告げられる絶交
明けましておめでとうございます!
本年もよろしくお願いします!
そして年が変わっても亀更新は変わりません!!!
……お許しくださいませm(__)m
ポタ。
どこかで、水の落ちる音がした。
気のせいかと思ったその音は、止まることなく鳴り続く。
ポタ、パタパタ、……ポタリ。
見れば、母が泣いていた。綺麗にはたいてあったはずの白粉がとれて、見るも無惨な顔になっている。
そんな、少し本来の色を覗かせる口元が歪んだ。
「…………わけ、ない」
微かにこぼれた声は小さくて、聴力が高いはずの清の耳にも一部しか届かない。
ずっと下を向いていた光が、初めて顔を上げ、訝しそうに母を見た。
涙を流し、目をいつも以上にギラつかせた母が叫ぶ。
「そんなの、許すわけないじゃない!」
爛々と光る目には、怒りしかない。
普通の人から見たら呆れるほど、強い自己。
『清』という玩具を取り上げられ、己の計画が上手く思ったように進められなかったことに対する、子供のような怒り。
清はただ、こう言っただけだ。
『久しぶりですね、お父さん、お母さん。僕は清と申します。最近までここに滞在していたのですが、覚えてくださっていますか?この度、僕は神天族として生まれ変わりましたので、近々この家を出ようと思っています。仲間の方に聞いたところ、血は繋がっていないそうなので、赤の他人と思ってくださればそれで結構です。今までありがとうございました。……さようなら』
母が泣いた理由が、"子供ともう会えない"という悲しみからくるものであったならば、良かったのだろうか。
だが清にはその様には到底見えなかった。"大切にしていた玩具が自分の思い通りに動かない悔しさ"から、泣いているように見える。
実際、母は清を睨んでいた。
『私の命令に従え』と、視線で訴えてくる。
昔の清には、こんなふうに命令されたら従うほか道はなかった。
幼い体は、まだたとえ仮だとしても、『母』を求めていた。また、睨まれれば本能的な恐怖が思考を支配し、何をすることもできなかった。
でも、それは昔の話。
成長した今の清には、『母』の視線など受けても何も感じない。命令に逆らうことなど余裕だった。また、万が一危ないことになっても、緑が助けてくれる気がした。
ふいっと目を逸らし、拒否を表す。苛ついた母が勢いよく立ち上がり、バシッと何かを叩く音がした。
別れの時が、近づいてくる。
それは残酷なほど、確実に。
たとえ仮の家族だったとしても、二度と会えないと思うとやっぱり辛くて。
道具として利用されただけなのにな、と清は自嘲気味にクスリと笑った。
「っ、なにがおかしいのよ!?」
自分のことを笑われたと勘違いしたのか、母が叫んだ。
ほんと、何が悲しいんだろうな。こんな、いい思い出もないような場所で。
そう思うと、さっきの自分がものすごい馬鹿みたいに思えてきて。
「ク、……ククッ」
余計笑いが止まらなくなって、辛うじて口を閉じて体が震えるのを押さえつけた。母は最早何を言っても無駄だと思ったのか、真っ赤な顔で黙り込む。
「ふ、ふくく、くっ」
ああ、面白い。 なんなんだろうな、これは。胸がスカッとして、なんだか満たされたような感じがする。
突然緑が瞬間移動で入ってきた。横で、緑によって押し退けられた空気の流れを感じた。
「残り時間は、あと5分でございます」
別れの時が、一秒一秒正確に近づいてくる。
清は思いっきり、笑った。生まれてはじめて、心から"楽しい"という感情を味わいながら。
ひとしきり笑ったあと、最後に一言、また下を向いている光に向かって、告げた。
光の姿だけはまた見に行く、そう己に誓って。
「またね」
母がはっと息を飲んだのが聞こえた。
光が目を見開き、それまで微動だにしなかった父が勢いよく立ち上がったのを感じた。
それを最後に、笑顔のまま清は消えた。
文字通り、一瞬で。
生家を去ったこの時は、清が今までの『水上 清』という道具から、『清』という一つの命を持つものに生まれ変わった瞬間でもあった。
今回お正月の挨拶!?
もう元日から半月もたってるのに!?
ちょお待てやそこのこそこそ逃げようとしてるヤロー
お前だお前、とぼけてキョロキョロしてんじゃねーよ
(はいっすびばせん)