第参十九話
フィーロの喋り言葉を少し変更しました。7/1
(凰)
翌朝、シャリーナ姉さまの言った通り僕達はアジーナおばさま達と合流する事が出来た。
アジーナおばさま達が僕達の位置を確認できたのは、二年ほど前に僕の渡した神護の指輪の探知能力を使っての事だった。
「シャイン様、ご無事で何よりです」
「アジーナや騎士団の人達も無事でよかった。……他の人達は?」
「ジャカール帝国の護衛の者達には複数の死傷者が出ましたので、その場で待機させています」
「そう……」
『みんな自分の考えや信念に基づいて行動しているんだ。お前が落ち込んだって仕方がないぞ』
『そんなこと……分かってるよ』
「シャイン様、今コンスー河の岸辺にあるジャカール帝国の砦に救援を呼びに遣っています。ジャカール帝国の護衛の者達の所に水や食料を全て置いて、後はその救援に任せ私達はトーゲンに向かいましょう。トーゲンはここから約四日、それ位ならば我々エルフはこの砂漠でも飲み食い無しで行けます」
「……うん、そうですね。この砂漠で怪我人に無理はさせられませんもんね」
僕とアジーナおばさまが話をしていると、「光の神子様、俺は連れて行ってくれ」と、オーマン近衛少将が会話に割って入ってきた。
「水も食料もみんな置いていっちゃうんだよ。人間種の貴方ではこの熱砂の中で三日ももたないでしょ」
「俺はこの砂漠で生まれ育ったんだ。砂漠でのあらゆる状況に対処できるように鍛えられている。余り舐めないで貰いたい」
「……何故そんなに僕達に付いてきたいのですか?」
「俺は皇帝陛下から直命を受けてここに居る。この命ある限り、その命を遂行し続けるのが俺の信念だ!」
「そうですか……分かりました。が、貴方が倒れても助けずにその場に置いていきますよ」
「ああ、そうしてくれて構わん」
僕は頑ななオーマン近衛少将に対して一つ息を吐き、好きにさせることにした。
恐らく彼は何を言われても付いてくるだろう。
アジーナおばさま達も僕とオーマン近衛少将とのやり取りを聞いていて、ヤレヤレというような表情をしていた。
それから四日後、僕達は共同管理都市トーゲンのあるコンスー河の近くまで辿り着いていた。
僕がフードを外すと渇いた砂漠の空気に僅かだけど湿気を感じられる風が混じり始めているのに気が付く。
その風が熱を帯びた肌を優しく撫で始めた頃、陽炎に揺らめくジャカール帝国のコルクー砦が遠くに見えてきた。
「みっ、みず、水だぁぁぁ……」
その湿気を敏感に感じとると、オーマン近衛少将はカラカラに渇いた口で弱々しく叫び、共同管理都市トーゲンのあるコンスー河へとサンドリザードに鞭を打ち猛スピードで駆け出していた。
「オーマン近衛少将って、本当に人間種? しかも魔法が苦手だという獣人なの? 水脈でも半日近く流されていて平気な顔をしてオアシスに辿り着いていたけど……」
「そうですね……身体能力の高い獣人とはいえ大した体力と精神力ですね」
僕がシャリーナ姉さまの操るサンドリザードに揺られながら呟くと、シャリーナ姉さまも呆れたように相槌を打つ。
コンスー河はジャカール帝国を東西に横断する炎神山脈と東神名国の中央辺りから西部に股がる西崑山脈に源流を持ち、ジャカール帝国と東神名国との国境沿いの山岳地帯を縫うように流れ北央海へと流れ込む大河だという。
そして、その山岳地帯の切れ目にあるコルクー平野でコンスー河は一時流れが緩やかとなり巨大な中洲を作り上げていた。
そこに大国の王都にも匹敵する広さの都市が作られているという。
「平地で東神名国とジャカール帝国が繋がっている所は数ヶ所有りますが、最も大きく開けているのは、このコルクー平野ですね……」
「へえーそうなんだ」
「……なので、戦中はここが一番の激戦地でした」
「……そうなんだ」
その後、シャリーナ姉さまと僕は沈黙してしまい、何だか沈んだような雰囲気を漂わせコンスー河へと向かって進んでいった。
周りの人達も何だか声を掛け辛そうにしている。
『何だか空気が重いな……』
『あー、うん、みんなどう声を掛けていいのか分かんなくなっちゃってるんだね……きっと』
「何だかすみません、雰囲気が重くなる話をしてしまって……」
「いやいや、気にしないで……シャリーナは事実を言ったまでなんだから」
「……シャイン様は本当にお優しいですね」
そう言うとシャリーナ姉さまは大事なものを抱き締めるように優しく僕をその腕の中に包み込む。
僕はシャリーナ姉さまの温もりに包まれその心地良さに幸せな笑みが零れる。
その時、横から「「シャリーナ、ずるい……」」と二人の声が聞こえてきて僕のその笑みは微妙なものへと変わり、僕はフードを被り直した。
シャリーナ姉さまは二人の言葉に何処吹く風というような態度でサンドリザードを操っていく。
「光の神子様、アジーナ大神官殿、遠路遥々よくぞいらして下さいました」
コンスー河のジャカール帝国側から中州に渡り共同管理都市トーゲンに行くには、その中洲によりコンスー河が分離した川幅一キロはある河を渡らなければならない。
その河には横幅百メーターは有るのではと思われるほどの巨大な橋が架けられていた。
その橋の脇に巨大な砦が建っている。
その巨大な砦の横、橋の袂に馬車と複数人の人影があった。
その人影の内の一人が僕達に声を掛けてきたのだ。
「初めまして光の神子様、私はジャカール帝国第三皇子メフィール・γ・ジャカールと申します。以後お見知りおきください。ここより先、共同管理都市トーゲンのシャイナ教神殿まで私がご案内させて頂きます」
そのジャカール帝国第三皇子を名乗った僕と同い年くらいの少年は、獅子のような金の鬣に相手を見定めるような鋭い金の瞳、鼻筋の通った獅子顔の美少年だった。
そのメフィール皇子は羽団扇を持つ手を胸にあて僕達に深々と頭を下げる。
そして顔を上げた後、アジーナおばさまやサーシャにクロガネ、シャリーナ姉さまを舐め回すように見る。
サーシャはそれに気付くと身震いをして表情に嫌悪感を表していた。
シャリーナ姉さまは僕の耳元で、「シャイン様、メフィール皇子にはお気をつけ下さい。彼は好色で知られています」と、教えてくれる。
そのメフィール皇子の視線に対しアジーナおばさまは表情一つ変える事なく口を開く。
「メフィール皇子、貴殿方が我々につけてくださいました護衛の方々を砂漠に置いてきてしまいました。誠に申し訳ございません」
「いえいえ、こちらこそ最後まで護衛出来ず申し訳ありませんでした。しかも救援の要請の使者まで送っていただきお手数をお掛け致しました」
「ところで、オーマン近衛少将は大丈夫ですか?」
「はい? オーマンですか?」
「はい」
「いや、こちらには来ておりませんが?」
「そうですか……私達より先にこちらに向かったのだと思っていたのですが……」
「まあ、彼奴の事です心配は要りませんよ。その内ヒョッコリと顔を出すでしょう」
互いに一通り挨拶を済ませると、僕とアジーナおばさま、サーシャはメフィール皇子の用意した馬車に乗り、クロガネとシャリーナ姉さま、クレーヌさん達シャイナ教聖騎士団はサンドリザードから馬に乗り替えていた。
僕が馬車に乗り替える時、シャリーナ姉さまは更にメフィール皇子の情報をくれた。
「後、メフィール皇子は天の神子候補です」と……。
『えー、好色なのに天の神子候補って、どうなのよ』
『好色な部分をさっ引けば、天の神子候補として立派な人物だと言うことなんじゃないのか?』
『う~ん、そうなんだろうけど……』
『それに皇族としては、跡取りの事を考えると子作りに興味が無い者よりは好色な方がいいだろう』
『でも、天の神子だよ。世界を導くべき者としては、どうなのよ』
『まあ、メフィール皇子を選んだ天人も、そこら辺の事は考えて選んではいるんじゃないのか? ある程度、歳を重ねれば好色な部分も改善されるとか』
『まあ……僕もそうは思うけど……でも、鳳みたいな例もあるよね』
『はて、なんの事やら』
『あー、そうやって惚けるんだ。鳳、この世界に来た時の年齢、三十近くまでいろんな意味で獣だったよね』
『……生命としての本能に忠実だったと言ってくれ』
・・・・。
『ものは言いようだね……』
『……あの頃は心にポッカリと空いた穴を誰かに埋めて欲しかった、っていうのもあったんだろうな……まあ、言い訳だが』
『……ゴメン、言い過ぎた』
『いいさ、事実だしな………それに俺は前世で失った温かなものを再び与えてくれた凰や皆には感謝している』
『僕だって鳳や皆には感謝しているよ』
『ああ、分かっているさ……だから俺は今生こそ大切な者達を守ってみせる』
『鳳、俺はじゃなくて俺達は、でしょ』
『ああ、そうだったな』
僕の乗る馬車にはアジーナおばさまとサーシャの他にメフィール皇子達も乗っている。
僕達と向かい合わせに座るメフィール皇子は水色のローブのようなゆったりとした服を着て腰に幅広の金色の帯を巻いている。その服の上から長さが腰まである赤地に金糸銀糸の見事な刺繍を施されたベストのような物を着込み、手に持つ白い羽団扇をゆったりと揺らめかせていた。
そのメフィール皇子の横には頭の先から足の先まで質のいい金色の布で出来た服で身を包んだ女性が座っていた。
その女性は目の部分以外は金色の布に包まれているため表情は分からないが、その目元の部分には純白の体毛が見えている。
そして、その金色の瞳は僕を見定めようとするようにじっと僕を見つめている。
『恐らく、この女性がメフィール皇子を天の神子候補に選んだ天人なんだろうけど………なんだろう、馬車に乗ってからずっと僕の事を見つめてる? ……と言うか、睨まれてる?』
『お前、この女性に恨まれる様な事をしたんじゃないのか?』
『やめてよ、僕は鳳のような獣じゃないんだから……それに彼女とは初対面だよ』
『冗談だ、分かってるさ……まあ、天人の立場からしてみれば俺達が自分達の祖の親であり神である鳳凰の生まれ変わりを騙っているんじゃないかと疑っているんだろう。それに、もし本当に鳳凰の生まれ変わりだったならば何故天人の所に来ずにエルフの元に居るのか納得出来ない、と言ったところなんじゃないのか』
「光の神子様、貴女のその気品漂う物腰から、その美しくも強固な全身鎧が如き聖布の上からでも貴女が世にも稀なる絶世の美女であることを想像するに難くない。いえ、間違いなく貴女は絶世の美女でしょう。私の心はもう既に貴女のその秘めたる姿の虜。何卒その鉄壁のベールを開き貴女のお顔だけでもこの哀れな小羊めに拝ませては頂けないでしょうか」
メフィール皇子は突然歯の浮くような台詞を吐きながら馬車のベンチシートから降り膝ま付いて僕の手を取る。
そして、その少年は美しくも愛らしさの残る獅子顔を僕に向け潤んだ金の瞳で僕を見つめる。瞬間、僕は背筋に冷たいものが走り「ひっ……」と悲鳴を上げかける。と同時に、メフィール皇子は白目をむき床に倒れ込んだ。
メフィール皇子の隣に座っている女性がメフィール皇子に対して手刀を叩き込み昏倒させたのだ。
ふと気がつくと、僕の両隣に座っているアジーナおばさまとサーシャはマジックアームスのブレスレットをレイピアに変えかけていた。
「大変失礼した、光の神子よ。我はメフィール皇子の身の回りの世話をしている、フィーロという。以後お見知り置いていただこう」
「ああ、いえ、助かりました、フィーロさん……」
「だが、一国の皇子に対して顔を見せないというのは、例えシャイナ教の教主といえど余りにも不遜ではないか?」
フィーロさんは僕を睨み付けながら床に倒れ込んでいるメフィール皇子をベンチシートへと引きずり戻す。
『そう言う割りには、自分はその主に当て身を食らわせているのだが、それはいいのか?』
あはは、『そうだね』
「何を言う、光の神子様は鳳……」
「ああ、サーシャ、いいよ。皇子様に対してこの姿は流石に失礼でしょう」
「ですが……」
サーシャが不満を漏らそうとするのを僕は手で制し対面に座るメフィール皇子とフィーロに向き直る。
まだ、メフィール皇子は白目をむいたままだけど……
「メフィール皇子、フィーロさん、失礼いたしました」
僕はまだ気を失っているメフィール皇子とフィーロさんに謝罪してベールとフードを外し顔を表に出す。と、フィーロさんは一瞬目を丸め凍りつく。が、慌てて顔を隠していた布を剥ぎ取り床に膝ま付き臣下の礼を取った。
「ああ、止めてください! ここには人として、シャイナ教教主の光の神子として来ているのですから」
「ですが……」
「お願いします」
「そんな、おおや、止めください、われ、私などに頭を下げるなど…………分かりました分かりましたから」
フィーロさんの制止を聞かずに僕が頭を下げ続けていると、フィーロさんは涙目になりながら僕のお願いを聞き入れてくれた。
「んあ? ………どうした? フィーロ………おっ!?」
その時、メフィール皇子が目を覚まし膝ま付いているフィーロさんに怪訝そうに声を掛ける。と同時に、僕が顔を出していることに気がつき、その僕の顔を見て驚きの声を上げ動きを止めた。
「お嬢さん、今晩いガフッ!!」
我に返って再び僕の手を取り声を掛けようとしたメフィール皇子の顎にフィーロさんのアッパーカットがキレイに入っていた。
メフィール皇子は再び白目をむいて意識を失った。
『おーい、フィーロさん、貴女本当にメフィール皇子の側仕えなんですか?』
『フィーロのメフィール皇子に対する扱いは酷いな。まるで、カナコとキリマルを見ているようだ』
「そ、そんなに殴って大丈夫なんですか?」
僕はキリマルとカナコの夫婦漫才のようなじゃれあいを思い出し吹き出しそうになるのを堪えながらフィーロさんに声を掛けた。
「はい、幼い頃からの習慣なので、お気にせず」
「いやいや気になるよ。従者が主をそんなに殴ったら不味いでしょ」
「大丈夫だ、です。この程度で怒るような者ではない、ですから」
「この程度って、メフィール皇子、白目むいちゃってるんだけど……」
「何時もの事だ、ですから」
『何時もの事って……どうなのよ』
『まあいいんじゃないのか、こいつがいいって言ってるんだから』
『いいのかなー……でも、この二人、幼馴染みなんだね』
『そのようだな』
『なんだか、カリン姉さまの事を思い出しちゃった』
『ああ、今回は会えそうにないが……早いうちに会えるといいな』
『うん』
『……ところで、フィーロさん、僕に無理に敬語を使おうとしてるようだけど』
『ああ、慣れない敬語を使おうとして噛みまくっているな』
『うん……』
話が落ち着いたところで、フィーロさんをよく見てみると耳は頭の左右にピンと立ち、顔は純白の地に黒い虎縞模様の毛足の短い体毛に覆われ目は円らだが意思の強さが感じられる。まだ愛らしさの残る虎顔の美少女だった。
『この特徴から言って、クリスティーン婆さまから教えてもらった六天人の内の白虎族かな』
『そうだな、この娘が天人だと言うのなら、そうだろう』
共同管理都市トーゲンに向かう橋の中ほどを過ぎた頃、三途の川の手前まで行って来たというメフィール皇子が目を覚ました。
その時には、僕はフードを被りベールで顔を隠していた。
『メフィール皇子がこれ以上フィーロに殴られたら確実にあの世に旅立つ事になるだろうからな』
『いや、流石にフィーロさんでもそこまではしないでしょう……』
僕はそう思っていたのだが……
メフィール皇子は顔を隠した僕を見て残念そうな顔をした。が、諦めたように一つ息を吐いて馬車の外に目をやり物憂げに外を眺めていた。
「皇子、光の神子様に言い寄ることは諦めたのか?」
「ああ、余りしつこくして嫌われるのも嫌だからな」
そのメフィール皇子の返答を聞いて、チッとフィーロさんが舌打ちしたように聞こえた。
『……フィーロさん、今、舌打ちした? 舌打ちしたよね……もしかして、殺る気満々なんじゃ……』
『・・・・・』
その後、馬車内にはガタゴトと揺れる音が響くだけで、誰も口を開こうとしなかった。
その沈黙に耐えきれず「と、ところで、メフィール皇子……」と、僕が声を掛けると「はい、何でしょう」と、メフィール皇子から嬉しそうな返事が返ってくる。
「……共同管理都市トーゲンは大国の王都に匹敵する大きさがある、と聞いたのですが」
「はい、そうですね、共同管理都市トーゲンは大河コンスー河に出来た巨大な中洲に建設されたため南北に長い楕円形をしており、その敷地面積は約五平方キロメーターあります。その中は大まかに分けて中央行政区、官僚街区、一般市街区、商人街や宿泊施設、市場などのある商業区、職人街を含む工業区の四区画からなってます。シャイナ教の大神殿とトーゲンの行政を担うジャカール帝国と東神名国の行政執行官の駐在する執行官屋敷はその中央行政区にあります」
「へえ、そうなんだ……」
「そして、聞いておられるとは思いますが、この地は戦中激戦地でした。酷いときにはこの大河コンスー河が血に染まるほどの戦死者を出しました。そこでその戦死者達の鎮魂の意を込めて、東神名国、ジャカール帝国、それぞれの国に面した都市壁の壁面に戦死した者達の名が刻まれています。共同管理都市トーゲンの門を潜る際はその者達の冥福を祈って頂ければ幸いに存じます」
そう言うメフィール皇子は少し辛そうな笑みを浮かべ僕達に頭を下げていた。
(停戦反対派の者達)
我らは共同管理都市トーゲンにある酒場の薄暗い地下室に集まっていた。
「やはり鳳凰様の加護を受けているといわれるシャイナ教聖騎士団のエルフ達を相手にあの程度の戦力では歯がたたなんだか」
「外部の協力者により光の神子を守る魔人と妖怪人の内の片方を引き離すところまでは上手くいったらしいがな」
「聖騎士団の力を見誤ったか。もっと強力な炎神鎚(銃)を投入すべきだった」
「いや、あれ以上の炎神鎚を使えば足が付く」
「そうだな、今回の作戦で成果があったのは、試験段階の炎神鎚【轟雷】であの伝説の妖怪人に傷を負わせる事が出来たという事だけか。そうだろうオーマン殿」
その場の皆が目を向けた先、地下室の出入り口近くには全身真っ黒な体毛に覆われた豹顔の男が壁に背を預け立っていた。
「ああ、だがまだあれを扱える者は限られるだろう」
「まあ、その辺りは改良の余地があるという事だな」
・・・・。
「何はともあれ、停戦の調印を阻止する為、このトーゲンに着く前に光の神子を我らの元にお連れする計画は失敗だ」
「ああ、今回の作戦の失敗を受けて、上の方ではある人物と手を組むことにしたらしい」
「ある人物とは……まさかあのお方か。だが、それでは光の神子は……」
「ああ、今度は光の神子の生死は問わないという事になる。まあ、それに光の神子が鳳凰様の生まれ変わりだと言っているのはエルフだけで確証は無いわけだしな」
「それは、そうだが……」
「それに我らには躊躇している暇は無い。この砂漠だけの国では未来は無いのだ。この戦いは、我が国の存亡、いや我らが子孫を残し、その子孫が繁栄していくためのものだ。光の神子にはその為の人柱となってもらう」




