拒否と拒絶
テストがやって来た!
あなたはどうする?
ズンチャンズンチャン♪←BGMのつもり
ふっと景色が戻って、見回してみるとそこは清の部屋だった。
「清さん。これからしばらくは、何か大変な問題でも起こらない限り、家族に会うことは出来なくなります。心して挨拶をしてきてください」
緑の言葉に清は頷いた。それを見て緑は目を細め、悲しそうに微笑む。
とても綺麗で儚い、笑み。散っていく桜の花びらの様な、あるいはすぐ溶けてしまう雪の結晶のような。
胸が、締め付けられる。
緑さんにこんな顔を向けられて、行ける訳がない。
「何やってますの?早く行きなさい」
怒ったように眉を寄せ、声を荒げた緑さん。
本心では、何を考えているのだろう?
「…言っているでしょう、後悔なんか、させたくないのです!」
動かない清に痺れを切らしたのか、緑が叫んだ。
「あなた様は、まだ避けられる!避けることが出来るのに、折角安全な道があるのに、何故それを無駄にしようとしていますの!?いつも常にこんな風に逃げ道があるとは限らないのですよ!!」
清はまだ、動かなかった。
感傷的に叫ぶ緑が、壊れてしまいそうだったから。
あの儚い笑みのように、いとも容易く。
でも次の瞬間、緑の様子が変わった。
「……これだけ言っても、まだ動かないのですね」
見せていた傷跡のようなものが消え去り、代わりに黒いものが溢れだす。
「もしあなた様がこの機会を無駄にしたならば、私はあなたを」
……ゾッと、した。
それくらい、緑からは冷えた空気が流れ出ていた。
鳥肌が立つほど美しい弧を描いた口が、滑らかに動く。
「……拒絶、致します」
恐怖。
それだけが清の体を駆け巡り、尻尾の毛が一斉に逆立った。
笑みを崩さない緑は、清の行動を窺っている。
その全く笑っていない目を見たとき、清は悟った。
もし清が動かなかった場合、緑が本当に清を拒絶するであろうことを。
清は、"拒否"を知っている。
あの、母に『清』を否定されたときの絶望感。
襲いかかってくる、とてつもない悲しみ。
どちらも"拒む"という漢字が入った、似ている二つの熟語、"拒否"と"拒絶"。
これらが見かけだけでなく、意味も似ているのだとしたら。
――あんな思いは、もう二度とシタクナイ
「分かり、ました。……行ってきます」
背を向けた清は、気がつかなかった。
緑がさっきとは一変して、安堵した表情を浮かべていたことに。
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