第四十弐話
キリマルの第一人称を〈俺〉→〈わし〉に修正しました。
他にも複数個所修正しました。
メフィール皇子視点の文章の一部を削除しました。5/30
シャイナ教神殿をシャイナ教大神殿に変更しました。1/14
(メフィール皇子)
「フィーロ、光の神子をどう思う?」
私はジャカール帝国の共同管理都市トーゲン執政官屋敷の二階にある私に割り当てられた部屋に入ると、後ろに付いてきたフィーロに声を掛けた。
フィーロは顔に巻いた布を外し、純白の体毛に虎縞模様の美しい虎顔を表に出しながら私の問い掛けに答える。
「そうだな……あの方は間違いなく鳳凰様の転生体だ。あのエルフが言っていた通り鳳凰様の幼鳥だ。だが、お前の希望を叶えて下さる力はお持ちだろう」
「うむ、そうか……ならば、予定通り事を進めても問題は無いという事だな」
この乳姉弟で私の側付きであるフィーロは物心付いたときから誰に対しても、我が父である皇帝陛下に対してさえ尊大な態度を取ってきた。
だが、それを咎める事は誰一人、皇帝陛下でさえも出来なかった。
それもその筈だ、今は力を抑えているがフィーロは天人であり、例え皇帝陛下であっても人の身からしてみれば、天の神子のように人の身をやめてしまった者でもなければ、神にも等しい存在だと言っても過言では無い。
フィーロがその存在を誇示すれば、我が父、ジャカール帝国皇帝でさえも膝を屈するだろう。
・・・しかし、幼鳥でありながら間違いなく光の神子はその上を行く・・・フィーロと同じように力を抑えているようだったが、それでもあの神々しさだ。まあ、フィーロの他者を組み伏せ抑圧する様なものとは違いとても心地の良い優しさを感じたが・・・
フィーロは見た目、私と同い年だが実は成体の天人だ。
天人が天の神子候補を探す為に地上に降りるには条件があり、その条件と言うのが自らの体を赤子に戻すというものらしい。
それは、人の社会に溶け込み人の考えや価値観を知り、その中でこの世界を良き方向へ導く力を持つ者を見つけ出す為だと言う。
・・・フィーロの場合、選んだ相手がたまたま乳姉弟だったというだけだ・・・
そして、地上に降りる時に天人としての力を封じるか封じないかはその天人の意思に任されていると言うことだった。
フィーロはその天人としての力を封じずに地上へ降りてきたのだ。
・・・まあ、フィーロに言わせれば、我が選んだ天の神子候補が命の危険に際したとき、その天の神子候補を守る力が無ければ我が側に居る意味が無い、ということらしいが……まあ、私は天の神子という堅苦しい地位には全く興味は無いのだがな・・・
(凰)
僕がシャイナ教大神殿に入ると、神殿で祈りを捧げている人達の戦争による悲しみと平和を求める想いと感情を強く感じる。
ただ、僕に直接向けられた想いや感情では無いためシーガルで感じたもの程、僕に迫り寄り苦しめるものでは無かった。
僕はその想いと感情を感じながらサーシャが準備しておいてくれた木浴場で体を清める。
その時、人々の想いと感情が感謝の気持ちに変わったのを感じながら、サーシャが暴走しそうになるのを押さえつつ、湯船に気持ち良く体を沈めた。
木浴場から出ると僕とサーシャは軽く昼食を摂り体を休めるように暫らくの間部屋でのんびりとしていた。
・・・僕は別に疲れてもいないのだけれど、砂漠を無理に渡って来たんだ妖精種とはいえサーシャは休ませてあげないと・・・
サーシャは最初の内、僕を置いて休む事を拒否していたが、僕が肩を貸すと言ったら途端に僕の隣に嬉しそうに座り僕の肩に頭を預けて寝息をたて始めた。
『全く、現金なものだな』
『でも、可愛らしいじゃない』
『まあ、それは否定はせんがな』
僕達は共有庭園を一望出来る神殿の三階にある広いベランダの付いた部屋の長椅子に腰掛けて、爽やかな風に体を委ねるようにして身を置いている。
僕は僕の白銀の髪や、僕の着るエルフの薄衣で戯れる精霊達を手で弄びつつ、僕の肩で気持ち良さそうに寝息を立てているサーシャの風に揺れる綺麗な新緑色の髪を優しく撫でる。
そんな、ゆったりとした時間がゆっくりと流れてゆく。
そんな中、日が傾き始めた頃、「んっ」と、サーシャは軽く呻いて身動ぎしたかと思うと、ゆっくりと瞼を開けた。
「おはよ、サーシャ。よく眠れた?」
僕がそう聞くとサーシャはそのスカイブルーの瞳の寝惚け眼を瞬間にして軽く見開かせ、「あっ」と、その可愛らしく瑞々しい桃色の唇から声を漏らした。かと思うと、その白い肌の頬を紅に染め恥ずかしそうに俯き、そして、「あの、その、シャイン様。あまり寝顔を見ないで下さい」と、体をモジモジとさせ恥ずかしそうに小声で言う。
『えー、僕の肩を借りておいて今更そんな事言う?』
『まあ、サーシャも女の子だからな』
『肩を借りるのはいいけれど、寝顔は見られたくないと?』
『まあ、それが女心と言うものなのだろう』
『女心は僕にはよく分かんない』
『一応お前も女の子なのだがな』
『僕は長年男の子をやってきたから、女心なんて分かんないよ』
僕は大きく息を吐くと、いまだに恥ずかしそうにしているサーシャに声を掛ける。
「それじゃあ、ちょっと外に出る準備をしようか」と。
僕は今、純白の聖衣の上に純白のマントフードではなく、ジャカール帝国皇帝直轄領バルスにある港湾都市シーガルでクロガネに買ってきて貰った灰色のマントフードにその身を包んでいる。
その灰色のマントフードの内にはフードの外に顔を出しても僕の力が外に漏れないように聖衣に施したものよりも強力な神印が施してある。
一見、普通の旅行者のような姿をした僕は、同じく灰色のマントフードに身を包んだサーシャの手を引いて共同管理都市トーゲンの賑やかな街並みを歩いていく。
その後ろには、同じく灰色のマントフードに身を包んだクロガネが付いてきていた。
「シャイン様お待ちください! もう神殿に戻りましょう」
「サーシャ、何言ってるの、まだ出てきたばかりじゃないか」
「砂漠での一件もあります。あまり外を出歩かれるのは危険です。きっとお母様、いえ大神官様も心配しておられます」
サーシャは僕の手を繋いだまま立ち止まる。
「大丈夫だよ。クロガネもいるし、サーシャだって何かあれば僕の事守ってくれるでしょ?」
そう言って僕は悪戯っぽく笑う。
「それは勿論、そうですが……」
「それに、キチンとシャリーナ姉さまに言付けてきたし、アジーナおばさまには後で僕がサーシャに無理を言って外に出たと言っておくからさ」
シャリーナ姉さまも誘ったのだが、「私は止めておきましょう。私は少なからずジャカール帝国の者達に恨まれていますから」と、断られてしまった。
サーシャは諦めたように一つ息を吐くと、「分かりました。そうとなれば、とことん楽しみましょう」と、笑顔で言う。
「うん、そう来なくっちゃ」
「では、先ずは屋台巡りからですか?」
「うん、いいね、そうしよう」
僕達は熱気を孕んだ大通りの人混みを縫うように歩き、その大通りに立ち並ぶ屋台を見て回る。
綿菓子、たこ焼き、フランクフルト、リンゴ飴等、僕が前の世界で見慣れた食べ物に似た物や見たことの無い食べ物等多種多様な食べ物を売る屋台が所狭しと並んでいる。
後ろから付いてくるクロガネに見守られながら、それらを買い食いしサーシャと手を繋ぎ楽しく喋りながら歩いていく。
楽しい時間は過ぎるのが早く、気が付いたときには街灯や装飾に仕込まれた魔法石に灯が点り始め、大通りを処狭しと彩る装飾にその光が当たり反射したり淡く拡散したりして、その光を色彩豊かに彩り辺りを幻想的に照らし出し始める。すると、周りからワァッと感嘆の声が沸き起こった。
「なかなか、幻想的な光景ですね」
隣に立つサーシャは感心したように呟いていた。
その光景に多少は興奮しているのか僕の手を握るサーシャの手に無意識なのだろう力が僅かに入っている。
「よう、久しぶり、シャイン」
僕は突然声を掛けられ、その声のした方へ目を向ける。
そこには冒険者風の姿をした二人の人物が立っていた。
一人は頭にバンダナを巻き緑黄色の髪の毛から尖った耳を覗かせ新緑色の瞳を嬉しそうに細めるハーフエルフのカルハンさんと、もう一人は人属で金髪碧眼の金髪を角刈りにしたカウラスさんが立っていた。
「カルハンさん、カウラスさん、久しぶり。元気でしたか?」
「おう、お陰とな、サーシャとクロガネも久しぶりだな」
そう声を掛けられ、フードの中でサーシャは僅かに残念そうな表情をした後、笑顔をつくって「ええ、カルハンさんもお元気そうで何よりです」と応えた。
クロガネはフードを被ったまま僅かに頷いただけだった。
「カルハンさん達は、やはり商売でトーゲンに?」
「ああ、こういう時は商人にとっては儲け時だし、こういう所では、大口の商談なんかも入りやすいからな」
「そうなんだ」
カルハンさんは僕達に一通り挨拶をし終えると、申し訳なさそうな表情をした。
「すまん、シャイン。カリンをここに連れてくることが出来なかった。ただ、今、カリンが師事している人物は私の師匠で凄い人なんだ。だから、カリンの事は心配しなくていい」
「……分かってます。カリン姉さまは自分の意思でその人に付いていったのでしょう。しかも、その人はクリスティーン婆さまの息子さんですよね」
「な、何だ、知っていたのか」
「はい、凰の加護を受けている人達の位置や周囲の状況は乱世の狂気の邪気邪念の濃い所にでもいない限り、その人達の事を考えるだけで僕には手に取るように分かりますから。それにクリスティーン婆さまから息子さんの事は聞いてたし、第一僕はカリン姉さまの事を信じていますから」
「……そう、なんだ」
僕の話を聞いて何か覚悟をしていたのを肩透かしでも受けたようにカルハンさんは肩の力が抜けてビミョーな笑顔になる。
「カルハン、カクラも言っていただろう。シャインがカリンの事を知らないでいる筈がないと、それでシャインが何の行動も起こしていないならカリンを信じて見守っているのだろう、と」
「あ、ああ、そういえば、そんな事言ってたな」
「よし、シャインが怒っていない事が分かって安心したな、安心したなら本題に入れ」
『ああ、カルハンさん、僕がカリン姉さまの事で怒っているんじゃないかとでも思ってたのかな』
『……数年前に比べると随分と可愛らしくなったもんだな』
『そうだね、あの頃はずっと負の感情を抱え込んでいたからね』
『それもそうだが、人間種でも妖精種でも人は恋をすれば色々と変わるものだな』
『…………うん、そうだね』
カウラスさんに本題に入るように促されカルハンさんは気を取り直すように大きく深呼吸をすると、「実はシャイン、お前達を迎えに来たんだ」と笑顔で言う。
カルハンさん達は詳しいことは言わず僕達を連れて、大通りから路地裏程では無いが少し狭い道へと入っていった。
その道にも人通りはあるが歩くのに邪魔になる程では無かった。
その道を・・・う~ん、何処に行くんだろう・・・と僕は思いながらカルハンさん達に付いていく。
そして、小さな交差点を二三度曲がって少し行った所でカルハンさんは〈ベラ〉という木製の看板が掛かった扉を押し開く、するとドンチャン騒ぎをする人達の声が聞こえてきた。
その時、「よう、シャイン、サーシャ、クロガネ、久しぶりだな」と、懐かしい声が僕に投げかけられ、僕はそちらに視線を向けた。
そこには歌舞伎者のような姿をした黒髪黒眼の人物が座っていた。
その人物は白髪混じりのボサボサの頭にチョンマゲを立て無精髭を生やした相変わらずな姿をしたキリマルさんだった。
「キリマルさん、お久しぶりです」
「お久しぶりです、キリマル様」
「…………」
「おう、三人とも元気そうで何よりだ」
「はい、キリマルさんも」
僕達はキリマルさんに気付き笑顔で挨拶を交わす。
「もう始めちまったのかよ、堪え性のない奴らだな」
「だって、しょうがないじゃねーか。商隊長達はシャインを迎えに行くといったまんま、待てど暮らせど戻ってこねーんだから」
ドンチャン騒ぎをしていた商隊員の一人がカルハンさんに反論すると、「ああ、悪かった悪かった」と、カルハンさんは溜息を吐くように返した。
そして、気を取り直すように僕に向き直るとカルハンさんは口を開く。
「ここは私の知り合いの商人が開いた隠れ家的な店でな。今日、私達の貸切にしてある。シャインはカクラ達と神殿や執政官屋敷では気軽に家族として接することも出来ないだろうと思ってな、ここに皆を呼んである。その内、カクラやカンザブロウ達も来る筈だ」
「ありがとう、カルハンさん。確かに公の場所では立場的に気安く母さま達と会うわけにもいきませんから、感謝します」
カルハンさんは僕の感謝の言葉と笑顔を受けて、頬を赤らめながらも嬉しそうに微笑み返してくれた。
今日の朝、母さま達と家族として会うことは出来たが、それでも周囲に気を遣わずに会えていた訳ではない。
一年間開いていた家族の距離を埋めるように話はしていたが、ジャカール帝国の者達に警戒されない程度の距離はそれなりに空けていたのだ。
「商隊長もシャイン達も、立ち話なんかしてないでこっちに来て座れよ」
僕はサーシャとクロガネを連れて商隊員の人達に誘われるようにキリマルさんの座るテーブルの空いた席に向かおうと、ふとキリマルさんに視線を戻したときキリマルさんの隣に真っ黒な体毛で豹顔の獣人が座っていることに気が付いた。
僕はフードを脱いでキリマルさんの左隣に一つ席を空けて座りながら「あれ? オーマン近衛少将?」とその獣人に声を掛ける。
その獣人は、僕に声を掛けられて口に付けていた木製の大きなマグカップから口を離して、僕の方に視線をやり「お? 光の神子様?!」と、驚きの声を上げると共に驚きに目を見開き固まった。
「ああ、そう言えばオーマンはシャイン達の護衛兼案内役の任務に付いていたんだったな……って、あ~あ、シャインの顔を直視したな。あれ? そういえばシャイン、力を感じないがその服に封印でも施してあるのか?」
「うん、力が漏れないようにしないと大騒ぎになるから……それよりも、キリマルさんとオーマン近衛少将は知り合いだったんですか?」
「おう、半年前からの酒飲み友達だな」
「ああ、そうなんだ……」
『なんだかこの二人、会えば気が合うんじゃないかと思っていたが……』
『うん、案の定気が合ってたみたいだね』
「でも何でオーマン近衛少将をここに?」
「ああ、心配は無い。何があっても、こいつは絶対にこの停戦を御破算にするような奴じゃない。それに、カクラ達の人となりを知りたいと言っていたからな。俺が説明するよりも、実際に素のカクラ達を見せた方が早いだろう。それで連れてきた」
「そうですか……分かりました。キリマルさんの人を見る目は間違い無いでしょうから。キリマルさんを信じましょう」
「ワタシハ、ソイツヲシンジラレナイ」
「クロガネ、話は聞いている。何かあれば、わしが何とかする、こいつを信じられないと言うなら、わしを信じてくれ」
何時に無く真剣な表情のキリマルさんを見て、「……ワカッタ」と、クロガネは了承した。
僕は運ばれてきた柑橘系のジュースでチビリチビリと口を潤しながらキリマルさんや周りのカルハン武装商隊の人達と会話を楽しむ。
それから、暫らくするとオーマン近衛少将は我に返り、「お、あ、ひ、光の神子様! お、俺は今休養期間なので、そん、えっと、役職名を付けずにお呼び下さい!」と、声を裏返し視線を右往左往させながら言う。
そんなオーマン近衛少将の姿を見て僕は可笑しくなり噴出しそうになるのを耐えながら、「それなら僕の事もシャインと呼んでください、オーマンさん」と、笑顔を返した。
それを見たオーマンさんはそのゴツイ獣人の体を恥ずかしそうに縮こまらせながら俯いて、「……はい」と、小声で応える。
それを見た周りの人達は耐え切れず、ドッと笑い出しそのオーマンさんを元気付けるように背中を叩きまくっていた。
僕には真っ黒な体毛で見えない地肌をオーマンさんが気恥ずかしさに真っ赤にしている様に見えた。
カカカカ、「お前がそんなにウブだとは知らなかったぞ!」
「う、うるさい……こんな絶世の美少女、見たことが無いんだから仕方が無かろう」
カカカカ、「然もありなん然もありなん」
キリマルさんが悪戯が成功した時の悪餓鬼のように喜んでいると突然耳を誰かに捻じり上げられ「いててててっ!」と痛がり、その背後から「なーにが然もありなんですか!」と怒気を含んだ声が聞こえてきた。
「全く貴方は! 朝から姿が見えないと思っていたら、またオーマンさんと昼真っからお酒を飲んでいたんですね!」
「いたたたたっ! 耳が、耳が千切れる!」
「もう! 今日と言う今日は許しませんよ! 貴方!」
「まあまあ、カナコ、許してあげなさい。キリマルも私達の事を思って色々と動いてくれているのでしょう……きっと」
「カクラ殿、そこはもちっと自信を持って言ってはくれまいか?」
カクラ母さまの言葉が自信なさげに尻窄みになったのを聞いてキリマルは哀願を籠めて言う。
「はいはい、あなた達はあなた達で家族の親愛の情を深めていて下さい。私達は私達で家族の親愛の情を深めていますから」
そう言うと母さまはオーマンさんに向き直りいい笑顔を見せる。
「オーマン殿、暫くの間、耳と目を閉じていてもらえますか? 出来れば鼻も」
アハハハ、「カクラ様は面白い事を言われる……」
オーマンさんの返事を聞くと母さまの笑顔に凄みが加わる。
「……分かりました。暫くの間、表に出ています。家族の親愛の情を深め終わったら呼んでください」
「はいはい、分かってますよ」
「絶対ですよ……絶対ですからね」
オーマンさんが念をおす度にカクラ母さまの笑顔に、早く行け! というように凄みが増していく。
それを見たオーマンさんはそそくさとお店を出ていった。
「さあ、邪魔者は出ていきました。シャイン、一年ぶりに再会した私の可愛い娘を抱き締めさせて」
僕は母さまに応え、席を立ち上がると両腕を広げる浴衣姿の母さまに近づき体を母さまに甘えるように密着させて手を母さまの背中に回した。
そんな僕を母さまは愛しそうに抱き締めてくれる。
「シャイン、また大きくなったわね」
「……うん、育ち盛りだから」
「そうね」
カクラ母さまは僕を抱き締めながら愛しそうに頭を撫でてくれる。
その後、母さまは僕を抱き締めその成長を確認出来た事に満足すると微笑みながら僕から体を離し、オズヌを抱いて隣に立っているカンザブロウ父さまからオズヌを受け取る。
浴衣姿のカンザブロウ父は僕に近づくと力強く僕を抱き締める。
僕はそんな父さまに応えるように体を父さまにすり寄せ父さまの体を抱き返す。
カンザブロウ父さまは二回ほど僕の背中を優しく叩くと直ぐに体を離した。
その顔は少し照れ臭そうな表情をしていた。
それから僕は、次は僕の番、というようにカクラ母さまの腕の中から「しゃーねーたま、しゃーねーたま」と僕の方に身を乗り出すオズヌをカクラ母さまから受け取り、オズヌをギュッと抱き締める。と、キャッキャキャッキャとオズヌは嬉しそうに声を上げる。
そんなオズヌをあやしながら、横目でキリマルさん達の方を見ると、キリマルさんは正座させられミーナを抱いたカナコに説教されていた。
・・・うん、これも愛情の形なんだろう・・・
僕はそう思うことにした。
そうやって、たっふぷりと一時ほど僕達が家族の愛情を深めあった後、僕はオーマンさんはお店の中へと招き入れようとお店の外に顔を出した。




