第四十壱話
カクラの挨拶に、東神名国国主の妹、神名カクラと申します、と言う言葉を足しました。
火の神の話しの所に、メフィール皇子は僕に対して嬉しそうに感謝の言葉を述べる、という言葉を足しました。
文章を書き足しました。
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オズヌは綺麗な銀髪に子供らしい大きな瞳は明るい藍色をした将来間違いなくハンサムになるだろうと思われる愛らしい顔の僕の弟だ。
ミーナは綺麗な緑色の髪だが前髪の一房が黒髪になっている、その緑色の髪から母親似の尖った耳がチョコンと顔を覗かせていた、大きな瞳は澄んだ黄緑色で、こちらは、将来間違いなく別嬪さんになるだろうと思われる可愛らしい顔をしたカナコとキリマルさんの娘だ。
(凰)
僕達が東屋に近付くとそこにいる人達の表情もハッキリと見えてくる。
『カンザブロウ父さま、カクラ母さまやカナコも元気そうで良かった。あ、オズヌとミーナも居るんだ。大きくなったねー、別れてまだ一年しか経ってないのに』
『ああ、そうだな……キリマルの姿が見えんが……まあ、仕事以外の時に、こんな堅苦しい所でじっとしていられるような奴じゃないか』
あはは、『そうだね』
僕は一年ぶりに合うカクラ母さま達の姿を見て心が浮き立ち自然と頬が緩む。
僕は駆け出したい気持ちを抑えて、東屋に到着する前にベールとフードを外し顔を表に出した。すると、日本庭園を模したような共有庭園に静かに流れる柔らかな風に優しく頬を撫でられ、その気持ちよさに僕は目を細める。と同時に、「うわっ!」と、僕は小さく叫んでいた。周囲から多種多様な精霊が僕の顔めがけて飛びついてきたためだ。砂漠では寄ってくるのは風と火の精霊くらいのものだったが、ここは隠者の里ほどでは無いが、これだけ緑が多いとそれなりに精霊の数も種類もいるようだ。
僕は目の前に飛びついてきた精霊を手で優しく退けてカクラ母さま達の方を見る。その時、カクラ母さま達以外の人達が一瞬驚いて身動ぎしたように見えた。が、流石はそれぞれの国でそれなりの地位にある者達と言ったところか、その驚きは一瞬だけだった。なので僕は気にしないことにする。
・・・この聖衣に施した封印の神印、聖衣から顔を出しても周りに凰の力の影響が出ないように組めばよかった。顔を出す度に凰の聖域が広がったんじゃあ下手に外で顔を出すことも出来ない・・・まあ、クロガネに買ってきてもらったマントフードにはそういう神印を組んでおいたけどね・・・
僕達が東屋に辿り着くとメフィール皇子は東屋に居る人達に「お待たせいたしました」と声を掛け、僕達に向き直る。そして、そのあどけなさの残る獅子顔に柔和な笑みを浮かべメフィール皇子は口を開いた。
「アジーナ大神官殿はここに見える方々とは面識は有るのですよね」
「ええ、ありますね」
「では、先ずは、光の神子様に皆様をご紹介致しましょう」
僕はメフィール皇子のその言葉に軽く頷くことで応える。
「では、テーブルを挟んで奥に居られる方々が今回、停戦の為に尽力してくださった調停国、アルセルク王国の方々で中央に居られる方が第一王子ウィサート・アル・アルセルク様です。その右隣に居られるのがウィサート王子の補佐を務められたアルセルク王国の第一王妃スズナ・Q・アルセルク様、そしてウィサート王子の左隣に見える方は同じく王子の補佐をされた王子妃のマシャール・イル・アルセルク様です」
「お初にお目にかかる、光の神子様」
カンザブロウ父さまと同年代と思われるその人物は、金髪碧眼でそのボリュームのある金髪を全体的にフワッと後ろに流しその碧眼は猫のような瞳だった。パッと見、野性味溢れるワイルドな中年といった感じだ。そのガッシリとした体には普段着なのだろうか、ピシリとアイロンの効いたクリーム色のスラックスに少しゆとりのある上質な生地の白いYシャツ、青地に銀糸でシンプルだが美しい刺繍が施されたベストを着ている。
そして、そのベストの上から胸に手を軽く添えて僕に対して軽く頷くように頭を動かす。
その男性、ウィサート王子の両脇に立つ女性達もドレスの裾を軽く摘まみ上げ僕に挨拶する。
対して、「初めまして、ウィサート王子」と、僕は笑顔で挨拶を返す。すると、何故だかウィサート王子とその王子妃は顔を赤らめ困惑する様に僕から視線を逸らした。
・・・うん……この体になったばかりの頃のシャリーナ姉さまと同じ反応だね・・・
王妃様は優しい笑みを湛えたまま視線を僅かに僕の顔から逸らしている様だった。
・・・流石、ただ単に歳を重ねてきたわけでは無い、と言ったところかな・・・
ウィサート王子の右隣に立つ女性、アルセルク王国第一王妃スズナ様はこの中では一番年嵩がいっているように見える。が、その凛とした立ち姿はこの中で一番存在感がある。その柔和な笑みを湛えた顔は何故か何処と無くカクラ母さまに似ているように思えた。ただ、その銀髪は僅かに赤みを帯びているようで、所々白髪も有るようだ。が、その白髪も銀髪のためか気にならない。その瞳は、母さまの瞳より僅かに明るい藍色で、歳を刻んできた皺も醜いどこらか逆に彼女の美しさを際立たせている。その体には濃紺のワンピースドレスを纏い、その上に綺麗なレース編みのクリーム色のボレロを纏って落ち着いた雰囲気を醸し出している。
対して、ウィサート王子の左隣に立つ女性、アルセルク王国王子妃マシャール様は恐らく歳は二十代後半、メフィール皇子似の獣人だ。彼女は獅子顔だが面差しは柔らかく優しい笑みを湛えている。その身には、若葉色のワンピースドレスを纏い肩には黄色いレース編みのストールを掛けている。スズナ様に比べると明るい装いだ。
「アジーナ大神官殿も、お久しぶりですな」
「ええ、ご無沙汰しております、ウィサート王子。この度は、調停役ご苦労様でした。本来ならば我がシャイナ教が調停役を買って出るべきだったのですが……」
「いやいや、我が国も両国とは親交が有があり、両国とも停戦を望んでいたからそれに手を貸したまでの事。それに二年前はシャイナ教の総本山のあるアルヴァロム王国も大変な情勢だったようだし、それどころでは無かったであろう」
「……お恥ずかしい限りです」
「まあ、それにこの調停役を引き受けた事でお会いしたかった光の神子様に会えたのだ。それだけでも引き受けて良かったと思っている」
『うん? 何だろう? 何でそんなに僕に会いたかったんだろう?』
『まあ、社交辞令なんじゃないのか? 何にしても悪い意味では無いように思うぞ』
ウィサート王子はアジーナおばさまに対して笑顔で受け答えしているが、僕には意識的に視線を向けないようにしているのが感じられる。マシャール王子妃は顔を赤らめ俯きながらもチラチラと僕の方を見ている。スズナ第一王妃は流石と言うか、僕の笑顔にもう耐性が出来たようで、僕に微笑みかけている。
「それでは次に、光の神子様から見て右に居られるのが、ジャカール帝国側の停戦の交渉役でこの共同管理都市トーゲンの執政官を勤められるジャカール帝国第二皇子サザール・β・ジャカール様です。その左隣に見える方は皇子妃のルルノア・β・ジャカール様です」
「初めまして、光の神子様。我が国と東神名国の停戦条約の調印の立合いの為に、遠路遥々よくぞお越し下さいました」
メフィール皇子が少し大人びて細面になったような獅子顔のサザール皇子は、クリーム色のローブのようなゆったりとした服を着て腰には幅広で朱色の帯を巻いている。その服の上から長さが腰まである金糸でシンプルだが見事な刺繍を施されたスカイブルーのベストのような物を着ていた。
そのベストの胸の辺りに手を添えその優しげな顔に笑みを乗せて僕に声を掛ける。が、その視線は僕の顔から僅かに下に逸らされていた。
その左隣に立つ女性、サザール皇子の妃であるルルノア様は頭の先から足の先まで少し桃色がかった布にくるまっているような姿で顔の部分は白いベールで隠されている。だが、そのベールは非常に薄く僅かに顔の表情が見える。そのうっすらと見える豹顔は柔らかな笑みを作っているようで、僕に対し胸の辺りに手を当てて軽く頭を下げていた。ベールのせいで視線は何処を向いているのか分からない。
対して、「初めまして、サザール皇子。僕達が二か国の停戦に少しでも貢献出来れば幸いです」と、僕は微笑み挨拶を返す。と、サザール皇子は一瞬だけ僕の顔を見る、途端に頬を染めて視線を反らした。
・・・ウィサート王子の時と違って、覚悟していた為かサザール皇子はそれほど動揺しなかったようだ……けど、ルルノア皇子妃はベールの上からでも動揺しているのが分かる・・・
ルルノア皇子妃は僕が微笑むとその全身を隠した布やベールの上からも明らかに動揺しているのが見てとれた。
それを見て僕は周りの人に気付かれないように小さく息を吐く。
「アジーナ大神官殿も、お久しぶりです」
「ええ、ご無沙汰しております、サザール皇子」
アジーナおばさまが微笑みながらサザール皇子に挨拶を返すとサザール皇子も笑みを返して頷く。
「では次は、東神名国の方々がですね。……ああ、そういえば、東神名国の方々は私がご紹介するまでも御座いませんでしたか」
「そうですね……ですが、今の立場で会うのは初めてですから挨拶はしておきましょう。……お久しぶりです、光の神子様、アジーナ大神官殿。私はこの共同管理都市トーゲンで東神名国側の執政官を務めさせて頂いています、東神名国国主の妹、神名カクラと申します。この度は停戦条約の調印の立合いの為に遠いところご足労いただき心よりお礼申し上げます」
メフィール皇子の言葉に返答したカクラ母さまは、腰まで伸ばした綺麗な銀髪を三つ編みにして纏め、その美しく整った顔は一年前に見たままだった。そして、川の流れをデザイン化したような模様の入った水色の和装のような浴衣を着て、その上に朝顔のような花をデザイン化した模様の濃紺で薄手の羽織のような物を羽織っている。
カクラ母さまは、その胸元に一才になった浴衣姿のオズヌとミーナを抱え、その深い藍色の瞳の目を嬉しそうに細め微笑みながら僕達に挨拶と礼の言葉を述べた。
対して、「お久しぶりです、カクラかぁ……いえ、カクラ姫」と、笑顔で僕は応じ、「お久しぶりです、カクラ姫。我らが此度の停戦に少しでも貢献できれば幸いと存じます」と、アジーナおばさまは微笑んで応えた。
そのカクラ母さまの右隣に立つカンザブロウ父さまも一年前と殆んど変わっていない。背中まで伸ばした母さまより少しくすんだ銀髪は首の辺りで組紐により纏められ母さまより薄い色の瞳の目は嬉しそうに細められている。そして、そのガッシリとした体に、藍色で無地の浴衣を纏い、その上に赤紫で薄手の羽織を羽織っている。
そのカクラ母さま達の後ろには、肩まで伸ばした緑色の髪から尖った耳を覗かせるハーフエルフのカナコが和服のような姿にエプロンを着け、僕に微笑みながら頭を下げていた。
「堅苦しい挨拶はここまでにして、光の神子様も大神官殿も椅子にお座りください。今朝は皆様をお誘いして我が国のお茶を楽しんで頂いているのです。お口に合うかどうかは分かりませんが、光の神子様と大神官殿にも味わって頂ければと思います」
僕に微笑みながらサザール皇子が僕達に椅子を勧めてくれる。対して「そうですね……」と言いながら、僕がアジーナおばさまに目を向けると、アジーナおばさまは軽く頷く。
「……それでは、お言葉に甘えてご馳走になります」
僕はそう応えながら、頭にヘッドベールを着けトップスにヒップスカーフ、それにゆとりのあるズボンを穿いて、水色に統一されたアラビアンナイトの踊り子のような姿をした猫顔の少女が引いてくれた椅子に腰をかける。その僕の右隣にアジーナおばさま、左隣にサーシャが腰をかけた。シャリーナ姉さまとクロガネは僕達の後ろに控え立つ。
それを確認すると、その場に居る人たちも各々自分達の椅子に腰を戻す。
メフィール皇子はアジーナおばさまとルルノア皇子妃の間の椅子に腰を落ち着けた。
フィーロさんはそのメフィール皇子の後ろに控えて立つ。
それから僕達は少しの間歓談を楽しんだ。が、僕は違和感を感じていた。
始めのうち、僕には皆、会話を楽しんでいるように思えた。しかし、ここに居る人達の想いは平坦で心を読ませないようにしている感じがしたのだ。カクラ母さま達でさえも。
『カクラ母さまも含め、ここに居る人達は、国を代表して来ているんだよね』
『……ああ、他愛も無い会話でさえ後々不利になったりしないように言葉を選び、弱みを弱みとして取られないように巧みな話術を使って会話をしているのだろう』
『何だか、息が詰まりそうな話だね』
『それが国を代表する者達の世界なのだろう』
『……この場にキリマルが居たがらないのが分かったような気がするよ』
『そうだな……あいつは堅苦しいのと、こういう駆け引きの場は苦手だろうからな』
『僕もあんまり好きじゃないなあ』
僕は独特な柑橘系の香りと酸味の利いた口当たりの良いジャカール帝国のお茶をチビリチビリと口に含みながら、話題を振られると笑みを浮かべるにとどめ返答は全てアジーナおばさまに任せる事にした。
・・・だって、何にも知らない僕が返答をして後々問題になったら困るし、アジーナおばさま達に迷惑掛けたくないもん・・・
などと考えていると「ところで、光の神子様は我が国の火の神をご存知ですか?」と突然話題を振られた。それに僕は「え? あ、はい」と答え、問い掛けてきた人物に目を向ける。と、そこには一瞬ニヤリと笑ったメフィール皇子が居た。
「やはりご存知でしたか。火の神を知っているということは、シャイナ教が言うように貴女は鳳凰様の生まれ変わりなのですね」
「・・・・・・」
「ならば、貴女になら火の神に怒りを収めさせる事が出来るのではありませんか?」
「お待ちなさい、メフィール皇子。光の神子様は鳳凰様の生まれ変わりとはいえまだ幼鳥、それほどの力はまだありません」
メフィール皇子の言葉を聞いたアジーナおばさまは、慌ててメフィール皇子と僕の話しの間に割って入ってくる。
「そうなのですか? 光の神子様」
僕はメフィール皇子のその問い掛けに少し考え、「……そうですね」と曖昧な返答をした。それを聞いたアジーナおばさまはガックリと肩を落とした。恐らく僕に強く肯定して欲しかったのだろう。
・・・だって、もし先代鳳凰に関連して困っている人達が居て、それを僕が何とか出来るのであれば、何とかしてあげたいとも思うし・・・
「そうですか、残念ですが仕方がありませんね。今の話聞かなかったことにして下さい」
「いえ、僕が力を使いこなせるようになった時には必ず火の神の癇癪を宥めに行きますよ」
「本当ですか? ありがとう御座います」
メフィール皇子は僕に対して嬉しそうに感謝の言葉を述べる。
メフィール皇子が簡単に引き下がった事にアジーナおばさまはホッと胸を撫で下ろしていた。
「さて、お昼までに片付けておかなければならない書類があるので、俺達はこれで失礼させていただく。っと、忘れる所だった、光の神子様、貴女の護符のお蔭で我が国は随分と救われている。我が国を代表して心より感謝させていただく」
そう言うと、立ち上がったウィサート王子達は僕に対して深々と頭を頭を下げた。対して僕は「ああ、いえいえ、僕の護符がお役に立ったなら良かったです」と、僕は慌てて両手を振りながら応えた。
そして、ウィサート王子達を見送る為にその場に居る全員が席を立つ。
ウィサート王子達の東屋の去り際、アルセルク王国第一王妃スズナ様が僕に近づいてくる。
僕が・・・何だろう・・・と疑問に思いながら見ていると、「私の可愛い弟の孫娘を抱き締めさせて下さいな」と言って、僕を包み込むように優しく抱き締めてくれる。そして、「この先、大変だと思うけれど頑張りなさい」と、優しく囁きながら体を僕から離し、スズナ様は東屋に居る人たちに一礼して東屋を後にした。
『スズナ様はカクラ母さまの叔母に当たる人なんだ』
『どうりで、カクラ母さんに似ているわけだな』
ウィサート王子達を見送ると、「申し訳ありませんが、私も午前の公務が残っておりますのでお茶会はここまでとさせて頂きます」とサザール皇子達は東屋に残った者達に頭を下げる。「それでは、我らも失礼させて頂きましょう」と言って、メフィール皇子達も東屋を後にした。
「私達もこのトーゲンに着いたばかりで、やらなければならない事が山積しています。なので、私達も御暇させていただきましょう。行きますよ、サーシャ」
「はい、お母様」
そう言って、席を辞そうとするアジーナおばさま達に「それなら、僕も」と付いていこうとすると、「いえ、シャイン様がしなければならない事は有りませんので、シャイン様はもう暫らくここに居て下さい」と、サーシャに付いていくことを拒否された。
『いや、確かに僕が行っても役に立たないかもしれないけど……そんな言外に「付いてこられても邪魔です」と意思表明しなくても……傷つくなあ』
『実際、役に立たないんだから仕方があるまい』
『ぐっ……鳳は僕にもう少し優しくしてくれてもいいと思う……』
『怒りの感情しかない俺に無茶を言う』
僕が鳳の言葉を聞いて深く息を吐いた時、ふふふ、「相変わらず、シャインは皆に愛されているわね」と、声が聞こえてきた。
「えー、そうかなー、今のは完全に邪魔にされただけなように思うけど」
「そんな事はないわ、だってこうして家族水入らずにしてくれたんですもの」
「……言われてみれば、そうかなあ」
「そうよ、ほら、一年振りに会えた私の可愛い娘の顔をもっと近くで見せてちょうだいな、ほら、オズヌもミーナもこんなに会いたがっていたんだから」
オズヌは綺麗な銀髪に子供らしい大きな瞳は明るい藍色をした将来間違いなくハンサムになるだろうと思われる愛らしい顔の僕の弟だ。
ミーナは綺麗な緑色の髪だが前髪の一房が黒髪になっている、その緑色の髪から母親似の尖った耳がチョコンと顔を覗かせていた、大きな瞳は澄んだ黄緑色で、こちらは、将来間違いなく別嬪さんになるだろうと思われる可愛らしい顔をしたカナコとキリマルさんの娘だ。
僕がカクラ母さまに近づくと、それまで母さまの胸の中で大人しくしていたオズヌとミーナが「しゃーねーたま、しゃーねーたま」と、僕に手を差し伸ばしてくる。
皆がまだ東屋に居るとき、オズヌとミーナは僕の方をジーッと見つめていた。それに対して、カクラ母さまが周りに聞こえないように小声で「シャイン姉さま、シャイン姉さまよ」と、僕の名前を教え込んでいたようだ。
「オズヌもミーナも大きくなったねー、もう言葉も喋れるようになったんだ」と言いながら僕が母さまからオズヌとミーナを受け取ると、キャッキャキャッキャとはしゃぎオズヌとミーナは僕の胸をペシペシと叩く。
・・・あん……い、意外と力強い・・・
そんな僕達をカクラ母さまカンザブロウ父さま、カナコにシャリーナ姉さまとクロガネは優しい眼差しで見つめていた。
それから僕達は一年間の空白を埋め絆を強く結ぶように家族団欒の時間を楽しく過ごした。
「さて、私も公務が有るから家族団欒の時間はここまでね……もう少しここに居たい気持ちはあるけれど」
そう言うと、母さまは立ち上がり「仕方が無いよね」と僕は応える。
「そうそう、シャイン、メフィール皇子には気をつけなさい。ああ見えてメフィール皇子は凄く頭が切れるわ、然も可也強かよ。この停戦条約が後調印だけとなった時に待ったを掛けて立会人に貴女を指名したのはメフィール皇子よ。私も抵抗はしたのだけれど、過去の、同盟を一方的に破棄してその同盟を結んでいた国を不意打ち同然に撃ち滅ぼした事を持ち出されては反論できなかったわ」
『やはり、天の神子候補に選ばれるだけの事はある、というところかな』
『……そうだな』




