第弐十参話
サーシャが、隠者の里を訪れる一週間程前・・・・
アルブァロム王国 王都エクスラ 王城アルス・エクスラ
(アジーナ)
「アジーナ様、いかがでしたか?」
私が会議場を出ると、会議場の外で待っていたオスカーが声をかけてきた。
「・・・・ダメでした。女王も交えた賢人十二人会議でグランザム公爵領に対する討伐軍派兵に反対したのは私だけでした。」
「そうですか・・・・お疲れ様でした。」
私は部下の労いの言葉に、表情に疲れが出ているのだろうか、と思いつつ話を続けた。
「・・・確かに、乱世の狂気が涌くグランザム公爵領をこのまま放っておく訳にはいきません。が・・・・叔父上だけでなく、精霊に守られた始祖の血を色濃く受け継ぐ王族である我等ハイエルフが、気付かぬ間にここまで乱世の狂気に影響を受けているとは思ってもいませんでした。」
我らエルフの始祖は、この世界を産んだ神、鳳凰様によりこの世界の生命を見守り導かせるために創造された。
始祖以降、我らはこの世界の全ての生命に寄り添い見守り続け、天の神子の下、生態系に異常が見られれば精霊に力を借り異常を取り除いたり修正するなどして生命をより良い方向へと導いてきた。
しかし、乱世の狂気がこの世界に産み出されて以降、それまでには無かった種族間や部族間での異常なまでの差別意識、それを起因とした争いが数多く生じるようになった。
天の神子がその乱世の狂気を押さえてはいたが、それでもこの世界が受ける乱世の狂気の影響を無くすことは出来なかったのだ。
我らエルフは、天の神子を補佐し天の神子が押さえきれなかった乱世の狂気を精霊の力を使い浄化し、乱世の狂気が生命に与える影響を押さえる役目を担ってきた。
その為、我らエルフが一番乱世の狂気の影響を受けたのやも知れない。
僅かだが、我らの使命を忘れ自分の利益を求める者や別種族を差別する者が出てきたのだ。
特にそれが顕在化し始めたのは、天の神子の力が弱まり始めた頃だった。
それでも、大多数のエルフは我らの使命を全うしようと努めてきた。
だが、とうとう精霊に守られた我がアルブァロム王国に乱世の狂気を招き入れてしまう出来事が起きてしまった。
二十年程前、我が父であるアルブァロム王国の王が急死したのだ。
これ迄は王が亡くなる前に次代を指名し、賢人十二人会議が了承すればなんの問題もなく王位は次代に引き継がれてきた。
だが、我が父である前王は次代を指名する前に亡くなってしまったのだ。
これは、アルブァロム王国有史以来前代未聞の出来事だった。
その為、我がアルブァロム王国の王家十二支族の長からなる、最高決定機関である賢人十二人会議が王を選出することとなった。
候補としては、第一に前王の王弟で私の叔父に当たるグランザム公爵領領主のグランザム公アルカイザル・ポート・グランザム、次に前王の娘で私の姉である前アルス公爵領領主のアルス公メルリーサ・ポート・アルスの名が上がった。
その二人から賢人十二人会議が挙手による投票で選んだのは、我が姉アルス公メルリーサ・ポート・アルスだった。
その決定に激怒した叔父は、グランザム公爵領の領主館に引き籠り、それ以降、王の呼び出しにも賢人十二人会議の召集にも一切応じなかった。
その後、暫くしてグランザム公爵領から乱世の狂気が徐々に涌き始めたのだ。
・・・・・・・・・。
「私は、今回のグランザム公爵領への討伐軍の派兵は反対です。」
「アジーナ様、それは何故ですかな?」
「王や賢人十二人会議の使いの者だけでなく、グランザム公爵領の状況を調べるために何度か送った密偵の殆んは戻ってこなかった。戻ってきたとしても皆、乱世の狂気に心を蝕まれていた。そんな所に兵を送っても大切な兵士達を失うだけではないのですか?内務卿カルバース殿。」
「では、アジーナ様は、このまま乱世の狂気が我らの国を蝕んでいくのを黙って見ておれと?」
「そうは言っておりません。」
「では、どうしろと?」
「一年程前、グランザム公爵領の者が、隠者の森で隠者の里の者を襲った事件がありました。しかも、破壊衝動しか持たぬ狂戦士ではなく、理性的な考えの下に動く者がです。その者達が着ていた服やローブを調べたところ、乱世の狂気等の邪悪な力だけでなく聖なる力をも通さない結界の魔法印が施されていました。今の我らには無い技術でその魔法印は綴られていたのです。ですが、つい先日その魔法印の解読に成功し、再現が可能だということが判明しました。ですので・・・・」
「その魔法印を施した服や鎧甲冑を我らの兵に着せグランザム公爵領に入るべきだと?大神官アジーナ様。」
「そのとうりです。軍務卿ガライアス殿。」
「では、その魔法印を施した服や鎧甲冑は、今、如何程御座いますか?大神官様。」
「それは・・・・」
「今は無いと・・・・では、我が兵士達全てに行き渡らせるくらいの数が出来るのは、いつ頃になりますか?」
「・・・・・半年、いや、三ヶ月待っていただければ・・・・」
「は!話になりませんな!グランザム公爵領の乱世の狂気が力を増し活発化し始めたのは一年程前。今から三ヶ月後、何もしなければ我がアルブァロム王国は乱世の狂気に呑み込まれていることでしょう。」
「・・・・だから私は言ったではありませんか!十二年前、アジーナ様が陛下とアジーナ様に暗殺者を送った黒幕がグランザム公爵だろうと突き止めたとき、討伐軍を出すべきだと。あの時は、まだ、これ程乱世の狂気の力は強くなかった。」
「外務卿メルチーナ殿、それを言うなら乱世の狂気が涌き始めた時にそうするべきだったのだ。しかし、それは出来なかった。何故ならグランザム公爵は前王の王弟で十二支族の長、確固たる証拠も無く暗殺者の生き残りの証言だけで討伐軍を出せば、下手をすれば国を二分する戦いとなっていただろう。」
「内務卿殿の言う通り・・・・それに、宮廷内に暗殺者を引き入れていた者とグランザム公爵との繋がりは見つからなかった。しかもその暗殺者を引き入れた者は近衛に捕らえると同時に、破壊神様の新世界創造の為に、と叫んで自決してしまった。」
「軍務卿、それについては我がシャイナ教の方で調べさせています。もし、破壊神の信奉者とグランザム公爵に繋がりがあるのだとすれば、そこを断てば乱世の狂気の力を削ぐことが出来るかもしれません。」
「しかし、未だにその尻尾さえも掴めていないのでしょう?」
「う・・・・ですが、今のままグランザム公爵領に入るのはリスクが大きすぎます。」
「我らエルフはこの世界を産んだ神、鳳凰様御自ら創造された種族なのだ!他の種族とは違うのだよ!我が種族よりも劣る他種族の者が生み出した乱世の狂気になどに我らが負けようはずがない!それは、鳳凰様を神と崇めるシャイナ教大神官のアジーナ様にはよくお分かりだと思っていたのですがな。」
「軍務卿の言われる通り。」
「まさに、我らは選ばれた種族なのだ。」
「大神官様は、何を弱気になっておられるのか。」
「いや、全く・・・」
・・・。
「・・・・・・愚かな。」
「「「何ですと!!」」」
「やめい!!グランザム公爵領討伐軍派兵に関する意見は出揃ったな!」
私と軍務卿達が睨みあいを始めるとアルヴァロム王がストップをかけた。
「では、採決をとる!派兵賛成の者は沈黙をもって応えよ、反対の者は反対の意を表せ!」
・・・・。
「私は反対です!」
賢人会議十二人の内、グランザム公爵領討伐軍派兵に反対したのは私だけだった。
「賛成十一、反対一。よってグランザム公爵領討伐軍派兵を決定する。アルブァロム王国第二十一代国王 メルリーサ・ポート・アルブァロムが命ずる。グランザム公爵領に涌きし我が国土を汚す乱世の狂気を浄化し、乱世の狂気に従いし者達を排除せよ!!」
「「「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」」」
・・・・・・・。
「オスカー。今のアルブァロム王国をどう思いますか?」
「・・・・酷いものですな、二十年以上前に比べると。まるで選民意識の塊の者達ばかりのように見えます。自分達の種族意外者達を蔑み、酷いものでは排斥しようとする者達まで出始めてきています。」
「そうですね・・・・唯一、門戸を外に開いている王立学術魔法学院の扉まで閉ざそうと言う者までいます。我らエルフは、全ての生命をより良い方向へと導く為に我らが神、鳳凰様に創造された種族です。だというのに・・・・・我らエルフの現状を鳳凰様が知られたら、どれほど嘆き悲しまれることか・・・・」
「それもこれも、乱世の狂気のせいだと思われますが。何故、我らがアルス公爵領グリーンズ・ヘイブンはその影響が少ないのでしょうか?」
「我が領地は、シャイナ教の聖地です。また、鳳凰様所縁の地である隠者の森にも隣接していますからね・・・乱世の狂気の影響が少ないのは、そのせいもあるのでしょう。」
「はあ、そうですか。・・・ところで今回の討伐はうまくいくのでしょうか?」
「・・・・我々だけでは、乱世の狂気に呑み込まれて終わるでしょう。隠者の里に居られる方の力を借りられれば話は別ですが・・・・我らの問題にその方を巻き込む訳にもいきません。これで我らエルフが滅亡するのならば、それも我らが神、鳳凰様の思し召しでしょう。」
私は王都から領地に戻ると、領主館には戻らず、そのままシャイナ教本部に行きグランザム公爵領への出兵の準備に掛かった。
私が出陣前の最後のチェックをしている時、領主館から私の娘が心配してシャイナ教本部の私の所までやって来た。
「お母様、お願いしますからこの討伐の延期を王に頼んでください。」
サーシャは今にも泣きそうな顔をしながら、そう懇願してきた。そんな愛しい我が子の頭に手をやりながら、私はその表情に微笑み湛えつつ言う。
「サーシャ。無理を言ってはダメですよ。王国軍はもう既に王都を発っているのですから。」
・・・我々がこの討伐に失敗すれば、恐らく乱世の狂気は勢いづきあっという間にこの国を呑み込んでしまうかもしれない。この子をもっと安全な場所に移しておくべきか・・・
私はそう思いオスカーを呼んでサーシャを隠者の里に送るように頼んだ。
そして、サーシャにはシャインから離れないように言い含める。
オスカーは「お任せください。」と、快諾してサーシャを抱えると、馬に跨がり隠者の里に向けて走り去っていった。
私は、・・・これが、我が子との今生の別れになるかもしれない。サーシャ、幸せにおなり・・・と思いつつ、その後ろ姿を見送った。
(凰)
翌朝、日が昇ると同時に僕達は行動を開始した。
僕達が隠者の里を出る時、見送りに出てきたカリン姉さまは心配そうな顔をして「早く帰ってきてね。」と言い、サーシャ姉さまは「シャイン。お母様の事お願いね。」と、カリン姉さまと同じく心配そうな顔をして僕に声を掛けてきた。
それに対し、僕は笑顔で「任せておいて!アジーナおばさまを助けて、すぐ帰ってくるから!」と、力強く返事を返す。
最後にカクラ母さまが僕を優しく抱き締め、「無理をしてはダメよ。無事に帰ってきなさい。」と言って、僕の額にキスをしてくれた。
「それじゃあ、クロガネ、シャリーナ、頼んだよ。」
と、クリスティーン婆さまが言うと、
「お任せください。」
と、シャリーナ姉さまは力強く応え、クロガネは〈お任せを〉というように頷いていた。
それから、僕はクロガネに抱えられるようにして馬に乗った。
これから五日間、僕とクロガネ、そしてシャリーナ姉さまの三人はアルブァロム王国グランザム公爵領に夜間を除く日中一杯、休み無く馬を駆って向かう事となる。
クロガネとシャリーナ姉さまの力なら走った方が馬より早く「三日でグランザム公爵領に着く」と言う事だが何の力もない僕がいるため馬での移動という事になった。
クロガネに言わせると「僕を抱えて走っても大丈夫だ」という事だったが、他の人たちが反対したのでその案は却下となった。
カンザブロウ父さまとキリマルさんの部隊は、別ルートでグランザム公爵領に向かうこととなっている。
隠者の里を出て二日目の夜。
ここまで僕の尻がズキズキとし始めた事以外は何の障害もなく順調に進んできた。
「父さま達は無事に進んでいるかなぁ。」
と、僕が食事を摂りながら独りごちると、
「キリマル様もみえますし、里の者達も手練れの者達ばかりですから大丈夫ですよ。シャイン様。」
と、シャリーナ姉さまが応える。
「・・・・・シャリーナ姉さま。」
「なんでしょう?」
「昨日もそうでしたが、その敬語、止めていただけませんか?僕より年長者なのですから・・・・」
「・・・・・例え私の方が年が上でも、シャイン様は私の仕える主なのですから敬語を使うのは当然ではありませんか?」
「ですが、血縁関係でいえば、シャリーナ姉さまは僕の従叔母に当たるんですよね?」
「・・・・・実際に血縁関係があればですが。」
「ははははは・・・・何を言いたいのですか?姉さま。」
「いえ・・・・独り言です。気になさらないで下さい。それと、主従に血縁関係は関係御座いません。例え、主が子で従者が父であっても従者である父は主である子を敬い、そしてその主である子に従うものです。その主が正道を外れない限りは。」
「はあ・・・・・そういうものですか。」
「そういうものです。分かっていただけましたか?」
「・・・・分かりました。そのかわり、この間の約束は守ってくださいよ。」
「勿論です。主様との約束を違えるなどもっての他です!それと、今は私の事は敬称を付けず呼び捨てでお願い致します。」
はあ「・・・・分かりました。シャリーナ。」
「ありがとう御座います。シャイン様。」
シャリーナ姉さまは、僕がシャリーナ姉さまの主張を承諾した事に満足したような満面の笑みを浮かべて僕に対して礼を述べた。
それから僕が別の話をしようと口を開きかけた時、「しっ!」と、シャリーナ姉さまは口に人差し指を当て、焚き火の火を足で叩き消した。クロガネは既に戦闘体制を取っていた。
「まだ距離は有りますが。悪意を放つ者達が此方に近づいて来ています。私から離れないで下さい。」
と言うと、シャリーナ姉さまはクロガネと月明かりの下頷き合った。次の瞬間、クロガネが姿を消した。
(キリマル)
わしらはシャイン達を見送った後、わしらも家族と暫しの別れを惜しんだ。
「貴方・・・貴方も気をつけて、必ず帰ってきてください。」
「ああ、必ず帰ってくるよ。カクラ。」
カンザブロウとカクラは熱い包容を交わしている。
・・・ふむ、わしも負けてられんな!・・・
「カナコ・・・・」
「貴方・・・・抱き締めてくれるのは嬉しいのですが・・・・こんな時にまでお尻を揉み拉くのは止めてください!」
と、カナコは恥ずかしげに言う。
「何を言う・・・・他に揉める所など無いではないか。」
「・・・・握り潰しますよ。」
カナコはいい笑顔で、わしの二つの玉を握った手に万力の力を入れる。
「お、ぐ・・・・じょ、冗談だ、冗談ではないか・・・・」
わしは脂汗を滝のように流しながらカナコから離れた。瞬間、カナコは両手でガシッと、わしの顔を力強く掴むと一息に唇を合わせディープで濃厚な接吻を挑んでくる。わしも負けじと濃厚に舌を絡め合う。暫くして、わしらはお互いに頬を染め糸を引きつつ唇を離した。
「貴方。カクラ様は私の生き甲斐。貴方は私の命。どちらが欠けても私は生きていけない。」
「・・・・ああ、わしは何があっても必ずお前の許に帰ってくる。わしは無敵の天刀だ。わしを信じて待っていろ。」
「はい!」
わしとカナコは、お互いに優しく慈しむように抱き締めあった。
わしらが隠者の里を出て三日後の昼を過ぎた頃、乱世の狂気の気配が微かだが感じられるようになった。
「・・・・グランザム公爵領からまだ随分と離れている筈だが・・・・」
「ああ、シャインの力に守られている隠者の森からも随分離れた所だからな。しかもアルヴァロム王国を守っている精霊の力が弱まっているようだ。そのせいでここまでグランザム公爵領から乱世の狂気が溢れ始めているのかもしれんな。」
「その乱世の狂気に乗って、その狂気に取り付かれた者達も溢れてきたようだ・・・・」
「・・・・ああ、狂戦士が千人といったところか。その中に一人、狂戦士を操る者がいるようだ。」
「・・・一人につき約五十人狂戦士を倒せばいい訳だ・・・・・楽勝だな。」
「ははは・・・・しかし、シャインの作った探知の指輪は凄いな。接触するのにまだ一時程かかる距離があるというのに悪意の有る者を感知して、数やその者の詳しい情報まで伝えてくるとはな・・・・」
「だが、そのお陰で早めに体制を整えられる。だろ、カンザブロウ。」
「確かに、後は魔法武器のブレスレットがどの程度の力を発揮してくれるか、だな。キリマル殿。」
「うむ。シャインが言うには、生き物は殺せないがそれ以外は何でも切れる、と言っていたが・・・・さて。」
わしは、その魔法武器のブレスレットに少し魔力を注ぐ。すると、その魔法武器のブレスレットは双刀の滅斬刀という魔法刀に変化した。
その刀を左右の手にそれぞれ持つと、長年使ってきた愛刀のようにしっくりと吸い付くように手に馴染んだ。
・・・重み、形といい申し分ない。名工が、わしの為に鍛え作り上げたような刀だ。これ程の物を作るとは・・・
わしがその魔法刀に惚れ込んでいると、隣にいるカンザブロウも魔法武器のブレスレットを大剣に変化させ、その神剣と言っていい姿に見惚れていた。
(アジーナ)
我が領地、アルス公爵領グリーンズ・ヘイブンを出て五日目の朝、今日中にはアルブァロム王国軍本体と合流する予定だ。
「アジーナ様!王国軍本体からの急使です!」
昨日の夜、我々シャイナ教聖騎士団に合流した私の副官であるオスカー・ライガスが険しい顔で私の天幕に駆け込んできた。
「何事です!そんなに慌てて!何があったと言うのですか?」
「王国軍の一部が、昨日、我々の到着を待たずにグランザム公爵領の乱世の狂気の中に突っ込んでいったようです。その者達が狂戦士と化して王国軍本体に襲い掛かっているそうです。」
ガタガタタ!!「な!?馬鹿な事を!!あれ程、我々の到着まではグランザム公爵領の乱世の狂気には近づかぬように言っておいたはずなのに!」
私は余りの事に思わず椅子を転がしながら立ち上がり怒声を上げた。
エルフと言えど、あれだけ強い乱世の狂気の穢れの中にただの兵士が入れば、あっという間に心の隙に入り込まれ取り付かれてしまうのは目に見えていた。
そうならぬ為には神官である我々聖騎士の力が必要なのだ。
・・・だと言うのに、軍務卿!ガライアス!彼奴は何を考えている!!・・・
「オスカー!すぐに使者を出せ!王国軍全軍をグランザム公爵領から出来るだけ遠ざけさせるように伝えよ!!我等はすぐに出立だ!急げ!!」
「はっ!!」
・・・間に合えばよいが・・・