…………え?」


倒れた狐に似た生物を見下ろして、光は驚きの声をあげた。


「おい?おい!?」


呼び掛けても、何も反応しない。四肢を横に投げ出したまま、ピクリとさえ――動かない。


「………っ」


最悪な事態を想像して光は息を飲んだ。それでも意を決して恐る恐る清に近づいていく。

そして手を伸ばし、そっとその毛並みに触れた。

ふわりと柔らかな体毛が光の手を包み込む。奥から、ドクドクと力強い心拍音が…


聞こえなかった。


耳の先から分かれた尾や帯まで手を這わせてみても、小さな振動すら感じられない。


「う、そ……だろ?」


毛並みは温かい――まだ。


「おいニィ、うそだよな、なぁ?」


動かない身体、聞こえない心音


「目を開けて、くれよぉっ!」


どんなに叫んでも、どんなに祈っても、清は目を頑なに閉じたまま。


「まだ、仲直りも、してないじゃないかよ!!」


それでも光は、叫ぶ。

何故か、今なら――清に届く、ような気がして。







光は、清に長い間、憧れてきた。

だから、インターホンで懐かしい兄の声を聞いたとき、本当は、嬉しかった。


やっと…ニィに、会える。


期待に胸を踊らせながら開いたドアの先に見えたのは、あの見慣れた兄の姿じゃなくて。

疑った。


――これは本当にニィなのだろうか、と。


光の知っている清は人間であり、子狐だったり白い光を出したりすることは、しない。

昔、清が『神の子』と呼ばれていた頃のことは、光も知らないわけじゃない。でも、所詮この名は子供が付けたあだ名であり、清が本当に『神の子』であるわけじゃないからどうでもいいと思っていた。何よりも、このあだ名は清が最も忌み嫌っていたもの。ましてや自ら特別なものになることなど、あるわけがない。


そう、清は平凡を求めていた。何よりも。


その並外れた容姿を派手に晒し人々の視線を集めながら悠々と歩くことよりも、人混みの中を隠れながらこそこそと歩くことを好んだ。

TVや雑誌に載って、有名になることよりも、社会人として幸せな家庭を作ることを望んだ。


どうして、と。


どうして目立つことが嫌なの?と光が尋ねると。

目立っても良いことなんか1つも無いから、と清は答えた。

照れ隠しにそう言っているのかと思ったけれど、清の目は至って真剣で、羞恥なんか欠片も無くて。

ああこれは、本心なんだと思った。


同時に、沸き上がった嫉妬。


なんでニィは目立ってオレは目立たないんだ

オレは目立つように努力していてもだめなのに

なんで何もしてないニィが目立つんだ


清が周りから『神の子』と崇められる度に、「天才には勝てるわけがない」と思い知らされた気がして。


それが、悔しかった。


悔しくて悔しくて、どんなに泣き喚いても、ただ泣くだけじゃ事実は変わらなくて。

だから、行動に移した。

光と同じように、清の存在を良く思わない奴は思いの外結構いて。そういうやつらを募って、光は清を虐めるという行為に出た。


清を傷つけることで、自分が上に立ったような優越感を得るために。

今までの努力は無駄ではなかったと、己に言い聞かせるために。


そうでもしないと、光の心が持たなかった。


でもそうしたものが感じられたのはその一瞬だけで、実際に得られたのは罪悪感と、清に対する敗北感だけだったけれど。


そして目も合わせたくないと、学校を追い出した結果。


清は、あの姿になって帰ってきた。

普通の狐ではない、何かに。

そして目の前が白い光で染まった瞬間、光は悟った。


ずっと、追いかけてきた清。

その清が、もう絶対手の届かないところへ行ってしまったのだと。


ずっと心のどこかで思っていた「ニィを越えたい」という願いは、もう二度と――叶うことは無いのだと。


「く……、はは…っ」


訳もなく、笑いが漏れた。


「は、はははは、あはははは……」


苛めた代償として、返ってきたのは。

期待していた喜びではなく。


来るはずのなかった、未来。


涙なんて、もう出るわけが無かった。

出るのは、乾いた笑い声だけ。


「は、はははは、はははははははは」


――なんで、あんなことしちゃったんだろう


あの時、少しの快楽に身を委ねていなければ、ニィは今頃あの穏やかな笑みを浮かべながら、一人の人間として隣に立っていたはずだったのに


なんて、オレはバカなんだ――


「はははははははははっ、ははははははははは」










今更後悔しても無駄だってことは、分かってる。


それでも、あんなことしなければって、どうしても考えてしまうんだ。


全部、全部自分が招いた結果なのに。


きちんと受け止めなくてはならないのに。


嫌だと、叫ぶ我が儘な自分がまだ居座り続けているんだ。


だから――神様、許してくれませんか?


もう少しだけ、甘美な夢を見続けることを。










――何時間、こうしていたのだろう。

ただいま、という声と共に玄関の戸が開いた。

夕焼け特有の赤い光が薄暗い玄関を照らし、それまでの狂気じみた笑いがピタリと止む。


…母。


光にとっての『母』は、嫌悪感を抱かされる生物でしかない。

最も清を愛し、光には目もくれなかった奴等の筆頭。

だったけれど、清がすべての肩書きを捨てた途端清から光に乗り換えた、意地汚いやつ。


即座にいつもの笑みを顔に張り付ける。そして、(せい)を抱き寄せた。


「お帰りなさい」


目を丸くした母が、光を見詰める。

厚く化粧の施された、顔。


「光、何を持っているの?」


…まるで、本当の自分を隠しているかのように。


「狐だよ、そこで拾ったんだ」


「あら、でも、うちはね…」


迷う素振りを見せる母。もう結論は出てるくせに。


「大丈夫。僕が世話をするから」


懇願の意を目に込めて、母を見る。

光と同じ、作った笑顔を浮かべている母を。


「ダメよ、光」


「どうして?」


――瞬間、背中に冷たい汗が流れた。


「捨ててきなさい?」


バタンと音をたてて扉がしまり、辺りが暗くなる。

うっすらと笑みを浮かべてはいるが。


目が、怖い。


こんな母は、今まで見たことがなかった。

いつも見てるのは母の上部だけなのだと、改めて思い知る。


「光?」


「いっいやだ!」


迫られ、反射的に狐を母から隠す。そこで、気づいた。


狐を、手放したくない?


ニィさえいなくなってしまえばと。

今まで何回思ったか、分からない。

なのに、今は。

心底手放したくないと、思う。

あんだけ突き放しといて今更何を、とニィは思うかもしれないけど。


「光、貸してくれる?」


仄かな赤い光の中、綺麗に整えられた手が伸びる。

散りばめられた笑顔、巧妙に隠された本心。

細められているのに、一向に冷たさを失わない瞳。


「………っ」


「…光?」


母の不思議そうな声で我に返る。どうやら、手から逃れるため反射的に立ち上がってしまったらしかった。

戸惑いつつも落ちそうになっていた狐をしっかりと抱え直す。


「………ニィは、渡さない」


俯いたまま、小さく呟いて。

何故か呆然としている母の横をすり抜け、適当な靴を引っ掛けて外に出た。



中間テストが来週に控えているので、次の更新はかなり遅くなると思われます!

また勉強も難しくなり、これからは一ヶ月に一回かそれ以上の亀更新になりそうです(゜゜;)

それでもいいよーという寛大な心をお持ちのかたは、この暴走しまくりの物語に もうしばらくお付き合いくださいませm(__)m

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