表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界戦国異聞 <勇女~勇ましき女たち~>  作者: 鈴ノ木
第参章 東神名国、ジャカール帝国 停戦条約
56/65

第五十四話

最後の文章の、僕と鳳が・・・を、俺と凰が・・・に修正しました。11/5

(クロガネ)


 私とキリマルはほぼ同時に三階の床につくと、その床を蹴り同時に妖扇と双刀の滅斬刀による斬撃をその部屋の共有庭園側の壁に放つ。そして、その斬撃により切り目の入った壁を突き破って外へと飛び出した。



 私とキリマルが執政官屋敷の壁を突き破り外に飛び出した時、共同管理都市トーゲンの西の都市壁の遥か向こうにある山並みの稜線が、その山並みに隠れた朝日に照らされて、真っ暗な夜空にうっすらと白み始めていた。



 私は東神名国共同管理都市トーゲン執政官屋敷の壁を突き破ると同時にカーリラーの姿を探そうと目を共有庭園に向けた。その時、私の目の前を仄かに輝く真っ白な巨鳥が猛スピードで夜空に向かって飛んでいく。


 それはただの巨鳥ではなくカクラの呼び出した式神、神鷲だと一目で分かった。


 私がその神鷲が飛び立ったであろう場所に目を向けると、ちょうどカクラの持つ陰陽五行刀の最大の力、太極をカーリラーがどす黒い湾刀で受け止めたところだった。


 カクラはシャイン様に頼んでマジックアームスを神名家の宝刀の一つで自分の愛刀でもあった陰陽五行刀と同じ能力のものにしてもらい、そのマジックアームスの二刀一対の刀にも陰陽五行刀の名を付けていた。


 そのマジックアームスの陰陽五行刀最大の能力である太極は、それに込められた念の力によってはこの世の全ての邪を浄化分解し無に帰してしまうだろう。

 しかも、今、カクラが持っている陰陽五行刀はシャイン(当代凰)様の強力な加護が付加されたマジックアームスだ。

 普通ならば、その太極の力に何ものも抗うことは出来ないだろう。


 しかし、先代鳳様の力を得ている破壊邪神の加護を受けたカーリラーはその太極を四本のどす黒い湾刀で受け、ふん! と気合い一つで切り裂き霧散させる。と同時に、カクラとは反対を向いているカーリラーの般若のような顔の口が大きく開かれ光線のような邪悪な魔力を込められた火炎を吐く。

 その邪炎は先ほど私の目の前を夜空に向かって猛スピードで飛んでいった神鷲を確実に捕らえていた。


 カクラは太極を放った後、続けざまに陰陽五行刀の五行の能力、火気、水気の刃をカーリラーに放っていたが、カーリラーは二本の漆黒の湾刀でその刃を軽く打ち払い霧散させ邪悪な魔力を込めた斬撃をカクラに放ち牽制する。と同時に、邪炎に包まれた神鷲に向かって大気を蹴って上空へと向かう。対して、「カーリラー!!」と、執政官屋敷から私と共に飛び出したキリマルがそのカーリラーを迎え撃とうと大気を蹴ってカーリラーに向かって加速する。

 私も妖力の翼を広げキリマルの後を追う。

 カーリラーはそのキリマルに対し微笑みを浮かべた顔の口から光線を放つ。が、それをキリマルは双刀の滅斬刀の斬刀で弾き更に大気を蹴ってカーリラーに迫る。そして、カーリラーがキリマルの間合いに入った瞬間カーリラーは湾刀を持つ六本の腕を伸ばし体を竜巻のように高速で回転させた。

 キキン!! と刃を打ち合わせる音が聞こえたかと思うと ズババン!! と何かものが切り裂かれる音と共に「ぐあっ!!」というキリマルの声が聞こえた。と思った瞬間、私は弾かれてきたキリマルの体と共に東神名国共同管理都市トーゲン執政官屋敷の壁に叩きつけられ、その壁だけでなく全ての部屋の壁や床を突き破り執政官屋敷を突き抜けて地面にめり込んでいた。と同時に、私は「ぐっ、げえぇぇ!!」と胃の中の物を吐き出していた。


 私は嘔吐後まだ胃が絞られるような感覚に耐えながら意識の無い私の上に乗るキリマルを雑に脇に押し退ける。

 そのキリマルを見ると、彼の体には多数の刀傷が刻まれていた。

 その刀傷の内、脇腹と腕の傷がかなり深いように見える。

 その傷からは大量の血が噴き出していた。

 そこに「大丈夫ですか?」とシャイナ教の神官エルフ達が駆け寄ってくる。

 恐らく、戦闘に人々が巻き込まれないように人払いの結界を執政官屋敷とシャイナ教大神殿の周囲に張っている者達だろう。

 その者達に「キリマルヲタノム」と半ば強引にキリマルを押し付け、私は妖力の翼を羽ばたかせカーリラーがいるであろう執政官屋敷の上空へと向かう。

 私が執政官屋敷の屋根を越え、その先にいるカーリラーをその目に捉えた時、カーリラーが神鷲に乗っていたのだろうカナコを斬り捨てカナコが守っていたオズヌとミーナを奪い取ったところだった。

 カナコは纏っていた風を失い血飛沫を上げながら共有庭園へと落ちていった。と同時に、「カナコ!!」という悲鳴のようなカクラの叫び声が聞こえてくる。


 「オノレ! コドモタチヲカエセ!!」


 私は、シャイン様の神護の指輪を首に掛けその加護の光に守られた子供達を両手に掲げ持つどす黒い乱世の狂気を全身から吐き出すカーリラーに向かって妖火を吐くと同時に妖扇を激しく振るい妖風を起こしカーリラーをその妖火の火炎竜巻で締め上げる。もちろん、シャイン様の加護を持つ妖扇で作り上げた火炎竜巻は子供達を傷つけることはなかった。


 カーリラーはその全ての穢れを浄化する妖火の火炎竜巻に締め上げられ一瞬「ぐっ!」と呻いた。が、「カッ!!」と気合い一発でその火炎竜巻を弾き霧散させる。

 その時、既に私はカーリラーに対し妖扇を袈裟懸けに振り抜いていた。が、私が切り飛ばしたのはカーリラーの左腕一本、対して私はカーリラーのどす黒い湾刀で右脇腹を深く抉られていた。「クアッ!」と私はその湾刀に斬られた痛みと穢れに悲鳴を上げ執政官屋敷の屋根に落ちていった。


 カカカ、「なかなかに楽しめたぞ。当代凰様を我等が元にお呼びするのに必要な、この子供達を捕らえられれば我のここでの務めは終わりだ。……小娘、お前はまだまだ強くなるだろう。再び相見える時を楽しみにしているぞ」


 そう言うとカーリラーが吐き出すどす黒い乱世の狂気が濃くなりカーリラーの姿が消えていく。


 「クッ、マテ、コドモタチヲカエセ……」


 私が執政官屋敷の屋根の上に横たわりながらカーリラーに弱々しく手を伸ばした時、突然、突風が吹きカーリラーが吐き出す乱世の狂気が浄化され消し飛ばされた。


 カーリラーは「なっ!?」と驚きの声を上げ子供達を持ち上げていた自分の二つの手を見上げる。が、そこにある筈の二つの手は手首から先を切り飛ばされ、子供達の姿は無かった。

 カーリラーは一瞬愕然としたが、流石は邪王最強と言われる事はある。直ぐに戦闘体勢に入り周りを警戒する。


 「カーリラー、わしの娘をよくも可愛がってくれたものだな」


 気がつくと私の隣に懐かしい姿があった。


 カカカ、「我の事を覚えていてくれたか、グソン殿」

 ふん、「二千百数十年前に比べ、お前は随分と穢れたものだな」


 ボサボサの白髪交じりの黒髪、赤ら顔に高い鼻、そして厳い体に修験者のような黒を基調とした服を纏ったその男は片腕にオズヌとミーナを抱え、カーリラーに不機嫌そうな顔を向けていた。


 「トーサマガ、ナゼココニ?」


 私がその男、私の父に弱々しく声をかけると父は少し心配そうな目を私に向ける。


 「娘のピンチに父親が来ずして何とする?」


 百年近くも私と兄をほったらかしておいた父親の発言とは思えなくて、一瞬だが私は痛みも苦しみも忘れて唖然としてしまった。


 「ナガネン、ホッタラカシテオイテ、ヨクイウ」

 「まあ、そう言ってやるな。こ奴はお前達に見つからないように影でお前達を見守っていたのだ」


 その声のした逆隣に目を向けると、そこにはアカガネと車椅子に座ったクリスティーン様がいた。

 恐らくクリスティーン様の転移魔法で来たのだろう。


 「やはり鳳凰様が絡んでくると、あなた方も動くか……これで完全に形勢は逆転してしまったな。まだ当代凰様を我等が元へお招きする手立てはある。ここは退かせてもらおう」


 カーリラーが再び乱世の狂気を纏い姿を消そうとする。


 「わしがお前を逃がすと思うか?」


 父はオズヌとミーナをクリスティーン様に預けると、フッと姿を消し次の瞬間カーリラーを素手で殴り地面に叩きつけていた。


 共有庭園に出てきている衛兵達やシャイナ教の者達から少し離れた所に巨大なクレーターを作り上げたカーリラーは、苦しげに声を吐き出していた。が、次の瞬間、カーリラーの体から、ブワッ! と爆発的に乱世の狂気が沸き上がる。


 それに対して「ぬっ!」と父、ダイテンが身構えた時、一瞬にして全く光を通さない闇が辺り一面を覆い尽くした。


 その凄まじいまでの邪気邪念の穢れに「グッ、」と、流石の私も呻かずにはいられなかった。


 その闇は、乱世の狂気など鼻で笑いたくなる程、この世界に対する怒りや悲しみを含んだ絶望と、ありとあらゆる邪気邪念の穢れを内包していた。

 シャイン様の加護を受けている者達は大丈夫だろうが、何の備えも無い普通の人間がこの闇に呑まれたら一瞬で発狂死するだろう。


 「ガルーだけでなくカーリラーまで失うのは、流石に困る」


 闇の中、何処からともなく怖気のたつような声が聞こえてきた。


 その時、光を通さない筈の闇の中でシャイナ教大神殿が白く仄かな光を放ち始めた。かと思うと、その白い光は一瞬にして地面を這い執政官屋敷を包み込み、更にその範囲を拡大していく。

 その光はその内に取り込んだものを浄化し全てのものをこの闇の穢れから守っているようだった。


 ・・・コレハ、シャインサマノ、カゴノシュゴフダノチカラ・・・


 「ふむ、これが当代凰が創ったという札の力か。……まだ本来の力を使えない状態で創ったのもだと聞いていたが、これ程の力を発揮するとは、侮れんな」


 私がその光の正体に気づいた時、更にハッキリと背筋の凍る地の底から響いてくるような声が聞こえてきた。


 その声のした方へ私が目を向けると、カーリラーの体の上に浮かんでいる一人の少年が目に入ってきた。

 その少年はこの光も通さない闇の中にあって、その姿をハッキリと視認することができた。

 見た目十歳ほどに見えるその少年の姿は、その闇の中にあってその闇よりもどす黒くその瞳は真っ赤に燃えていた。


 私はその姿を一目見て、生まれて初めて味わうような恐怖が全身に駆け巡り「ヒッ!」と悲鳴を漏らしてしまった。

 恐ろしいのに目を反らせない、その恐怖の対象から目を反らせないとなると更に恐怖心が膨らむ・・・コノママデハ、ワタシノココロガ、キョウフニタエラレナクナル・・・そう思い、私は無理にでもその恐怖の対象である少年から目を反らした。そこにはゴオウ様の神力の仄かな光を纏った父の姿があった。


 その父は険しい顔をして身動きがとれないでいるようだった。


 ・・・ソンナ、ゴオウサマノチカラヲ、ツイデイル、トーサマガ、ケオサレテイル?・・・


 「やはり、破壊邪神は先代鳳の心臓を完全に我が物としていたか。二千百数十年前は先代鳳の心臓を自分の体になんとか馴染ませた程度だったが……鳳凰の従属神であるゴオウの力を継いでいるダイテンでは、邪神だけならともかく、欠片でも鳳の神威を自分のものとしている者に刃を向けることは難しいだろう。……となると、ここは私がやるしかないかねぇ」


 そう言うと、「まあ、今の奴と殺り合えば私も無傷ではおられないだろうが……」と呟き、シャイン()様の加護の光を纏ったクリスティーン様は車椅子の横に立って顔を青ざめさせている、同じく加護の光に守られているアカガネに子供達を預け覚悟を決めた表情で立ち上がろうとする。


 その時、「むっ?!」といってクリスティーン様は身体を強張らせた。と同時に、金に輝く光線がどす黒い穢れの少年、破壊邪神を貫いた、かに見えた。が、破壊邪神はその西の空から光線のように飛来した金色に輝く神矢を、右手の平に破壊の神鳳の欠片の力と邪神の力を全て集中させその右手の甲を左手で押さえ、両手を使い受け止めていた。


 金色に輝く神矢が光線となって飛来した瞬間に共同管理都市トーゲンを覆い尽くしていた闇は一瞬で浄化され弾けて消えていた。


 少年の姿の破壊邪神は金色に輝く神矢を、ぐっぬぬぬぬ……、と受け止めはいたが、今持つ破壊神と邪神の力を総動員しても、その威力を完全に打ち消すことが出来ずにいた。が、何とかその金色の神矢の威力を別方向へと反らし受け流す。


 その時、「待たせたね、クロガネ」というシャイン様の声が聞こえ、私の目の前に純白に輝く白虎と、その背に跨がり、白銀に神々しく輝き、背に大翼を広げ腰まである三つ編みにした白銀の髪をなびかせて私の主である少女が姿を現した。


 その少女、シャイン様の背中には純白に輝く大弓が張り付くように浮いていて、シャイン様の右手には白銀に輝く刀身と黄金に輝く刃を持った刀が握られていた。


 シャイン様は辺りをゆっくりと見回す。


 その美しい顔は、昨日の夕刻、シャイン様が出かけられた時と比べて凜々しくなられたような気がした。


 「ちょうどいい。当代凰よ! 我が元に来て、我が願いを聞き届けよ!」

 「やかましい! 黙れ!」


 破壊邪神がシャイン様に声をかけた瞬間、シャイン様の雰囲気が一変する。と同時に、白銀に輝く髪は金色に輝く髪となり美しい少女の顔は少年の顔へと変化する。



シャイン・おう


 僕は金色に輝く神矢を放った後、神鳥弓を背中に回す。と、神鳥弓は僕の背中に付かず離れずの邪魔にならない距離で張り付き浮いていた。

 僕はまるで愛し子を背負っているような気がして頬が緩む。


 ・・・おっと、いけないいけない・・・と、僕は気持ちを張り直し、今度は鳳凰刀をこの現実世界に呼び出す。


 やはり胸に愛しさを伴う熱が生じ鳳凰刀が頭を出す。

 そして鳳凰刀がその姿を全て現した時、切なくなるほどの愛しさを感じその鳳凰刀の柄を右手で優しく握り締める。

 その時、背中の神鳥弓が焼き餅を焼くように震えたように思えた。

 そんな、神鳥弓に左手を回し優しく撫でてやる。


 ・・・もう、この子達は可愛くてしょうがないなあ・・・


 なんて僕が思っていると『凰、デレている暇はないと思うが』と鳳に声を掛けられ、『ああ、いけない、そうだった。破壊邪神の聖域も破れたようだし、急がなきゃ』と僕は応え、緩みかけた気持ちに再び喝を入れ「フィーロさん、トーゲンまで転移します」とフィーロさんに声を掛ける。


 「分かった」というフィーロさんの返事を聞くと同時に僕は背中に白銀の大翼を生じさせクロガネの神護の指輪を目標に転移した。


 ・・・まあ、翼が無くても転移は出来るんだけど、向こうの状況によっては威嚇の意味も込めて、あった方がいいよね・・・




 「待たせたね、クロガネ」


 僕が転移したそこは戦場となっていた。


 周りを見渡すと共有庭園の中央辺りにどす黒い穢れの塊のような少年が座禅を組むような姿で、地面に大穴を開けめり込んでいる女性を守るようにその上に浮かんでいる。

 その女性の体からは乱世の狂気が溢れ出していた。


 僕の後ろ斜め下には、東神名国共同管理都市トーゲン執政官屋敷の屋根に脇腹から大量の血を流すクロガネが横たわり、その執政官屋敷の正面玄関近くでは気を失ったキリマルさんがシャイナ教の人たちの治療を受け、共有庭園側でもカクラ母さまに抱きしめられたカナコが治療を受けている。


 『………重傷ではあるけれど、みんな命には別状は無いみたいだ』


 僕が現状を把握した時、僕の内からマグマのような熱が沸き上がってきた。


 『凰、……俺と替われ……』


 静かな語調ではあるがその声には今にでも爆発しそうな怒りがこもっていた。

 当然のことだと思う、何故なら大切に思っている人達の命が不条理にもこの世界のものでは無い力に脅かされていたのだ。

 怒りの感情を持ち合わせていない僕でも不快感で吐きそうになっていたところだった。


 『鳳、先代鳳の血を飲み忘れないでよ』

 『分かっている。早く替われ!』

 『はいはい』


 鳳は僕と体を入れ替えると腰に下げてある巾着袋に手を突っ込み先代鳳の血が凝固した粉を指先に付け、それをペロリと舐めあげる。

 それで、鳳の力の暴走を一分程は抑えられた。


 「ちょうどいい。当代凰よ! 我が元に来て、我が願いを聞き届けよ!」

 「やかましい! 黙れ!」


 僕と鳳が体を入れ替えた時、どす黒い穢れの塊のような少年、破壊邪神が声を掛けてきた。が、鳳が聞く耳を持つはずが無く、一言で斬り捨てる。


 そして、鳳凰刀を破壊邪神に突きつける。


 「己の選択肢は二つだけだ! 今そこにある先代鳳の心臓の欠片を俺に返しこの世から消えるか、俺に消されて心臓の欠片を奪われるかだ!」



(破壊邪神)


 ・・・チッ、取り付く島も無い、か……カーリラーめ、当代鳳凰の身内を傷つけ過ぎたな・・・


 しかも、前もって得ていた情報と違い当代凰は本来の力を取り戻し、鳳は制限付きだが力を振るうことが出来るようだった。


 ・・・ここは、一旦退くしか無いな・・・


 我は即座に撤退を決め、我等の拠点としている旧シグナリア公国へと転移を始める。


 「今は退くとしよう。だが、当代鳳凰よ、この世界を見よ! この世界が守るに値する世界かその目で直に見極めよ!」



シャイン・ほう


 破壊邪神が吐き出していたどす黒い闇が、破壊邪神を中心に急速に縮小する。


 「待て!」


 俺はフィーロの背から飛び出し瞬間的に破壊邪神との間合いを詰める。が、あと一歩と言うところで鳳凰刀は空を切り、破壊邪神の言葉だけが辺りに残った。


 チッ、「逃したか」

 『仕方が無いよ。この手際の良さは、恐らく端っから撤退するつもりでいたんじゃ無いかな。破壊邪神の手下の女性の姿もないし』

 フン、『逃げ足だけは速いな』

 『まあ、何にしても誰も失わずに済んでよかったね』


 凰はこの危機にこの世界で出来た大切な者達を誰一人として失うことが無かった事に安堵しているようだ。

 そして、守り切れたとは言えないが、それでも微力ながらに皆を守れたことを喜んでいるように俺には感じられた。


 『そうだな……そろそろ替われ、先代鳳の血の効き目がそろそろ切れる』

 『ああ、うん、そうだね。皆の治療もしたいし、シルバー大将軍とメフィール皇子の方も気になるしね』


 俺と凰が体を入れ替えた時、「雨だ!」と誰かが叫んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ