家族との対面
12日を目標としていたのに…!
忘れてしまうとは、なんたる不覚(T-T)
背後で緑の気配が消えたあと、一人残った清は一度深呼吸をした。
それから強く前を見据えると、勢いよく階段を駆け抜け、居間へ通じる扉を音をたてて開いた。
バンッッ
思ったよりすごい音が鳴ったが、そんなことに構っていられない。
驚いて振り向いた光と母、それに父が清を見て目を丸くする。
互いにどうしていいか分からず固まっている清と光を尻目に、父がそれまで座っていたソファーから立ち上がりつつ叫んだ。
「し、神天族だ!!!」
緑は清と離れたあと、すぐに神の所へと瞬間移動していた。
緑には、清に思い当たることがあったのだ。
なんだか一瞬がものすごく遅く感じる。
早くして!早く、早く神に伝えないと!
瞬間移動が成功し、肉体の重みを足が支えると同時に緑は神に叫んでいた。
掟をきちんと守って。
「兄様!あの子は、稀有な子ですのよ、神天族が使えないはずの能力、千里眼・予感・心読み・記憶読み取りのうち、予感を持っている可能性がありますのよ」
息もつかずに一息に話終えた緑は、荒くなった息を整えながら神を見上げた。
一瞬緑の迫力に僅かな戸惑いを見せていた神であったが、すぐにそれは驚きへと変わっていった。
「…本当か、緑!?」
緑は微かに頷いて肯定すると、今度は冷静に話を始めた。
「今や正規の神天族の数は、私と兄様を含め四。昨年天使になられたあの方は、この"奇跡の能力"のうち千里眼を持っておられましたが……。また"能力持ち"が出るなんて大変驚きましたよ、兄様」
「驚いたのは私とて同じだ。このようなことは私でも起こすことに無理があろう」
「え、そうなの?私はてっきり兄様の気まぐれでこのようなことが起きるのだろうと……」
いつの間にかタメ口な緑はそこまで言って口をつぐむと、徐に神に背を向けた。
「多分清はテンパってると思いますので、様子見に行ってきます。うふふ、『テンパる』という言葉、意味までしっかり覚えましてよ」
神に顔を見せないまま、ニヤリと不気味に笑った緑は、清の所へ行くべくテレポート体勢を整えた。
「では、次お会いする時は新たな仲間と共に参ります」
消える瞬間、緑は叫んだ。一瞬神の首が動いたのが見てとれ、瞬く間に景色は人間の家へと移り変わる。
一拍遅れて、前の部屋から声が聞こえた。
「さようなら」
その声は、先ほど聞いたばかりの清のもの。
だが今のそれは、冷たく、淡々としていて、本当に清のものかどうか疑った。
そっと、部屋を覗いてみる。
「さようなら」
清が同じ言葉を、小さくまた言った。
家族は揃っていた。
父、母、そして光。
光はうつむき加減で椅子に座っていて、表情はよく見えなかった。