第五十参話
カーリラーの「仕方があるまい。・・・・・結界から抜け出す雑魚どもの相手と結界の修復が忙しすぎて我らの存在に気付かなかったのだろうよ」という台詞の後に
「貴様! よくもぬけぬけと言えたものだな! そのアテート様の魔法道具はお前達が戦いを苦手としていたアテート様を死後再誕の能力を使えなくなるまでよってたかって殺しまくって奪ったのだろうが!」
「うっ、それは……」
「違うとは言わさんぞ! アテート様はお前達迫害を受けていた者達を救おうとしていた、お前達にとっては大恩ある方だった筈だ! それをお前達は破壊邪神の力を受け入れて暴走していたとはいえ殺したのだ!」
珍しく怒りを露わにしたキリマルのその言葉にカーリラーは一瞬口ごもった。が、カーリラーはその微笑みをたたえた顔に決意を滲ませ口を開く。
「おう! その通りだ! 我らが望み、我らが悲願のため、アテート様にはその身を破壊邪神様に捧げてもらった!」
という文章を書き足しました。10/21
その当時、この世界で我が父に対等に渡り合えたのは破壊邪神を除いてはゼンオウ様の力を継いでいるエスカーナ様か先代凰様の娘のお二方だけだっただろう。の、お二方をクリスティーン様に変更 10/21
「貴様! よくもぬけぬけと言えたものだな!・・・」を「貴様! よくもわしの前でアテート様の名前を出せたものだな!・・・」に変更しました。10/21
(クロガネ)
私は今、東神名国共同管理都市トーゲン執政官屋敷の屋根に寝転がり満天の星空を見上げていた。
私はシャイン様のご家族であるカクラ達を守るようにシャイン様に頼まれ、執政官屋敷に不審な者が近づかないように見張っている。
シャイン様の頼みだからとはいえ僅かな間でもシャイン様から離れることになって、私は少し拗ねながら星空を見上げていた。
その時、パンッ! と何か破裂するような乾いた音がジャカール帝国共同管理都市トーゲン執政官屋敷から聞こえてきて私は怪訝に思い上体を起こす。
・・・オトノワリニハ、ナンノマリョクモカンジナイ……カトイッテ、ナニカ、モノガコワレルヨウナ、オトデモナカッタ……トスルト・・・
私が先程の音について考えを巡らせていると、不意に空が明るくなったように感じ視線を空に向ける。と、満天に星が降っていた。
それに、私は思わず「ナッ!?」と驚きの声を上げていた。
・・・コレハ、……モシヤ、シンカイノカミノサワリ、カ・・・ハナシニハ、キイタコトガアッタガ・・・
一瞬の事ではあったが、これ程の現象、百年以上生きてきた私でも見たことが無かった。
僅かな時間ではあったが、その現象に私は気を取られ過ぎていた。
その間に、何かが共有庭園から執政官屋敷に近づいてきていた。
私はそれに気付くのが遅れたことに、チッ! と舌打ちをしてソーサリーアームスのブレスレットに妖力を注ぎ長さ一メーター程の妖扇に変化させ屋根の上から壁を覗き込む。
その共有庭園の魔石灯に照らし出される執政官屋敷の壁を影が這い上がってきていた。
ただ、その影は敵意や害意だけでなく気配さえも感じさせず神護の指輪にも反応しない、ただそこに影がある、というだけのものだった。
それに何故、私が気づいたのかというと、一瞬だが私が共有庭園に視線を落とした時その影が他の影とは違う動きをして此方に向かってきているように見えたからだ。
しかし、それは、ただ木が風に揺れその揺れ動く木の影のようにも見え私はそれが何なのか判断しかねていた。
その影が何なのか私が判断を下す前にそいつは影から飛び出していた。
それは夜闇に溶け込みそうな漆黒のフードを被り漆黒のローブを纏って片手に持った湾刀を振りかざしていた。
私は不意を突かれた形となり、相手の一撃目は何とか妖扇で受けたが受けただけで流すことも受けきることも出来ず、後ろに飛んで逃げるしかなかった。が、逃げれば相手の追撃を受け先手を取られるは必定。
案の定、私は相手の猛攻を受け反撃の糸口も掴めない状況に陥っていた。
・・・クッ、コイツ、ツヨイ・・・
相手は右手にもった一本の湾刀を目にも止まらぬ早業で打ち込んでくる。
その一撃一撃が精確で鋭く重い。
その猛攻を私は何とか妖扇で受け流してはいたが、相手がまるで遊んでいるような余裕を持って攻撃をしてきている気がして私は相手のその攻撃を受けながら悔しさと、・・・バカニシテ! コイツニハマケタクナイ!・・・という思いが湧いてくる。
その時、私の感情が揺れたせいか、その一瞬の隙を突かれて腕ごと妖扇を弾き上げられる。
・・・シマッタ! ヤラレル・・・
そう思った時、その黒尽くめの相手は私に止めを刺そうともせず、まるで私が構え直すのを待つかのように間合いを開ける。
その時、フードの闇に隠れてその顔は見えないが、その黒尽くめの相手が私を見下し笑っているように私には思えた。瞬間、カッと頭に血が昇る。
だが、私は、・・・カンジョウテキニナッテハ、カテルモノモ、カテナイ・・・と、相手が待ってくれるのならばと一つ深呼吸をして気持ちを切り替え、黒尽くめの相手に対し妖扇を前に突き出し構えを取る。
「ほう、流石は妖怪人の長ダイテン・グソンの娘、私の挑発に乗らず気持ちを立て直したか」と嬉しそうに地の底から響くような低い声で言ったかと思うと「そうでなくては面白くない」と黒尽くめの相手は湾刀を片手に構える。
私は父の名が出たことに一瞬驚きを感じたが、この強さといい、妖怪人である私に躊躇なく襲いかかってきたことといい、この黒尽くめは間違いなく邪神将、若しくは邪王だろうことは予想できた。ならば、父の事を知っていても不思議ではない。
父、ダイテン・グソンは奴らの要注意人物リストの最上位に入っている筈だからだ。
何故なら父は妖怪人の長であると同時に、神界の神、鳳凰様の従属神であり妖怪人の祖でもあるゴオウ様の力を受け継いでいるのだから。
そんな父の名を出されては不様な闘いは出来ない。
フン!「サッキハ、フイヲツカレタ、ダケダ」
私は、フー……、と息を静かに吐くと右手に持った妖扇を手首を使って軽く振り全開に開く。
閉じた状態で長さ一メーター程あった妖扇は全開に開くと身長百八十センチ程ある私の体を殆んど隠してしまう。
私は妖扇を全開に開くと間髪容れず黒尽くめとの間合いをスッと滑るように一息に詰める。と同時に、開いた妖扇を弧を描くように振るい、扇沿の刃で黒尽くめを切り裂こうとする。
黒尽くめは体を翻しその刃をかわす。
私は扇舞を舞うように開いた妖扇を振るい黒尽くめを追撃するが、黒尽くめは剣舞を舞うように私の攻撃をかわす。そうして、私と黒ずくめは互いに扇舞剣舞を舞いながら攻防の舞闘を繰り広げていた。だが、僅かに揺らいだ黒ずくめの剣舞の隙を突き、私の妖扇が黒尽くめの顔を襲い黒尽くめが体を後ろに仰け反らせ首を左に回してかわした時、その振るった勢いで妖扇を畳み肘を回転させて更に勢いをつけ妖扇の大扇骨で黒尽くめの体を打ち砕かんとする。それを黒尽くめは胸の前で湾刀により受け止めた。が、その湾刀は私の渾身の一撃に砕け散る。私は受け止められた反動を利用して、此方を向いた黒尽くめの眼前で勢いよく妖扇を開く。その一瞬、黒尽くめが僅かに怯んだ。その隙に開いた勢いのまま妖扇を振るい黒尽くめに斬撃を加える。黒尽くめはまた体を翻しその刃をかわす。と同時に、私を蹴り飛ばそうとしたが私はそれを身を低くしながら右足を軸にして体を回しかわす。
その隙に黒尽くめは私との間合いを開けていた。
しかし、今度は先程のように妖扇の刃を完全にはかわしきれていなかった。
黒尽くめの漆黒のローブが大きく切り裂かれ、黒尽くめの体が顕になっていたのだ。
その事に、黒尽くめは「ほおぅ」と驚きとも喜びとも取れるような感嘆の声を漏らしていた。
その顕になった身体に纏う鎧は漆黒のローブよりも黒く禍々しく、そして、革のような柔らかさと金属のような光沢をもっていた。
その身体にピッタリとしたどす黒い鎧は胸や腰に当たる部分は豊満でありながら引き締まった柔らかな女性らしい曲線を描いていた。
そのローブの裂け目から顕になったのはその体だけではなく、その裂け目からは禍々しくどす黒い穢れ、乱世の狂気も溢れ出していた。と同時に、神護の指輪が激しい反応を示す。
・・・イマサラ、ハンノウサレテモ・・・
私は神護の指輪に軽くツッコミを入れる。
・・・オソラク、アノローブ二、トクシュナマホウケッカイガ、ホドコサレテイタノダロウガ・・・
私は戦闘体勢を取ったまま油断なく黒尽くめを見る。
「キサマ、オンナ、ダッタノカ」
・・・・
「この戦いの中で最初の問い掛けがそれか……この格好でいると、この声のせいもあってか、よく男と間違われる。二千百数十年前の獣人のこそ泥にも男と間違われた」
私の問い掛けに黒尽くめは肩を落としたように私には見えた。
「オマエガ、ジャシンショウ、モシクハ、ジャオウデアルコトハワカッテイル」
私がそう言うと黒尽くめは手に持った折れた湾刀を捨て、私に切り裂かれた漆黒のローブを脱ぎ捨てる。
「如何にも! 我は邪王が一人、修羅族が王、カーリラー・アーシュラである!」
その黒尽くめは半分不貞腐れたような態度で名を名乗った。
そこには三面六臂の異容の姿があった。
その顔は三面とも美しい瓜実顔をしているが、表情がそれぞれに違う。一つは憤怒と哀しみを表す般若のような表情、一つは喜びと楽しみを表す微笑みの表情、そして最後の一つは何の感情も表さない能面のような表情をしている。
その内の話をしている微笑みの表情を浮かべた顔以外の顔は目を瞑っている。
その闇のような黒髪は団子のように纏められ頭頂部に乗っている。
二本三組の腕は一組を除いては胸の前で腕を組んでいた。
「しかし、我の刀を叩き折るとは、流石、ダイテンの娘。ならば、我もほんの少し本気を出してやろう」
カーリラーはそう言うと、腰に下げた六本の湾刀の内の二本を引き抜く。
その湾刀は先程までのものと違い、その刃はどす黒く光り一目で禍々しい力を秘めているのが見てとれた。
「では、三回戦といこうか……」
そう言うが早いか、その微笑みをたたえた顔の笑みを凄みのある笑みに変えカーリラーは防御をする気の無いような体勢のまま初動の分かりにくい動きで瞬間に私との間合いを詰める。が、私はカーリラーの動きを読み、カーリラーが私との間合いを詰め斬撃の体勢に入る瞬間、前に半歩出てカーリラーの目の前で妖扇を瞬間的に開きカーリラーの視界を塞ぐ。間髪容れず更に踏み込んで体勢を低くしながら妖扇を振るいカーリラーに斬撃を食らわせる。が、それはカーリラーも読んでいたようで妖扇を左手に持った湾刀で受け流し、体を回転させ右手で持った湾刀で私の首を狙う。私は受け流された妖扇の勢いを利用して妖扇を畳み後ろの首元に持っていきカーリラーの湾刀を受け流しながら体を回転させ、カーリラーに向き直った時、カーリラーの左の湾刀が私の脳天を右の湾刀が私の右脇腹に両断しようと襲いかかってくる。のを、半歩踏み込み相手の湾刀の勢いがつく前に右手に持った妖扇で右脇腹を襲う湾刀を受け左手で相手の湾刀を持つ左手を受ける。と同時に、相手がその左手の湾刀を降り下ろす力を利用して、その相手の左手を捻りながら引きカーリラーの右側に回り込みことによりカーリラーの体勢を崩し投げを放ち屋根から地面に叩きつけようとする。が、カーリラーは空中で私の手を払い除け屋根の上に着地すると同時に、また私との間合いを一気に詰め、再び私との攻防を繰り広げる。
そうして私はカーリラーとギリギリの攻防を繰り広げていた。が、やはり私にはカーリラーが遊んでいるようにしか見えなかった。
・・・クヤシイガ、ワタシニタイシテ、クンダママデイル、二ホン二クミノウデブンハ、ヨユウヲモッテタタカッテイル・・・
私が悔しさを感じながらカーリラーと刃を交えていると、「クロガネ、横に飛べ!」というカンザブロウの声が後ろから聞こえ私は反射的に右に飛び後ろを横目で確認する。と、カンザブロウがマジックアームスのブレスレットを変化させた大剣を巨大化させながらカーリラーに降り下ろすところだった。
「雑魚が! 邪魔をするな!」
そう言うなり、カーリラーは口を大きく開きカンザブロウに対して、カッ! と光線を吐く。
そのカーリラーの攻撃にカンザブロウは為すすべなく撃ち抜かれる。と、私が思ったその時、カンザブロウの体は虹色の光に覆われ、その虹色の光に守られながらカーリラーの光線に、ドンッ! と弾き飛ばされていった。
私がカンザブロウを守った力の源である共有庭園の方に目を向けるとアジーナやサーシャ、エルフ達がシャイナ教大神殿から出て執政官屋敷に集まって来ていた。
気づかぬ間にカクラ達を守る東神名国の近衛の者達も屋根に上がって来ていた。
・・・マア、コレダケ、セイダイニ、ランセノキョウキヲマキチラセバ、ダレダッテキガツクカ・・・
「雑魚共が集まってきたな。……火の神の力の強いコンスー河のせいで私の体が吐き出す乱世の狂気も直ぐに浄化され肌もピりビリする。遊びはここまでにしておくか」
そう言いながら、微笑みの表情から能面のような表情に替わったカーリラーは先程までとは比べ物にならない程のスピードで私に襲いかかってくる。
(オーマン)
・・・此方に害が無ければ、このまま傍観していてもいいが・・・そういう訳にもいかんか……停戦反対派の者達が言っていた外部の協力者というのがあれだとしたら、あれをこのトーゲンに引き入れたのは、此方だということになる・・・
この騒ぎにシャイナ教も気付いたようで、大神殿からエルフ達が出てきて騒いでいる。
・・・今、シャイナ教大神殿に聖騎士達はいない……ということは、シャイナ教で今戦えるのはアジーナ大神官とその娘で光の神子様付きの神官、サーシャだけか・・・
そう考えていると、東神名国の執政官屋敷にも動きが見られた。
執政官屋敷の屋根の上に兵達が姿を現し始めたのだ。
・・・しかし、誰もこの戦闘に割り込めないでいるようだな……まあ、これ程の戦闘に割り込もうというのは、八守天でもない限り無理だろう……だが、少しでも動きが止まれば、この特殊弾であのどす黒い靄を纏っている奴の頭を弾いてやれるんだがな・・・
そう俺が思っていると奴を狙って何だか巨大化する大剣を降り下ろす者がいた。が、逆に何らかの魔法による光線で吹き飛ばされていた。
その時、どす黒い靄を纏っている奴の動きが一瞬止まったがタイミングが合わず引き金を引けなかった。
・・・くそ! 誰か奴をその場に釘付けにしてくれ・・・
そう思っていると、照準器を覗いていない方の目の端にこのトーゲンで一番背の高い建物であるシャイナ教大神殿の屋根を蹴って東神名国の屋根に向かって凄い勢いで飛び降りる影が入った。
その影は確実にどす黒い靄を纏っている奴に狙いを定めていると感じ、俺はその影の落下位置とどす黒い靄を纏っている奴の動きを見てぶつかり合うだろう位置を予測して照準を合わせた。
その数瞬後、・・・オラ来たっ!!・・・と俺は引き金を引いていた。
俺が引き金を引くと同時に炎雷鎚は火を噴き金色に輝く特殊弾、魔装弾が撃ち出される。
撃ち出された魔装弾は数瞬の間もなくどす黒い靄を纏っている奴の頭を貫こうと、金色の光線となる。
恐らくどんな魔法結界でも撃ち貫くだろう、と思われるほどの力がその魔装弾には込められていた。
俺は金色の魔装弾がどす黒い靄を纏っている奴の頭を『貫いた』と思った。直後、余のことに「うっそーん!」と間の抜けた声を無意識に上げていた。
(クロガネ)
私とカーリラーは再び扇舞や剣舞を舞うように刃を交え始めた。が、私は確実にカーリラーに圧され追い詰められていた。
・・・クッ、コノママデハ・・・
私はカーリラーの湾刀を何とか受け流してはいるが、攻撃に出るどころか、カーリラーの動きが更に早く鋭くなり受け流すにも限界に来ていた。
その時、ギャリン! と私の妖扇がカーリラーの湾刀に大きく弾き飛ばされ、私は・・・ヤラレル!・・・と今度こそ想った。と同時に、何か大きな黒い影がカーリラーに向かって空から突っ込んで来るのが目の端に映った。
それをカーリラーは咄嗟に組んでいた二組の腕を解き、その内の二本目の右手で三本目の湾刀を引き抜きその影に向けて斬撃を放つ。と、ガキキン!! と刃がぶつかり合うけたたましい金属音が響き、カーリラーは三本目の右腕を伸ばし斬撃を放った湾刀の峰を押さえる。
その一瞬の私に対する隙により私は妖扇を戻し防御に構えることができ、私に放たれていた二本の湾刀を何とかうけとめていた。
カカカカ、「久しいな! キリマル!」
瞬間的に私に向いている能面のような顔の目が半分閉じられキリマルの方を向いている微笑みをたたえた顔の目が開いていた。
その視線の先には、双刀の滅斬刀での斬撃をカーリラーの湾刀での斬撃に受け止められたキリマルの姿があった。
私は妖扇で受け止めたどす黒い湾刀を何とか弾き返しカーリラーから距離を取る。
「おう! 全くだ! まさか、ガルーだけでなく邪王の中でも最強と言われていたお前までも結界から抜け出してきていたとはな。いったいエスカーナ殿は何をしていたのか?」
カカカ、「仕方があるまい。何せ我とガルーはアテート様のシャドウのローブとイルのネックレスを持っていたのだからな。ゼンオウ様の力を受け継いでいるエスカーナとはいえども結界から抜け出す雑魚どもの相手と結界の修復が忙しすぎて我らの存在に気付かなかったのだろうよ」
「貴様! よくもわしの前でアテート様の名前を出せたものだな! そのアテート様の魔法道具は、お前達が戦いを苦手としていたアテート様を死後再誕の能力も使えなくなるまでよってたかって殺しまくって奪ったのだろうが!」
「うっ、それは……」
「違うとは言わさんぞ! アテート様はお前達迫害を受けていた者達を救おうとしていた、お前達にとっては大恩ある方だった筈だ! それをお前達は破壊邪神の力を受け入れて暴走していたとはいえ殺したのだ!」
珍しく怒りをあ露わにしたキリマルのその言葉にカーリラーは一瞬口ごもった。が、カーリラーはその微笑みをたたえた顔に決意を滲ませ口を開く。
「おう! その通りだ! 我らが望み、我らが悲願のため、アテート様にはその身を破壊邪神様に捧げてもらった!」
そう言いながら、カーリラーはどす黒い湾刀で撃ち合わせた双刀の滅斬刀をキリマルごと力任せに振り飛ばす。だが、キリマルはその力を受け流しカーリラーから少し離れた執政官屋敷の屋根に軽く降り立つ。と、その時、ジャカール帝国のトーゲン執政官屋敷の方で、ドンッ! という音かしたと思った時、そのジャカール帝国のトーゲン執政官屋敷から高速で飛来して来たものをカーリラーは二本目の左手で引き抜いた四本目のどす黒い湾刀で受け止めていた。
その飛来したものは、オーマンが私の腹を撃った物と同じ大きさの、弾丸径が十三ミリほどある弾丸だった。
ただ、違うのはその弾丸には【強化】【回転】【加速】【突貫】の魔法印が施されているようで、私の時の弾丸よりも遙かに威力があった。のだが、「ふんっ!」というカーリラーの気合いと共にその弾丸は両断されその破片が執政官屋敷の屋根に大穴を開けただけだった。
その時、ジャカール帝国共同管理都市トーゲン執政官屋敷の方から「うっそーん!」という間の抜けた声が私には聞こえた気がした。
・・・コノ、バケモノメ・・・と、私が思っていると、少し離れたところにいるキリマルが私の気持ちを察したのか声を掛けてきた。
「クロガネ、あの化け物は個人的にお前の父親ダイテン・グソン殿に戦いを挑み怒り面の片目をそのダイテン殿に潰されたのだそうだ。しかもダイテン殿はその時ゴオウ様の力は使わなかったらしい」
キリマルが何を言いたかったのか私には今一理解できなかった。が、何時ものキリマルに戻っているようだった。
その当時、少数種族だった修羅族は、闘争を好みその気性の荒さから他種族に意味嫌われていたという。
その為か、二千百数十年前に滅ぼされた、と聞いたことがあった。
闘争を好むという種族ならば、強者に挑みかかる、というのも分からなくもない。
・・・ダカラトイッテ、ワガチチ、ダイテン・グソンニイドムナド、ムボウニモホドガアル・・・
その当時、この世界で我が父に対等に渡り合えたのは破壊邪神を除いてはゼンオウ様の力を継いでいるエスカーナ様か先代凰様の娘のクリスティーン様だけだっただろう。
「なんにしても、クロガネ、カーリラー相手に一人でよく持ちこたえてくれたな」
「……ショウジキナハナシ、モウスコシ、キリマルガクルノガオソケレバヤラレテイタ」
「わしとお前、こいつ相手に二人がかりでも、ちとキツイかもしれん。……もう一人、八守天レベルの者がいればなんとかなったかもしれんが……」
「イナイモノヲホッシテモ、シカタガアルマイ」
「まあ、そうなのだがな……」
私とキリマルは腹を括り、カーリラーに対して構えを取る。
対して、カーリラーは微笑みをたたえた顔で周りを確認すると、「ふむ、少し遊びが過ぎたか……」と独り言を呟き、「キリマル、久しぶりにお前とも剣を交えたかったが、我にも務めがある」と言うが早いかカーリラーの五つの目が全て開かれた。と思った時、微笑みを浮かべた顔と能面のような顔の口が大きく開かれ、微笑みを浮かべた顔の口からはカンザブロウに放たれたものより数段上の魔力が込められた光線がキリマルに対して放たれ、能面のような顔の口からはこの世の全てのものを凍り付かせるような凍結光線を私に対して放つ。
キリマルはその光線を双刀の滅斬刀で受け流し、私は妖扇で弾きながら体勢を低くしてカーリラーとの間合いを詰めようとするがその時には既にカーリラーは私たちに対して四本のどす黒い湾刀により複数の強力な魔力を纏った斬撃を放っていた。
それをキリマルと私は双刀の滅斬刀と妖扇で幾つかは打ち消したが、足下に放たれた数発の斬撃で足下の屋根を崩されてキリマルと私は為す術なく屋根下の部屋へと落とされる。と同時に、カーリラーが屋根から共有庭園へと飛び降りるのが見えた。
・・・チィ、ヤラレタ……オソラク、カーリラーノネライハ、カクラカ、オズヌダ・・・
長くなってしまいそうだったので途中で切ったのですが、なんだか途中書きになってしまいました。すみません。




